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真夏の夜の不思議な体験

あれは4年前だろうか。
8月の頭、私は不思議な体験をした。



私は幼い頃からおじいちゃんっ子だった。
父方の祖父は早くに亡くなり
母方の祖父にべったり可愛がられ育った。

その祖父が4年前に亡くなった。

私は祖父が大好きだった。
いつも人助けのために積極的に行動し、
知り合いの誕生日はきっちり手帳に書き込み、祝い、
地域のために忙しく駆け回った姿。
私はこんなに愛に満ちた人を見たことがない。
こんな人になりたいと心から尊敬している。
祖父は祖母の事も大切にしていて
誰から見ても理想的なおしどり夫婦だった。
亡くなる直前まで祖父母はいつものように庭仕事をしながら何気ない会話を交わしていたと聞いた。
祖父が先に旅立ち、祖母はひどく落ち込んだ。
私は祖母が心配でたまらなくなり、
仕事が終われば祖母に電話をかけ、
休みの日会える日には会いに行き
祖母がアルバムを開いて祖父との昔話をするのに耳を傾けることが習慣になっていた。


さて、ここからが本題である。

祖父が亡くなった年の8月頭、
少しでも祖母のさみしさを紛らわせられないかと
祖母宅へ泊まりに行った。

その夜の事。
祖母はいつも寝ているベッドがある部屋で、
私はその横の部屋で、布団を敷いて眠る事になった。
二つの部屋の境には襖があり、
祖母と私は眠りにつくまで話がしたかったので
襖を閉め切らずにふた部屋を一続きの状態にし、横になった。
しばらく祖母と話をし少ししたら
祖母の寝息が聞こえてきたので私も目を閉じ眠りについた。

どのくらい眠ったか不明だが、ぱちっと目が覚めた。
辺りは真っ暗でまだ夜中のようだった。
少しひんやりするくらい冷房が効いており
部屋にはクーラーの音と虫の声のみが聞こえていた。
私は隣の部屋を向き、祖母が寝息をたてているのを確認した。
「変に目が覚めてしまったな」
再び目を閉じ眠ろうとしたが、
ふとある事が頭をよぎった。

頭の上に仏壇がある。

ここは仏壇のある部屋だった。
昔から泊まりにきた際はいつもこの部屋に寝ていたため
仏壇がある部屋だと変に意識した事はなかったが、
近くに祖父を亡くした事も関係してか
その日は妙に仏壇の存在が気になった。
その途端、私は眠れなくなった。
目を閉じ精神統一しようとしても
どうも、気になる。

不安だったので
祖母がお手洗い等で目が覚めたなら話しかけたいと思い、
体を起こし祖母の部屋を覗き込んでみたが
心地よさそうに寝息をたてて眠っているようだった。
どうしようもないので私は横になり
ひたすら眠気が来るのを待つ事にした。

その時!!

足元の方から

「ゥオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

と大きな音で
断末魔のように苦しそうな男性の声が聞こえた。
それと同時に、被っていた布団が物凄い勢いで下方向に引っ張られた。
私は得体の知れない恐怖に襲われたが、
このまま横になって布団を剥がされるだけでは視界が開け、
下の方で布団を引っ張っている"何か"と対面してしまうのではないかと思い
必死に掛け布団を握りしめ、剥がされないように指にぐっと力を入れ抵抗した。

その状態が5分程続くと
下方向からの引力は突如消え、
部屋には再びクーラー音と虫の声のみが聞こえるようになった。
私は汗をびっしょりかき髪の毛は顔にへばりついていた。
少しして体を起こし、恐る恐る足先の方を見ると
そこには何もなかった。
すぐに祖母の方も見たが、
何事もないようにすやすやと寝息をたてている。

私は状況を把握できず、ひとまず横になり
ドクドクと鳴る心臓の音を聞きながら
先程起こった事が頭の中で駆け巡り、半泣きになっていた。

まぶたに明るい光が透け、目が覚めた。
汗をびっしょりかいていた。
あれから私はいつの間にか眠りにつき、無事に朝を迎えたようだった。


あの"何か"は祖父だったのか?
やはり仏壇が関係していたのか?
祖父が亡くなる時の心の叫びの声が私にだけ聞こえてきたのか?
それとも私が泊まりに来た事に祖父が喜び、遊ぼうとしてくれたのか?
霊体験じゃなく、最初から最後までただのリアルな夢だったのか?
…けれど、夢にしてはあまりにもリアルだったのだ。
この日のクーラーの効き具合、祖母の寝息、外の虫の声、祖母の方を向いたり体を起こした感覚、
そして何より、
布団を剥がされまいと力強く布団を握った指先の痛さ…
全部肌感覚で記憶に残っているのだ。

私は恐怖でいてもたってもいられず
その日はネットで悪夢や霊体験、金縛りなどについて色々と調べた。
その中に「体に何かしら重いものが乗っていると悪夢をみたり金縛りになる場合がある」などといった記事も見かけた。
その夜私はくまのぬいぐるみを抱いて寝ており
最初に布団に横になった時には腕にぬいぐるみが乗った状態ではあったが、
布団を引っ張っている時にはぬいぐるみが腕の中にある事によるもたつく感覚等は感じなかったのだ。
脇をしめて、しっかり布団を引っ張っていた覚えがある。


やはり夢だったのか…?


今でも真実は分からずにいる。

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