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グイン・サーガ ⚔️🐯 〜媒介者グイン アニメから入って世界観を呑み込めたのは、彼のおかげ〜

GYAOで無料配信しているグイン・サーガのアニメ、最終回26話の公開が明日で終わってしまう!

英知の結集!というかんじの素晴らしいアニメで、あっという間にのまれていった。1話と最終話のできばえが、もう半端ない。情報量の多さをうまいことアレンジして、瞬時に世界観が把握できるように、ゴージャスに知的に綿密に構築されている。原作を読んではいないがこれを見たらそう思う。

絵もカット割りも、美術も台詞回しも最高。音楽はFFシリーズの植松伸夫が担当しており、これがまた煌びやか、壮厳。未知なる異世界を我が身に体感させるための曲たち。なんとものびやかな仕上がりのアニメで、見ていて気持ちが良い。

まず、グインなのだが、信じられないほどに完っ璧な安心感を覚えるキャラで、言動も行動も、とにかくすべてがかっこいい。服をあまり着ていなくてもグインなら、その仰々しい筋肉すらやりすぎでなく、かっこよさに転じる。記憶を失った豹頭の戦士、戦士というか超戦士、もはや神々のように強い。そしてほんとうに賢い。2話目くらいでレムスにかける言葉に、もう、えーーーーってなってから釘付け、すっかり心を奪われて、グインに会うために楽しみに次回の配信を待つ…そんなルーティンが出来上がってしまった。

活発な少女リンダ、対して双子の弟のレムスは、あれが嫌だこれが出来ないと弱音ばかり。ひょろひょろといつもリンダの後をついて歩き、窮地の際はリンダと離れ離れなんて無理!とまたぐずる。そんなレムスにグインは、「それがお前のよさだ」と言葉を掛ける。王族の育ちでありながら自分の弱さをそのまま口にできること、これがお前のよさであると俺は思っているのだ、なかなか誰もができることではない、と。そして「いまは我慢するんだ」と適切な指示を理由も述べて繰り返してくれる。

それがお前のよさだと「俺は思っている」!!!ここだよねぇ。ひよっこのレムスに対してこのニュアンスがあること。しかもこのタイミングで。圧倒的かつ当然のものとしての、他者への尊重。

グインあなたこそ貴重な人だよ、だってこんなこと言えるひと、それこそ他にいなーーーーい!!一言ずつゆっくりと話す声がまた、低くて心地よく、いつも落ち着いていて、つい言うことを聞いてしまうかんじ。なんの前触れもなく立ち上がったレムスとグインの関係性を、違和感どころか感嘆して受け入れることになって、見ていてびっくりしたシーンだった。いち視聴者としてグインへの信頼が、ここで確固たるものに。

原作のグインはどうやら、もっと海のものとも山のものともつかないかんじが濃くて、味方なのかどうかも謎みたいなところがあるらしい。それはそれで魅力的だろうけど、世界を構築する系のファンタジーに、原作を知らないにも関わらずすんなり入っていけたのは、アニメのグインのキャラのおかげ。

主人公なのに初登場から豹の顔、ずば抜けて優れた人格、その立ち振る舞いから生まれる風格。この組み合わせを見せられたらもう、こちらとしてはただ受け止めるだけ。説明を求める気持ちなんてわいてくる余地もないまま、ここにばしっとリアリティラインを引いてくれる。すわフィクションの世界に突然飛ばされたわたしたちにとっての灯火がグインであり、その明かりのおかげで迷子にならずについていくことができる。物語的にもこの先、グインは自分の記憶を探しながら、別の次元かどこかに存在するらしい隠されたもう一つの世界と中原との架け橋になっていくのだろう。何度か作中で示唆されていたように思うこの役割こそがグインの本質、それをよく捉えたアニメ演出、という感がある。

1979年に1巻を刊行し、130巻まで書いた作者栗本薫が亡くなった後も、バトンを繋いで紡ぎ続けられているという未だ完結していない壮大なスケールの大長編なのだが、栗本の絶大な筆力がさすがらしく、ぽこぽことたくさん出てくるキャラクターたちはそれぞれに深みがあり、面白い。

なかでも物語随一といっていいのではと思うほど魅力が満載だったのはナリス様で、アニメのアルド・ナリスというキャラクターからは個人的に学んだことがある。その話はまたこの次に。

ヘッダー画像: ©栗本薫/天狼プロダクション/Project Guin


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