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[Side Story] 久しぶりの帰省②

■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
久しぶりの帰省②

みなさま、
はとばみなとです。

久し振りに、ふるさとに帰省した舞さん。海岸沿いを歩いていると、近所に住んでいる久地さんという方と出会いました。はじめは、舞さんと同い年のお子さんの話などしていたのですが。

突然、久地さんが思い出したように真剣な眼差しで話し始めました。

「知ってるかな?」

舞さん、久地さんを見つめました。

「だいぶ昔だけどさ、俺と舞ちゃんが立っているこの場所自体が、1mくらい動いたんだ。」

舞さん、もちろん知ってました。もう、30年前の出来事なのです。正式には『令和6年能登半島地震』というそうです。

「小学校の授業で習いました。大きな地震が起きて、地殻の変動があったって。」

授業では、かなり詳しく取り上げていました。震源地や各地の震度、そして、各地の被害も、先生が詳しく説明してくれました。写真もたくさん見せてくれました。みんなで見ました。崩れたり、傾いたりした家が並ぶ街。お父さんやお母さんから、当時の話を家で聞いている友達も大勢いました。もちろん、舞さんも、お父さんやお母さんから、いろいろな話を聞いていました。

「そうなんだよな。信じられないよ。地面が動くなんてさ。」
「大きな地震だったんですよね。しかも、お正月に。」
「ああ。正月だったからさ、酒飲んでコタツで寝てたら、すごい揺れが来てさ。」
「・・・」
「慌てて座布団を被って畳の上にうつ伏せになってたよ。」
「・・・」
「それで、揺れが収まってきたから、外の様子を見に行ったら、町会長が『裏山に逃げろっ』って叫んで走り回っててさ。言われるがままに家族を連れて裏山に向けて走ったんだ。」
「津波が来たんですよね。」
「・・・、そうだな。俺のとこも舞ちゃんのとこもみんな無事で良かったよ。運良く、早めに裏山に逃げることができたからな。頂上に着いて、下を見たら、もう、街中水浸しだったよ。崩れながら流される家もたくさん見えてさあ。恐ろしかったよ。」

久地さんは、再び海の方を向いて腕を組みました。

「舞ちゃんの家、表の道路から高くなってるだろ
?」
「はい。」
「地震の後で建て直す時にかさ上げしたんだよ。」

元の家は、ご近所の家も含めて、地震で壊れたり、津波で壊れたり流されたりで、ほとんど残っていなかったのだそうです。

「街全体をかさ上げするっていう話もあったけどだいぶ時間が掛かるって聞いて、家ごと対応することにしたんだな。」

そうなんですね。舞さんの家族の新しい家は道路から3mほど高くなってるんです。で、家自体は木造3階建てで、1階部分の玄関以外は、物置と車庫だけなんですね。

「1階では怖くて寝られないということになったらしいんだな。」

だから、生活スペースは2階と3階部分にあります。ちなみに、舞さんの部屋は3階の南西の角にあるのでした。今は、ほぼ物置なっていますが、舞さんの残していった荷物もそのまま置いてあるそうです。

話を聞かせてくれている久地さんのお宅も、同じようにかさ上げして建てられています。

やはり、大きな災害に遭うと、生活の風景も街の風景も大きく変わらざるをえないのです。

「折角の帰省なのに、昔話しちゃってごめんね。」
「いえ、そんなことないです。私の暮らした街の歴史は、忘れることなく知っていたいですから。」

舞さんは、久地さんに丁寧に礼をすると海岸沿いの歩道を歩き始めました。

(つづく)


■宇宙巡光艦ノースポール
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2024/04/11
はとばみなと

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