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[Side Story] ノースポール、浮上!③

■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
ノースポール、浮上!③

みなさま、
はとばみなとです。

 初めて北海道の空に浮かぼうとしたノースポール。しかし、何か様子が変なのです。

 突然、川崎さんのケータイが鳴りました。発信者はニコラさんです。

「なぜ、ケータイに?」

 いぶかしく思いながらもケータイに出ました。

「川崎さん、そちらの状況なんですが、」
「うん、こっちでも調べているところだ。どうも、浮上できなかったように見えるのだが、高度計は予定の50mを示しているのだ。」
「それは、たぶん、こんな状況だからだと思います。ケータイで映像を伝送しますね。」

 川崎さんは、ケータイをハンズフリーモードに切り替えると画面を見ました。そして。

「な、なんだこれは??」

 驚きのあまり、叫びました。

「管制室から見るとこんな状況です。おそらく、このせいでドックの電源が切れたんでしょう。」

 川崎さんは、鵜の木さんや不動さん、小杉さんを呼んでケータイの画面を見せました。

「な、なんですか、これは?!」
「こんなことってあるんですか?」
「これは、中にいたらわからないですよ。」

 ケータイの画面は、基地上空の空を映していたのですが、驚くべきことに、そこには、ノースポールを建造した、第一ドックの格納庫そのものが浮かんでいたのです。

「えっと、これはーー。」

 鵜の木さんが、頭をかきながら説明し始めました。

「明らかに、ドライブパネルの Effective Field Size の指定が間違ってるね。」

 この値は、ドライブパネルの発する推進力の届く範囲を調整する設定なのです。どうも、設定された値が大きすぎるようです。

「確認不足だね。」
「はい、私達の。」

 鵜の木さんと不動さんは恐縮モードです。

「す、すまない、私としたことが、ちょっと混乱しているんだが、どうすれば良いだろうか。」

 川崎さんは、珍しく、慌てていました。何しろ、前代未聞の珍事です、これは。

「ひとまず、ノースポールから直接、管制室に回線をつないでもらえますか? こちらで、経路情報を書き換えたので、音声通信も、データリンクも回復すると思います。」
「よし、わかった。」

 その話を席で聞いていた鵜の木さんが、早速、ノースポール側の経路情報も書き換えました。

「大森さん、通信コンソールでリダイレクト先として艦内ネットワークを選んで、それで、管制室に接続してもらえますか。」
「了解。接続してみるわね。」

 そして。

「おお、つながったようだな。」

 メインディスプレイにニコラさんが映し出されました。

「ハハハッ、お久しぶりです。えっと、データリンクも回復したようですね。」

 さて、このあとどうしたらよいのでしょうか。

「この状態のまま、慎重に下りるしかないな。格納庫の建物はもちろんだが、格納庫内の通路にスタッフ達が大勢いるのだ。」
「こちらでも確認しています。建物が崩壊したりしたら、彼らが犠牲になってしまいます。」

 川崎さんは立ち上がりました。

「確か、キャビネットの救命キットの中に、ハンドマイクがあったな。」
「はい、2つあるはずです。」

 小杉さんは、ブリッジの右舷側のキャビネットを開くと保管してある物を確認しました。

「あ、ありますね。ハンドマイク2台。」
「うん、ちょうどいい。私が左舷側、小杉が右舷側を頼む。格納庫ごと基地の上空に浮かんでいることを伝えて、その場を動かずにじっとしているように指示するんだ。頼むぞ。」

 ノースポールの第1ブリッジ塔には、左舷側、右舷側に、監視デッキがあって、外に出ることが出来るのです。ちなみに、エアロックの機能はないので、大気圏内でしか使うことが出来ません。

 早速、外のスタッフに説明しました。川崎さんも、小杉さんも、逆に、スタッフから応援されてしまったようです。

『頑張れー。』と。

 見てるだけなら気楽なのかも知れないですね。

 果たして、ノースポールと第1格納庫は、無事に地上に戻れるのでしょうか。

(つづく)

■宇宙巡光艦ノースポール
作者のnoteサイトです。
https://note.com/maneroid_x/all

■宇宙巡光艦ノースポール
こちらのウェブサイトに登場人物や登場メカの設定資料、用語集などを置いています。
https://northpole2022.com/

2024/04/02
はとばみなと

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