中村哲さんがやったこと
銃撃されたというニュースを聞くまで中村哲さんのことを知らなかったのですが、昨晩Eテレで追悼番組を再放送していたので見てみました。
アフガニスタンで医師として人助けに奔走していた頃、911が起きて、ビンラディンの犯行声明によってアフガニスタンは米軍の徹底攻撃に遭いました。
しかし実際のアフガニスタンは100年に一度の大旱魃に見舞われ、人々は飢え、水不足と栄養失調、不衛生な環境で瀕死の状態でした。
ただでさえ困難の真っ只中に置かれている何の罪もないアフガニスタンの国民の頭上に報復の爆弾が落ちる・・・
信じがたい事が起きていたと初めて知りました。自分を含め、本当に無知とは恐ろしいことです、18年前こんなことが世界のどこかで起きていたのに知らん顔でいたことをいまさら反省しました。
そんな地獄の現場で、中村さんは医者として活動に限界を感じ、とにかく干ばつを解決することにしたのでした。
「100人の医者より、一本の水路だ」
病気は結果、いつまでもいつまでも治療をしてたって原因である水不足を解決しなければ意味がない。
中村さんは原因を見る意識の人だったんだな、と思いました。
「水を引く以外のことはすべて、いまの自分には贅沢に思える、だから医者の道を捨てるしかない」
そして土木の知識はまったくないのにも関わらず、アフガニスタンの大河クナール川に注目し、ひび割れた大地に20キロ以上もの水路を引く一大計画を実行することにしました。
工事は難航しましたが、地元の人々の強い結束と協力のもと、200年以上前に作られいまも現役で氾濫を防いでいる日本の山田堰を参考に水流を見事に操作して、奇跡の工事を成功させました。
それはとても感動的でした。
5年前、こんなに荒れ果てていた大地が・・・
一面の小麦畑になり、青々とした美しい農作地になって蘇りました。
数十万の人々の食糧を確保できる、ゆたかな大地。
平和で、幸せな光景が広がっていて、テレビの前で涙が出ました。
人の力ってすごい、想いを形にする力ってすごい、人の持つ創造性を善と奉仕に使えばこんな天国が作れるんですね。
山田堰という昔の技術を使ったので、シンプルな構造であるため、いつでも地元の人が作ったり直したりできるというメリットも生まれました。
人は仕事さえあれば戦争のことなど考えない、貧困と飢えが暴力を生むのだ、と住民の方が言っていました。
こんなにすばらしいことをやっているのに、大河の河原で工事中の中村さんたちをアメリカ空軍の機銃掃射が襲ってきたそうです。
悲しくて怒りがこみ上げます。
沖縄でも思ったけど、やはりアメリカの軍隊はおかしい、とわたしは思います。
長い間アメリカは世界の正義という顔をしてきましたが、そろそろ果たして本当にそうなのか、世界のみんなで考えるべき時が来たと思います。
正義とは、力とは、何のためにあるのか。
それは弱者を守るためにあります。
アフガニスタンも、米作りをするんですね。
小麦だけじゃなく、稲も植えられていました。
よく実った稲穂は、中村さんとアフガニスタンの人々の意識の結果です。
人に備わった創造性でできないことなんてない。
であれば、その力を生命のサイクルのために使うのが、全体のためです。
水路の石の壁の上に、柳が植えられていました。
石の間にも根を張るので、崩れないように植えたのだそうですが、それがまたとても気持ち良い光景でした。
なんだか少し日本みたいです。
自然と調和したものは美しい。
美しさと生命は常にイコール。
こんなに美しいものを作ったのに、中村さんは殺されました。
水が通る、それだけで土地の値段が数十倍に跳ね上がり、その利権に巻き込まれてしまったのだろう、と関係者の方が残念そうに言っていました。
どんなに良いことをしても、人の意識が変わらなかったら元の地獄に戻ります。
この世で最も価値のあることは、生命を育むこと、弱者を守ること、そして安心した世界の構築です。
人間が金と権力に価値を置いている限り、サイクルは永久に逆回転のままです。
物事は原因の意識で決まるから、ゆたかな土地や教育や街をどれだけ作っても、欲望の意識が根底にある限り、必ず最後は奪い合いと破壊で終わります。
人間て何万年もそれやってるのに、全然学ばないですよね。
中村さんの死を無駄にしないためには、あれだけの水路や農地でもまだ人の苦しみを解決できなかったのはなぜなのかを考えることです。
常に原因を考える。
人の心をやさしいものに変えることでしか、人類社会の苦難は解決はできないと思います。
中村さん、まるで禹王のような人でした。
わたしはテレビの彼をみて、こんなにやさしい人がいたことに感動して、そして世界から失われたことが悲しくて、いまさらながら本当に泣きました。
応援してなかった自分が恥ずかしいです。
自分にできることはまだまだあるんじゃないか、そう思わさせられました。
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