夢はもう見ないのかい?
子供の頃の夢ってみなさんなんでしたか?
わたしは別になかったです。
好きなことはたくさんありました。
両親は教育にも習い事にもかなりのお金をかけてくれて恵まれた環境だったと思います。
しかし、「なりたいもの」「夢」はずっとありませんでした。
元々かなり口うるさい家庭だったので、常に勉強は頑張っていましたが、
あくまで両親の束縛や拘束から「逃げる手段」として勉強していました。
「権利を得るためには義務を果たさなければいけない」
小学生の頃から口酸っぱく言われていました。
わたしが幼い頃から欲しくてたまらなかったもの、
それは「夢」なんていう優しい耳障りのいい美しいものよりも「誰にも干渉されない自由」だったのです。
大学を出て、働くのが嫌だったから大学院に行きました。
大学院も目的もなく入ったのでダラダラと過ごして実験もせず、論文も書かず遊んでいました。
その時に出会ったのが「風俗」という仕事でした。
世間からはもちろん蔑まれる仕事ではありますが、わたしには単純でわかりやすくてよかった。
少ない時間で高額が稼げる
わたしが最も欲しかった自由を得るために果たす義務としては割に合ってると感じました
その内「本指名(リピーター)」というものが、安定して稼ぎ続けるためには必要だと気がつきました。
「本指名(リピーター)」が増えてくるとランキングに入りたくなってきました。
元々競争は好きだったので、より効率よく稼ぐためにも躍起になって接客を研究し始めました。
大腸菌を育てて遺伝子を取り出したり
タンパク質を調べるために電気泳動をするより
結果がすぐに出てとても面白かったのです。
大学院を出た後も
自由でいたいがためだけに風俗という仕事を続けました。
長くしっかり働いた店舗は3店舗ほどでした。
キャストとしての日々は完全な自由と引き換えに、身体的にも精神的にも戦闘の日々でした。
嫌なお客様、気になってしまうランキング、自分のプライド、アンチエイジング、お客様との神経戦。
水商売も風俗も、女や色を売る仕事というのは戦闘なのです。
3店舗目でそろそろやりきったと感じて卒業しました。
その3ヶ月後、
あまり深く考えず内勤になり
さらに3ヶ月後、
店長になりました。
組織で働くのは大人になって初めてです。
37歳まで、本当に自由に自堕落に生きてきたと思います。
わたしには週5で働くのは無理だと考えていましたが、意外と今は週1休みでなんとかなっています。
散々自由に生きてきたから、次はガチガチに縛られたくなったのかもしれません。
そして、今は「誰かと仕事をする」面白さをやっと見出せてきました。
これまで1人でお客様と職人のように向き合ってきたので
「組織で働く」ことがとても新鮮で楽しいです。
「今の夢は?」と聞かれたら、やはりそういったふわふわした美しいものは頭に浮かんできません。
「今の目標は?」と聞かれたら、何かしらの理由で関わることになった女の子たちが幸せに卒業できるお店を作ることです。
あらゆる偶然が重なって今の環境と今のわたしがいます。
関わるスタッフ、女の子たちの幸せのために、この不思議な巡り合わせで行き着いたこの場所で
これからも静かに戦っていきます。
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