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小説 「ウホざんまい」(5/5)


>>前回のあらすじ
「ホホホ、ウーホホン、ホ、ウンホ!」(それすなわち、死だ!)
「ホホ! ホ~~~、ウウホーーホウッウ~ホ!」(黙れ‼ おとなしくバナナの栄養分になるがいい!)

↓↓↓ 前回 ↓↓↓


 
 一年の月日が経った。
 助手は奇跡的な回復によりリハビリの末に退院し、博士の研究室に戻っていた。

「わかった、わかったぞ……! 研究をつづけた甲斐があった! 地球は滅亡しないんだ……‼」博士が言った。
「落ち着いてください、博士」
「いいや、落ち着かずにはいられない! わかったんだ。ゴリアン星人の行っていた死(ウンホ)とは、すべてのバナナを譲渡するという意味だったんだ‼」
「いいえ違います、落ち着いてください」
「なにを言う。世界は滅亡しないのだ。なぜ君は喜ばない……⁉」
「博士、滅亡条約はなくなっていません」
「そんなはずはない。死とはバナナのこと。地球の滅亡を示す言葉ではないのだ‼」
「よくお聞きください、博士。もう、何度お伝えしたかわかりません。他の研究員たちから聞きました。先生はこの一年、研究室で酒を飲んでは錯乱して眠り、目を覚ましては発狂することを繰り返していました。その間、博士は一切の研究もしていないのです」
「嘘を言うな、一年だと……⁉ 私が発狂していた? そんなはずがない!」
「いいえ、その言葉も何度聞いたかわかりません。博士が先ほどおっしゃったことは、すべて博士が見ていた幻想、願望にすぎないのです」
「嘘だ、なにを言っているんだ、君は……! 話がいろいろと急すぎて、まったく理解ができないぞ!」
「理解してください。正しいことを喋っているのは、私です。博士はあれからずっと、錯乱しておられるのです」
「いいや、おかしいのは君だ。これ以上、妄言を吐くな……!」
「残念です、博士。ウとホにとらわれすぎて、おかしくなってしまったのですよ」
「そんな……! そんなはずが……!」
 博士はその場で膝から崩れ落ちると、頭を両手で抱えて呻き出した。
 しばらく呻き散らすと、博士は急に大人しくなって助手を見た。

「そうだ地球は、ならば地球はいま、どうなっているのだ……?」
 助手が、首を振った。
「地球は――ゴリラの惑星になりました」
「うわああああああ‼‼ ウホだ、ウホだと言ってくれ‼」
「ウとホにとらわれ過ぎです。ここももう、危ないです。今日、私がここに来たのは、博士を連れて帰るためです。もうじきここは、戦場になります。早く出ますよ」
「うああああ‼」
「人類はわずかながら、武力を持って地下に潜み、蜂起の機をうかがっています」
「うああああ‼ うああああ‼ まさかこんなことに、こんなことになるなんて‼」
「ほら、早くしてください。泣き言を言っている場合じゃないんです!」
 数分後、機動隊が大挙し、博士の研究所のある大学はまもなくして、対ゴリアン星人における作戦拠点となった。

 以来、地球側人類は武装蜂起し、世界各地でゲリラ戦を展開していく。
 ゴリアン星人との、血を血で染め上げる長きに渡る戦争が、始まったのである。
 のちに、第一次ゴリアン戦争と呼ばれる、数千年続く銀河戦争の発端であった。

〈了〉




お付き合いいただき、ありがとうございました!

普段から、こんな話ばかり書いております。
ぜひ、また次のお話でお会いしましょう。



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