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【ポストコンサル】使える分析のために押さえるべき3つのポイント

コンサルタントだった頃も、スタートアップに転じた今も、データを分析する機会が多い。スタートアップでは、分析するためのデータを集めることから難航したが、収集した後にそれをどう”料理”して、事業の方向性や日々の改善に活かすかというのが重要になる。

時代が求める分析力

コンサル時代もそうだったが、数字を根拠に物事を説明することが求められるし、それができるとキャリア上の自分の強みにもつながる。書店にいけばそのあたりのスキルを身につけるための書籍も多く置かれており、オンラインで教材を見つけることもできる。Excelで計算して、PowerPointでグラフを使って結果をキレイに見せる技術など様々あり、ビジネスパーソンの関心も高いのではないかと思う。

しかし、そういった教えやテクニックを学んでも、仕事上の成果につながりにくいということもまた事実だ。

的はずれな分析

コンサルタントだった頃、分析テーマを与えた若手が作ってきたスライドが見栄え"だけ"ということがあった。見た目はキレイだが、使えない。要は何?に答えれれず使えないというパターンだ。
(※多くの場合、スライドにする前に確認と議論を挟むのでスライド化のタイミングで却下ということはほとんどない。スライド化のタイミングでは伝えるべきことは決まっていて、それをどうシャープに伝えていくかの修正がほとんど。)

それらの多くが「結局、これって何のためなのか?」に答えることができないもので、分析のための分析で終わってしまっている。

使える分析であることが求められる

では、価値につながる使える分析のために押さえておくポイントは何だろうか?
私の経験上、3つあると考える。

使える分析のポイント①"分けて" "見る"

何かの本で書いてあり、なるほどと感心したのが「分析とは分けて比べる」という考え方だ。

大きな問題の状態ではよく分からないので、小分けにして比べてみることで見えてくるということだ。
分け方にも頻出するものは4つしかない。

(1)単価と数量(質と量)
売上の分解などに使われる。もう1段階抽象度を上げて「質と量」という捉え方をすると営業プロセスにおける受注率と案件数というような形で応用できる範囲が広がる
(2)並列単位
A事業とB事業、C商品とD商品など、同じ粒度で横比較できるもの同士で比べる。同じ粒度というのがポイントで、都道府県と市町村は比較できないという話だ。
(3)時系列
同じ数字で過去と現在を比較すること。その際の注意点は、数字を作る条件の違いに注意することだ。数字のカウント方法や季節などの外部要因などに違いがあれば比較できない。
(4)構成比
一見違いがなくても、中身が大きく変わっているという事がよくある。売上高や顧客の合計値は同じでも、構成している要素の比率が変わっていないか確認するクセをつけたい。

この格言には、もう一つ、「大から小へ進めよ」という意味があるとも考えている。一生懸命集計して結果を出したが、全体から見るとほぼ影響のないくらい小さな問題だったという残念なことがある。そんなことないでしょと思うかもしれないが、これは現実問題として頻発するケースだ。最も大きい単位からスタートし、単位を一つずつ掘り下げてく。ロジカルであり、MECEであるために守るべき順序だ。

使える分析のポイント②MECEではなく肝を押さえる

ポイント①の最後にMECEであるために大から小へ、という話をしたばかりだが、実は分析においてMECEは厳密に押さえなくても良かったりする。但し、重要なポイント=肝を押さえていればという条件付きだ。
例えば、全体100のうち、50と30の問題がクリアであれば、残りの20以下の問題はスルーしても良い。スルーしなくても優先度は低くなる。
多くの人にとっての関心ごとは50や30で、20以下はどうでも良い。30もいらないというケースも実に多い。真面目な人、几帳面な人ほど20以下までやり切りたいという衝動に駆られるのも分かるが、そこはやってはいけないのだ。本当に必要なら50と30にしっかり答えてから着手すれば良い。
(※相手に「必要か」と聞く際は十分気をつけた方が良い。さほど必要と思っていなくても、相手から訊かれたらとりあえず必要だと答えてしまうのが人の習性だからだ。)

使える分析のポイント③施策につなげて考える

ポイント②で20以下はスルーしても良いという話をしたが、解決策につながらないから捨てるといった側面のもある。全ての会社・チームでは、カネやヒトといったリソースに制限がある。解決においても大から小への順序は変わらない。大きな解決から逆算して大きな問題から着手するのだ。
基本的に、分析は原因の仮説を考えて証明していく工程だ。ここに問題があるのではないかという仮説が分析の動機になる。そこで確認したいのが「その問題は解決できるか」ということだ。あまりに小さくてあまりインパクトがないものは前述の通り解決する意味があまりない。加えて、大きすぎる問題もまた分析する意味がない。解決する意味はあるのだが、解決できないからだ。大きすぎる問題は、現実離れしたコスト(予算、開発工数など)を必要とする。そのコストを入手できる算段がなければ、スルーしよう。ないものねだりで、問題を解決できない言い訳に固執することになる。使える分析とは成果につながる分析であり、解決できる問題とその解決方法を炙り出すためのものだ。

ポイント

コンサルでは、分析においてもMECEを求められることが多かった。20以下の要素が新規事業で今後の成長の軸になると見られた場合はスルーできなかったし、中期経営計画を策定する際に、いつもはスルーしがちな細かな事業もコンサルを入れたのでこれを機に細かく見て行きましょうということもあった。
そもそも、コンサルタントは几帳面で完全主義者が多く、全部やらないと気が済まないという気質の人間が多いということもあるかもしれない。
夜な夜な分析し、アウトプットしても報告会では割愛されるということが良くあったし、自分もマネージャーになってからは部下のアウトプットをスキップして説明することもあった。

コンサルタントでも企業のトップ・マネジメントとコミュニケーションを取る上位職(マネージャー以上のマネージング・ディレクターとかプリンシパルあたり)はMECEを型として身に付けつつも、多くの場面でMECEを捨てている。重要なポイントだけを絞り、優先順を明確にしているからだ。上級スタッフからマネージャーに昇格できるか、マネージャーから更に上位職へ昇格できるかは、MECEから上の世界に抜け出せるかどうかが一つの試験紙になると思っている。

ポストコンサルにおいても同様に、コンサル時代のMECEに固執していると活躍できない。優れた分析としても、施策につながらないとか、具体的なアクションを想起できないといったアウトプットはゴミ当然だ。アウトプットがそれなりの価値に直結していたコンサルマインドとは決別しなければならない。

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