まめなつお

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シン・エヴァンゲリオン見たから、ね

ほとんど満席の映画館。IMAX以外なら、わりと直前でもチケットは取れる。入ると、なにかポップコーン以外の食べ物の油のにおいが強い。アカデミー賞やゴジラ対キングコングの宣伝の最中に席に着くと、隣の人が、予告編終わって、座り直した。 やあやあわれこそは終わりを見届けにきたオタク、いざ決戦の時、という雰囲気がこちらにまで伝わって、なんかちょっと、緊張した。そうだエヴァってそうだった、なにひとつ見逃すまい聞き逃すまい、と気が引き締まった。 結局のところ、今回は、そんなものはなかっ

    • カレン・ラッセル《エリック・ミューティスの墓なし人形》 〜誰にも届けられることのないこの小さな声を、ライ麦畑で誰がどう、守るのか

      『レモン畑の吸血鬼』ラストの作品はティーンエイジャーの不良グループの話である。公園で、彼らはかかしを見つける。かかしというモチーフの印象から小学生くらいかと一瞬思ったが、中学生の頃が回想として出てくるので、それより少し上。高校生くらいだろうか。 ラリーの視点からの明晰な文体の語りの中、ストーリーや感情の主軸とは少し焦点をずらしたようにさりげなく、彼らの生活圏や家庭環境の描写が挟まれる。社会の中ですでに区分けされている立場である現実がちらつき、重なっていく。主人公のラリー・ル

      • カレン・ラッセル《帰還兵》 〜ベヴァリーの孤独、トワイライトゾーンから持ち帰る透明な希望

        ーここにあるのは21世紀の孤独。 噛み付けば、味わえる。 萩尾望都 「帰還兵」がおさめられた短編集『レモン畑の吸血鬼』の帯に、上のコメントがあるらしい。ベヴァリーのことを思った。ベヴァリーの孤独のことを。 ベヴァリーはマッサージ師である。家庭の事情で大学に行かずに資格を取り、仕事に就く。腕があり、勤務態度も真面目で、自分には向いている選択だったと思っている。国の政策で、戦争で傷を負った兵士を無料で治療するプログラムが導入され、ベヴァリーはデレク・ザイガーという二十五歳

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          グイン・サーガ ⚔️🐯 〜媒介者グイン アニメから入って世界観を呑み込めたのは、彼のおかげ〜

          GYAOで無料配信しているグイン・サーガのアニメ、最終回26話の公開が明日で終わってしまう! 英知の結集!というかんじの素晴らしいアニメで、あっという間にのまれていった。1話と最終話のできばえが、もう半端ない。情報量の多さをうまいことアレンジして、瞬時に世界観が把握できるように、ゴージャスに知的に綿密に構築されている。原作を読んではいないがこれを見たらそう思う。 絵もカット割りも、美術も台詞回しも最高。音楽はFFシリーズの植松伸夫が担当しており、これがまた煌びやか、壮厳。

          グイン・サーガ ⚔️🐯 〜媒介者グイン アニメから入って世界観を呑み込めたのは、彼のおかげ〜

          カレン・ラッセル 🍋レモン畑の吸血鬼 〜お国のための糸繰り、虐げられたのちに芽生える決意の尊さ〜

          この本についてはまだ読み途中なのですが、この短編集の2つ目の「お国のための糸繰り」に驚愕しました。まぶたの青い募集人が地方を回り女工たちを集めるところから物語は始まります。 マイアミ生まれの作家が大日本帝国の製糸場を舞台としていることがまず新鮮でひきこまれましたし、光や湿度が身近に感じられるよく知る風景の中に、ラッセルの作家性といえるだろういつもの乾いた幻想的な描写が状況を二転三転させながら入っていくところなど、決して期待を裏切りません。 特に64ページは、グッときすぎ、心

          カレン・ラッセル 🍋レモン畑の吸血鬼 〜お国のための糸繰り、虐げられたのちに芽生える決意の尊さ〜

          ミナペルホネンのつづく、眼福だった

          ミナペルホネンのつづく、眼福だった

          ケン・ローチ 家族を想うとき 〜貧困を描いて辿り着くもう1つの構造、男性ジェンダーの問題

          ケン・ローチが前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』 の撮影でフードバンクに行った時から、忘れられなかったというテーマ。それが今作の主題となる、偽装請負と貧困。業界は配送だが、この映画で告発される内容は業界や国を限らない。問題のある資本主義的な労働システムに搾取されている、社会を支えて毎日働いているけれど貧しい暮らしに固定されてしまう人たちの現実が、労働者階級に寄り添う視点からリアルに描かれていく。 原題はSorry We Missed You、不在時の配達伝票に書かれている

          ケン・ローチ 家族を想うとき 〜貧困を描いて辿り着くもう1つの構造、男性ジェンダーの問題