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ねじ巻き鳥達が啼く頃

オナガが時計のねじを巻くように啼いている
遠くから聞こえる貨物列車の汽笛に窓ガラスが震える

夜の間に放ったはずの僕の夜鷹が戻ってこない
この日が来ることは予想していた もう帰って来ることはないだろう
私の目論見はもうどこかに漏れているのかもしれない

こんな一極集中の場所で生きることに抵抗を感じないはずはない
あやしい野獣達が身を潜め暮らす川辺の街で

移民達が集う日本語学校の生徒達はいなくなってしまった
彼らが経営していた注文の多い料理店が潰れてしまった

数ヶ月で取ってつけたように民泊業を始めた居酒屋から聞こえてくる黒い鳥人達の囁き声に耳を傾けないよう笑う角を曲がって部屋に帰る

街に溢れかえる異国の言葉達がオナガ達の啼き声に取って替えられた公園
私だって移民の子供 純粋なものなど持ち合わせてはいない

この国は様々な神々を許容する分 協調を目指し怒り行動することを学ばせない 異質なものを取り入れず同じ気圧の世界で適応できるよう学習させる

全てをなかったことにする役所(システム)の窓口に立つのは友人の父親
ちなみにその友人は顔のない肖像画を描くことを生業にしていた

「私たちの血は知らないうちに吸い取られているのですよ」
 全力で問いかける青年実業家のパスポートは剥奪された
 ー私が献血をしなくなって何年が過ぎたのかしらー 


成田空港と羽田空港の間あたりの雲の上で飛行機の音が消えた
もう僕らは飛び立てないのだろうかオナガよ

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その夜 異人の喚く声が聞こえた
盗難防止センサーが夜空にこだまする駐車場脇に黒塗りのワゴン車

黒い窓ガラスの隙間から人の姿をしたウツボカズラの花束をみた

くすりの売人とのやりとりをみた
不老不死を夢見る強欲な民族には有効なのか

私達は見て見ぬ振りをして警察には告げ口しないで見過ごし

夜中にせっせと自らの肉体を鍛えた 

自己愛で膨れ上がった顔だけは手付かずで

傷口から目を背けたい気持ち わからないでもない

ハームリダクション。。。


隣人とも相容れない私が知らないうちに記憶力を消去されつつあるのだから
黒い窓カラスにこの世界を乗っ取られたとしても 

何も言えないと評論家の声だけが壁越しに聞こえてくる 

隣人がどこの誰なのかは私は知らない 

隣人を見たという友人から顔のない自画像が送られはしたのだけれど

私たちは哲学者を排他し科学者を招き入れた 精神療法家を排他し占い師を招き入れた あとは弁護士や税理士を排他し一体誰を招き入れるのだろう

あいも変わらず隣からわけのわからない声が聞こえてくる

オナガ鳥の目的は私の頭のネジを締めること?。。。
 【私たちは思考停止するよう学習(洗脳)されていたのだ】 


「私たちの血は知らないうちに吸い取られているのですよ」
 全力で問いかける青年実業家のパスポートが剥奪された

 私達は狡猾な汚職に手を染める年老いた大樹を養うためにそこに寄生して成長するキノコの幻覚をみていた

ハームリダクション。。。

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 「もがきながら学び 自ら考え 自立し 行動せよ」

青年事業家の声に応えるには年月が過ぎてしまった

せめて身につけている胞子(帽子)を憮然とした空に飛ばす


 

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