『天の光はすべて星』読了

有名なSF小説のひとつ、『天の光はすべて星』を読了した。
なぜ読もうと思ったかというと、タイトルの美しさに惹かれたから。
あと、よく色んな作品でタイトルをもじったり引用されている気がする。

本をうわーっと一気読みするような気力がなく、のめり込むように読めないことに悩みながらにちまちまと読み進めた。
このまま本が読めなくなったらどうしようとずっと思っている。ゲームも絵もだ。つらい。

そういう意味で言うと、主人公のマックスの姿は少し見ていて苦しいものがある。
星に憑かれた男、星に憧れ続ける「星屑」。
一心になにかに憧れ、そのためならいくらでも粉骨砕身できる姿は羨ましいとさえ思う。
星に行くためにあらゆる手段を惜しまぬ姿はまさに星に取り憑かれている。
彼のような存在は作中では「星屑」と呼ばれているが、なんと詩的な言い回しかと思う。

木星にロケットを飛ばすことに賛成派の議員を当選まで押し上げ、計画に参加するために学位を取る……と、星に憑かれた男は星を目指して邁進する。
そしてようやく夢に手が届きそうなその時、現実に叩き落とされる。
自分が星へ行くことはないと思い知りながらなおも人類が星へ辿り着くことを信じ、甥にかつての自分の姿を見る。

ロマンティックなタイトルとはイメージの違うストーリー展開だった。
星への憧れと、いつか人類が辿り着くことを信じる希望とも諦めとも取れる次世代への継承。
そういうラストだったと思う。

SFはそれほど得意では無いが、そこまで難しくはなく詳しくなくても読める内容だった。
作中では2000年頃の話だが、その時はまだスマホが普及していなかったと考えると1000年後には今の私たちの思いつきが時代遅れになっているというのもありえる話だ。
そもそも人類自体どうなってるか分からない。

そういうことを考えると、わたしはいつも不安なような壮大なような、よく分からないものへの恐れのような気持ちになる。これが、作中ラストに書かれている神への畏れなのかもしれない。

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