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スワルナとの思い出

留学一年目に住んでいた家の近くにスラムがあった。あるお祭りの夜をきっかけに、私はそのスラムに住む一家と仲良くなった。

一家の大黒柱は40代くらいの女性で、私はそのおばちゃんのことを「アンティー」と呼んで慕っていた。夫は酒とギャンブル中毒、ほとんど家に帰ってこないで仕事もせずほっつき歩いているという。家計を支えていたのはアンティーで、彼女は家政婦として朝から晩まで働きに出ていた。

同じ敷地に住むアンティーの姪・スワルナ(仮名)は当時14歳くらいだった。
スワルナの母はだいぶ昔に亡くなったらしい。スワルナの祖母(アンティー夫の母)も働きに出ていたので、スワルナが日中の家事を担当していた。

スワルナと髪飾り

大人はみな働きに行くか飲み歩くかで、日中の家はがらんとしている。そんな静かな空間でスワルナと二人、ぼーっとするのが好きだった。
カビくさくてハエも多いこのスラムの家で、スワルナと私はテレビを見たり(どこから電気を引いていたのかは知らない)、お菓子を食べたり、埃くさい毛布にくるまって一緒に昼寝をしたりして過ごした。いつ頃からか「ディーディー(お姉ちゃん)」と呼ばれるようになっていた。

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