[Side Story] 久しぶりの帰省⑧
■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
久しぶりの帰省⑧
2週間後。
おばあちゃんが亡くなって、悲しむ間もなく、慌ただしい日々を過ごしていた舞さん達。その忙しさもやっと落ちついてきました。
舞さんが、今もスペースとしては残っている、自分の部屋でゆっくりと休んでいました。ダンボール箱やら、扇風機やストーブなどの季節ものがかなり置かれていて、だいぶゴタゴタとしています。でも、舞さんが使っていたベッドも机もそのまま置かれていて、確かに、ここで自分が生活していたんだと思い起こすことの出来る部屋です。
「お姉ちゃん。」
小さくノックすると、萌さんが舞さんの部屋に入ってきました。
「仕事、大丈夫なの? お休みは3日間だけだって聞いたと思うんだけど。」
確かに、最初は、休暇は5日間で、そのうち、3日間を使って帰省する予定だったのです。でも、舞さんが穴水町に戻ってから、もう、2週間が過ぎようとしていたのです。
「うん。連絡してあるから大丈夫。」
「なら、いいのか。」
まあ、会社や組織によって多少の差はありますが、冠婚葬祭、特に、ご不幸があった場合には、きちんと連絡をすれば、休暇については融通してもらえます。ノースポール・プロジェクトでもその事情は同じ、というか、休暇を含む福利厚生の制度については、一般の会社よりも整っているのでした。
「ねえ、」
本当は、萌さんの方が用事があって舞さんの部屋に来たはずなのですが、舞さんが先に何か聞こうとしているようです。
「あたし、行っちゃっていいのかな?」
「何で?」
萌さん、少し首を傾げています。舞さん、それに構わず話を続けました。
「おばあちゃんも亡くなっちゃって。家も寂しくなるのかなって思ってさ。」
実は舞さん、物心ついたときから、テレビで時々見る都会の生活に憧れていたのでした。それで、高校3年生の時には、お父さんとお母さんとも何度も話し合って、やっとなことで納得してもらって、東京の大学に進学したのです。
でも、まさか、やっぱり実家に戻ろうという気持ちが出て来たりしているのでしょうか。それを察したのか、萌さんが笑顔で答えました。
「そんなことないよ。お手伝いの人も大勢来るし、他の漁師さんとも一緒に仕事するし。」
確かに、海岸沿いの作業小屋では、シーズンオフでも、常時数人の人が働いていますし、カキのシーズンともなれば、東北や九州から仕事を手伝いに来てくれる日ても集まって、かなりの大人数で作業しているのです。そういう意味では、人が少なくて寂しくなる心配はないのでした。
「まあ確かにね。大丈夫なのかな。」
舞さん、家のことを心配してくれているのでしょうか。
「お姉ちゃん、ずっと前から、東京みたいな大きな街で仕事したいって言ってたじゃない。海外旅行にも行くんだって。」
「そういえば、そうだったね。」
そうそう。それをお父さんとお母さんに何度も何度も説明したのです。そして、念願叶って東京に出た舞さんは、もちろん、遊びもしましたが、周りの友達の誰よりも勉強して、20ヶ国語以上の言語を身につけたのです。もちろん、海外旅行や、海外の友人との会話を通じて積み重ねていった舞さんの実力なのです。そして、その評判を聞きつけて、ノースポール・プロジェクトがオファーを出したのです。
「家のことは大丈夫だから、お姉ちゃんは思った通りに進みなよ。」
萌さん、優しいです。少し弱気になっていたお姉さんの背中を思い切り押してあげました。
「ふふ。なんか、萌の方がお姉さんみたいね。」
「えー、そんなことないよ。お姉ちゃんは、いつでもどこでも、お姉ちゃんだよ。」
「ありがと。」
舞さん、ちょっと畏まって、萌さんにお礼を言いました。
(つづく)
■宇宙巡光艦ノースポール
・第2章 宇宙巡光艇シーライオン
・第1節 静かな海、太平洋
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さらに、第1章の4冊も発売中です。
ノースポールの世界がどのようにして始まることになったのか。
小杉さんとライラさんはどのようにして、プロジェクトに参加することになったのか。物語の発端のわかる内容となっています。
是非、お読み頂けると幸です。
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※ごめんなさい。作者はAndroidユーザーなので、IOSについては苦手なのです。iPhoneにも同様のアプリがあるのだと思います。
以上、よろしくお願いいたします。m(_._)m
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2024/04/20
はとばみなと
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