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人知れず戦う女

数年前、MRI検査を受けた時の話。

まず、MRI検査がどんなものか分からない方のために。
MRI検査とはドーナツ状の機器の中に入り、磁気の力を使って体内を撮影する検査方法。強度な磁力が発生するため、貴金属の装着は禁止、体内に金属がある人はほぼ受診不可。
事前に渡された問診票にも、金属製の物が体内にないかの設問がいくつもあった。
  
 心臓ペースメーカー、人工関節、人工内耳、弾丸… 

 弾丸!?

まさかの弾丸入ってませんか質問。人生でそんな質問をされる時があるだろうか?

コンビニで


面接で

いや絶対ない。
「はい」に○を付けたい衝動を抑え、「いいえ」に○をした。

検査当日。待合室には「金属ないよね?」の張り紙がこれでもかと貼られていた。
検査室に入り一通り説明を受けると「金属本当にないよね?」とダメ押しのように確認をされ、検査台に乗る。

MRIは工事現場のような大きな音が鳴り続けるが、防音用ヘッドフォンをし横になっているだけ。狭いところが苦手でなければ、なんてことはない検査だ。
ただ不要に身体は動かせないし、する事もないので目をつぶる事にした。

「本当に確認すごいなぁ。体内に金属のある人が、もし気づかずに受けたらどうなるんだろ。でも、自分の身体にあるかないかは知ってるはずだよねぇ。」
「あ。手術で体内に置き忘れたってニュースたまに見るけど、そういうのはどうなっちゃうんだろう。」

!!

ふと、一年前に受けた手術が頭に浮かんだ。
もしもあの時に置き忘れたハサミとかあったら…?

こんなことにーーー!?

まぁまぁ、落ち着こうじゃないか私。置き忘れなんて滅多にある事じゃない。
うんうん。大丈夫。大丈夫。


なんだか右腹辺りがちょっとチクチクする気がする……

このチクチク…
このチクチクは…もしや…ハサミの先っちょが腹壁に当たっているとか…

お腹の中でハサミが暴れ出したとかあああ!!

そんなこんなの20分。
言うまでもなく、ハサミなど飛び出ずに無事に検査は終了。周囲の人には何もわからない、横たわった女の頭の中だけの恐怖との格闘。

時に激しい妄想は現実を被い…なんて締め方したいけれど、単純に心配症の極みの話。

自らを死の淵に追い込んだ、妄想力が恨めしい。

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