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#1 採用人事の本棚「採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ」

こんにちは!
採用人事の 満月ぽん と申します。

人事未経験から金融スタートアップの採用人事となり、2年目となります。
採用媒体の操作ひとつとっても分からないことだらけだったわたしも、1年がむしゃらに働いて、なんとか採用業務をこなせるようになりました。

しかし、プロフェッショナルを名乗るにはまだまだ程遠く、スキルアップが必要です。そこで、先人のお知恵をおかりして採用人事としての知識を強化するべく、主に、採用・人事にまつわる読書感想を記録していくことにしました。

理解の整理や定着など、自身のスキルアップがメイン目的ではありますが、採用まわりの業務を担当されているけれども、なかなか読書時間が確保できないという方々のために、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

いちばん最近よんだ書籍を、記憶が新しいうちに。ということで、
記念すべき第一弾はこちら!

採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ

著者:黒田真行・佐藤雄佑
所用時間:約3時間
読了日: 2020/10/12

■概要

人材ビジネスのこれまでの100年を分析し、業界の未来を予測する一冊。2020年時点で日本の最先端を走っている、HR系、特にリクルーティング系のサービスにもスポットを当て、これからの人材業界の変化の予測にも挑戦している。
※Amazon書評抜粋

■読もうと思ったきっかけ・目的

上司先輩のアドバイスを受けながら、業務に関しては1年でひととおり経験できた自負はあるものの、採用のプロになるためには「採用」というものをもっと大局体につかむ必要があると感じていました。

また、スタートアップ企業の採用担当として新しい採用手法などトレンドには敏感になる必要があると考えているものの、圧倒的な知識・経験不足により筋のよい判断ができず悔しい思いをしていたのも事実です。本書は今後の人材業界の変化予測もしているということで、プランニングの参考にしたいと考えました。

■要約

【序章】採用支援ビジネスをとりまく全体像
産業構造とともにうつり変わる労働ニーズに対応する労働力調達ビジネスの一部にあたるのが採用支援サービスであり、派遣や業務委託など労働力調達の選択肢は近年より多様化してきている。

【第1章】職業選択の広がりと採用ビジネスの100年
士農工商で知られる江戸時代、雇用の主流は「奉公人」と呼ばれる働き方で縁故紹介(リファラル採用)がメインであったが、紹介者に恵まれない人達のために都会では口入屋(人材斡旋業者)が、地方では人市(採用イベント)が採用チャネルとして用いられていた。

明治時代の1872年、東京日日新聞(現:毎日新聞)に日本初の求人広告(乳母を募集します)が掲載される。この伝言板的な求人広告は、第二次世界大戦の始まる昭和初期まで増加し続けた。

戦後の日本経済はどん底であったが、1950年に勃発した朝鮮戦争の特需により復興し、地方から都市部へ中卒者の「集団就職」がおこなわれた。しかし集団就職先は労働条件が整理されていないことが多く、離職者も増加。こうして大量に発生した転職者が、求人広告産業を成長させることとなった。

【第2章】求人広告と人材紹介 2つの人材ビジネスの誕生
<求人広告>
東京大学の学生が1962年に学生向け就職情報誌「企業への招待」を創刊。求人広告を企業から受注して1冊の情報誌にするビジネスモデルが誕生した。
1975年には中途採用情報を集めた「週刊就職情報」を創刊、労働条件の明示を義務付け、求職者が比較検討できるメディア形式が生まれた。
1990年代には、バブル経済で激化した採用競争を勝ち残るために、現在も用いられているターゲティング技術、メッセージング技術が確立された。
2010年代以降はSNS採用サービス等、チャネルが多様化して喜ばしい一方、労働条件が明示されないものも多く、ミスマッチを防ぐ工夫が望まれる。

<人材紹介>
戦後、GHQ指導により「職安三法」が定められ国の統括する「職業安定所」が誕生。1990年に改称され現在の「ハローワーク」となる。
終身雇用が一般的であった日本ではなかなか伸びなかった人材紹介ビジネスも1999年の規制緩和により民間職業紹介が爆発的に伸び、2017年度の市場規模は2570億円に成長した。
市場動向に合わせ、成功報酬型と前課金型といった報酬形態、企業担当と求職者担当の分業型と両面型といったスタイルの試行錯誤が続けられてきた。1995年以降、より生産性追求をするためのシステム導入や業務フロー標準化、KPI管理が進み、2010年代はAI・ビッグデータ活用も進んでいる。
他方、類似サービスとして人材派遣サービスの高付加価値領域での台頭も目覚ましく、今後ますます人材紹介業との垣根はなくなっていくとみられる。

【第3章】リクルーティングビジネスにおけるビジネスモデル変遷
1970年以前のリクルーティングビジネスは、新聞/チラシ(マス×有料)、貼り紙(少数×無料)といった求人広告、ヘッドハンティング(対面×前課金)、職業安定所(対面×無料)といった人材紹介がほとんどであった。
1970年代~2000年代にかけては、よりセグメントされた求人広告や人材紹介サービスに加え、応募を待つだけでなく能動的にアプローチすることができるDBスカウトという新規のマッチング手法が登場。2010年代に入ると、インターネット上にあるすべての求人広告を集約したアグリゲーション型求人検索、ビジネスSNSやSNS拡散型求人サイトといった全く新しいビジネスモデルが次々に誕生した。
※それぞれのビジネスモデル詳細についても本書で図解されている

【第4章】リクルーティングビジネスの新潮流
リクルーティングビジネス業界には「低価格帯」のビジネスモデルが存在せず、長年にわたり空白地帯となっていた。そこに登場したのが、ソーシャルリクルーティングである。ビジネスモデルは2つあり、ひとつはWantedly等のSNS拡散型求人PRサイト、もうひとつがLinkedIn等のビジネスSNSだ。これらの共通するキーワードは、転職潜在層へのアプローチである。
その他、社員クチコミのOpenWorkやキュレーションサイトであるNewsPicksといった本流事業から派生した採用サービスも現れてきている。
そんな中、既存サービスでの売り伸ばしが難しい状況は明らかで、リクルートは「indeed」で求職者接点を、無料の採用支援ツール「リクナビHRTech」により企業接点拡充を期間戦略とし、エン転職は入社後活躍をテーマに新規サービスを拡充、パーソルキャリアは「ミイダス」にてマッチングの進化、「i-common」によりハイクラス人材を軸に成長戦略を描くなど、大手人材サービス各社も急ピッチで次世代戦略を進めている。

【第5章】人材業界のディスラプター
第4章で紹介したソーシャルリクルーティングと同じく、低価格帯に参入してきた新ビジネスモデルが「indeed」を代表とする「アグリゲーション型求人検索エンジン」である。特徴は3つで、1つは「インターネット上にあるあらゆる求人情報を集めてワンストップで提供できること」、2つ目が「世界トップレベルのSEO技術により求人検索時にほぼindeedが上位表示されること」、3つ目が「料金は案件ベースではなく、クリック課金であること」。
特に1、2つ目の特徴により、今後の求職者接点を根こそぎ獲っていけるポテンシャルがindeedにはあり、求人サイト、人材紹介会社、DBスカウト等既存サービスはいずれindeed経由で求職者獲得をしなければならない可能性がある、という意味でディスラプター(破壊者)になりうると予想している。

【第6章】人事採用部門は変化にどう対応すべきなのか?
人材需給に関する好景気・不景気の循環的な短期波動は繰り返し発生するが、人口減少や産業構造変化という長期波動の変化には揺り戻しは起こらず、企業には「雇用する側」から「選ばれる側」への変化が求められている。また、厳しい人材獲得競争の中では、離職抑止の重要性も益々高まる。2010年代以降の傾向として、事業の社会的意義や自己の成長可能性の高さなど可視化されていない報酬に価値を感じる人が増えている。
以上をもとに、「求める人材要件」を正しく設計し、個人個人に合わせた「成長デザイン」に寄り添っていくことが必要となり、それを実現するための自社に合った「採用手法」と採用プロセスの「手順化」が重要となる。

【第7章】リクルーティングビジネスの市場規模見立て
2030年の未来シナリオ。さらなる少子高齢化とテクノロジー進化により、人生を通じて1つのキャリアを全うしていた時代から、複数のキャリアステージを生きる人生が当たり前化し、フリーランスや起業、副行・複業など、より個人が主導権をもって自身のキャリアデザインをしていく必要がある。
人材ビジネスにおいては、これまでの採用予定人数が多い大量採用企業に対するBtoBtoCの採用支援サービスではなく、多種多様な求職者に対するBtoCtoBの転職支援サービスが存在感を増していくことが予想される。今後、業界の再編バトルが始まり、課題解決ができるor希少性の高い人材を集めることができるサービス、もしくは採用業務の生産性向上ができるサービスが生き残る。

採用企業側では、下記のようなチャネル選択がされるようになる。

【第一領域】企業の第一チョイスとなっていく。
負荷(少)+採用単価(低)
・アグリゲーション型求人検索エンジン

【第二領域】ココが強い企業が採用力があるといわれるようになる。
負荷(高)+採用単価(低)
・SNS拡散型求人PRサイト
・リファラルリクルーティング
 
【第三領域】リーチ難易度の高いポジションでのみ利用価値が残る。
負荷(少)+採用単価(高)
・人材紹介 ※高い専門性、アウトソース価値が必要な場合のみ利用
・求人広告 ※立ち位置が中途半端であるため利用価値が低下

以上。

■学び・気づき・感じたこと

・労働力調達市場と人材ビジネスの歴史
人材に対する需給、人材ビジネスに関する規制と緩和の振り子が大きく触れながら今日に至っていることを知り、今後も発生する景気による短期的な変動、労働人口減少による長期的な人材獲得競争激化への心構えができた。

・人材ビジネスの未来予測
求人広告、希少性の低いポジションでの人材紹介サービスが衰退するという説は、自社のチャネル選定実績に照らしてもほぼ同じで納得感があった。
現状、少数精鋭で希少性の高い人材を採用することが多い自社においては、SNS拡散型求人PRサイト、リファラルリクルーティングに注力しつつ、高い専門性を持つ人材紹介業者との関係構築をつづけることが勝ち筋であると確認ができた。アグリゲーション型求人検索エンジンについては、すぐに利用拡大はしないと考えるものの、ポジションによっては選択できるよう準備はしておきたい。

■自身の考え・アクション・仕事での活用方法

・情報収集
OpenWorkやNewsPicksなど利用していないが既にプレゼンスの高いサービスについて、サービス説明を受けたり、カスタマー登録をしたりして、選択すればいつでも利用できるように整理しておく。

・採用広報への注力
今後もより一層、潜在層へのアプローチ、若手の青田買い&早期戦力化のニーズが高まる傾向にあるため、より転職潜在層にアプローチできるサービスの利用や採用広報に注力していきたい。

・採用ターゲットのペルソナ設計
各種人材サービスを使いこなすためにも、採用ターゲットの明確化が必要であるため、自社に合った優秀人材のペルソナ設計を磨き続ける必要がある。
現在、オープンポジションがないため、採用広報をする上での抽象ターゲット像を設定することからスタートしたい。

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■最後に

以上、読書感想の第一弾でした。
ここまで長文をご覧いただいた皆様、誠にありがとうございます。

人材ビジネスの歴史について書かれた書籍が多くないこともあり、純粋に知識として蓄積できたことが多く、読んで良かったと思える本でした。
採用実務での活用はもちろん、採用担当としてアップデートし続けなければ市場価値がなくなるという、いち人材としての危機感についても、読書感想としてまとめることで再確認できたことは良い収穫でした。

一方、今回初めてビジネス書の要約に挑戦したこともあり、書き上げるのに時間がかかってしまった&すごく長文になってしまったことは反省点です...
読みやすさという点でも、インプット効率という点でも、もう少し完結にすべく、次回以降は自身が受け取った内容の要旨をまとめる形にしたいと思います。

今後も改善を続けながら、第2弾、第3弾と書いていきたいと思いますので、ご興味があれば、引き続きよろしくお願いいたしますmm

あらためて、最後までお付き合いいただきありがとうございました!!

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