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[Side Story] 久しぶりの帰省⑩

■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
久しぶりの帰省⑩

2日後。
穴水駅。

「じゃあ、私は行くね。」

舞さん、電車のドアの前で笑顔で言いました。見送りは、お父さん、お母さんと萌さん、さらに、舞さんの友人が2人、来てくれました。

「結婚式の日程が決まったら、連絡してね。」
「うん。でも、本当に来れるの?」

萌さん、ちょっと心配げです。でも、大丈夫。昨日、舞さんが日高基地にいる大森さんに連絡したら、

「もちろん、出席してあげてね。まだ、地球にいるんだし。」

萌さんの結婚式は10月の予定です。ノースポールの出発は、年が明けた1月の予定なので、休暇さえ取ることが出来れば、普通に出席できるのでした。

「プロジェクトの予定の調整は、今ならまだ出来るし、結婚式には出てあげるのよ。」

大森さん、結構な勢いで、舞さんの背中を押してくれました。

「だから大丈夫。絶対出席するから、必ず連絡してね。」

舞さん、萌さんに強くお願いしました。

「はーい、発車しまーす。ご利用の方はご乗車下さーい。」

駅員さんが私達に伝えました。舞さん、電車の中に入りました。

「体に気を付けるんだぞ!」
「ちゃんと食事するのよ!」
「舞ーー、元気でねーー。」

駅員さんが笛を吹きました。電車のドアが閉じます。

「お姉ちゃん!」

萌さんが手を振ってます。

電車が警笛を鳴らしました。

舞さん、ホームにいるみんなに向かって手を振り続けました。

電車が、ゆっくりと走り始めました。

萌さんが、電車に合わせるように歩いています。

舞さん、その萌さんに向かって、ハグするポーズを取りました。

萌さんも、両手を出してハグのポーズです。ふたりでリモートハグですね。

電車が速度を上げ始めました。ホームが、ホームにいるみんなが、すーーっと、後へと離れていきました。萌さんも。

電車は駅を離れて、走り始めていました。

舞さん、一瞬俯きましたが、すぐに顔を上げると、

「うん。」

と、強く頷きました。

そして、空いている席に座ると、ゆっくりと息を吐きました。

「よし、大丈夫。」

その日遅く、

舞さんは日高基地に戻りました。

「あー疲れた。」

椅子を引いて、深く座りました。

デスクの右端に置かれたフォトスタンドに、家族みんなで、おばあちゃんも一緒に撮った写真が入っていました。おばあちゃんが元気だった頃に撮った一枚です。

舞さん、そのフォトスタンドを取りました。しばらく見つめると、

「明日から、また、がんばろ。」

と呟いて、スタンドを机の右端に戻しました。

(おわり - 久し振りの帰省)


以下、ご参考情報です。

私も一応、鉄道オタクの端くれと思っていて、一応、知ってはいます。穴水駅から和倉温泉までの間は非電化区間なんですね。なので、小説中で舞さんが電車に乗ると書かれていますが、実は現実とは異なっていたりします。

しかし、そこは小説の中の、しかも、現在から30年後の世界。SDGsも叫ばれている中、遅まきながら、鉄道が少しでも復権しているといいなあと思いつつ、物語の中では、和倉温泉から穴水までの区間も電化されたのだ、という設定にしています。うーん、現在使用されている521系が30年後もまだ現役なのか、それとも、後継車両が登場しているのか。鉄道オタクとしてはその辺りも興味あるところですね。

ちなみに、現在は穴水駅は終点となっていますが、もともとは、日本海に面した輪島まで路線が延びていたのですね。本当は、その廃止区間も復活しているといいのにとか思ったりしたのですが、物語の本筋からちょっと逸れそうだったので、言及しないままとしました。

さらに言うと、和倉温泉から穴水までの区間は、JRではなくて、のと鉄道の路線だったりして、いろいろと背景が複雑なので、本文中では、その辺りの説明はすべて省略させて頂いています。

というわけで、『久しぶりの帰省⑩』の鉄道オタク的裏話でした。


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2024/04/22
はとばみなと

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