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カレン・ラッセル《エリック・ミューティスの墓なし人形》 〜誰にも届けられることのないこの小さな声を、ライ麦畑で誰がどう、守るのか
『レモン畑の吸血鬼』ラストの作品はティーンエイジャーの不良グループの話である。公園で、彼らはかかしを見つける。かかしというモチーフの印象から小学生くらいかと一瞬思ったが、中学生の頃が回想として出てくるので、それより少し上。高校生くらいだろうか。 ラリーの視点からの明晰な文体の語りの中、ストーリーや感情の主軸とは少し焦点をずらしたようにさりげなく、彼らの生活圏や家庭環境の描写が挟まれる。社会の中ですでに区分けされている立場である現実がちらつき、重なっていく。主人公のラリー・ル