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鬼滅の刃に学ぶ。~何のために生まれてきたのか~

単行本『鬼滅の刃』20、21巻より

黒死牟(巌勝)と縁壱、

有一郎と無一郎の兄弟関係から見えてくる

「何のために生まれてきたのか」という人生の問いをみつめてみる。

私は一体何の為に生まれてきたのだ 教えてくれ 縁壱

上弦の壱 黒死牟は剣技を極めたかった。

極めた技が途絶えてしまうことを嘆いていた。

この国で一番強い「侍」になりたかった。

しかし彼の最期は醜く、一番にもなれない。


黒死牟が人間だった時代の名、

「巌勝(みちかつ)」は 父からつけられた。

いつも勝ち続けるように と願って。


その巌勝が負けたとき

彼は生まれてきた意味、目的を見失った。

彼が追いかけていたのはたったひとつの光だった。

圧倒的強さ。自分たちの世代が特別であるということ。

縁壱 お前になりたかったのだ

これが彼の答えだった。

勝ったか負けたか。それが彼にとっての意味であり、光だったのだ。


幸せそうな人間を見ると幸せな気持ちになる

一方の弟、縁壱は 守ったか守れなかったか。それを光としていた。

同時に、縁壱は自分の生まれてきた意味、目的を見つけていた。

私は この男(鬼舞辻無惨)を倒す為に生まれてきたのだとわかった

縁壱の強さはそのためであり、そのためだけでしかない。

だから縁壱は、多くの人の命が奪われることが心苦しい。

鬼舞辻という存在に、生まれてきた意味を否定されることと同義だからだ。

縁壱は命を美しいものだと思っている。

だから、人間を殺す鬼の存在は

巌勝にとっての「負け」と同じように、否である。


頼むから死んでくれ(兄→弟)

黒死牟にとって、弟の縁壱は

あまりに眩しすぎる光。

自分の生まれてきた意味を否定する存在。

だから、殺したい。

同時に

失った途端、なりたかった姿としての像も、失う。


兄 巌勝は、先に死んだ弟に問うた。

私は 何の為に生まれて来たのだ と。


強さとしての 壱

に上り詰めた黒死牟は

人と人とのつながりを何より大切にする 縁壱

に負けた。

巌勝にとっての生まれてきた意味は、

壱 の他 なにもなかったのだ。

壱 を求め、壱 を失い、なお 壱 を得られない。

何も残せない。何者にもなれない。


祖先として残っている無一郎という存在さえ

自らの手で亡き者にした。



こんなんじゃ 何の為にお前が生まれたのか わからないじゃないか

有一郎もまた、兄でありながら 生まれてきた意味を弟に問うた。

有一郎にとっては、無一郎が無事であることこそ光だった。

自分ではない誰かを想う光だ。


縁壱の光もまた、自分ではない誰かの未来を想う光だった。

その姿は、竈門家の人間にとっても大きな力となり、願いとなった。

炭治郎は縁壱の過去を知ったとき

縁壱さんの心がほんの少しでも救われることを願わずにはいられなかった

その願いを間接的に叶えることとなるのが、

無一郎だ。


僕は幸せになる為に生まれてきたんだ

無一郎は、自分が何の為に生まれてきたのか 分かっていた。


…それでも有一郎にとって、無一郎の死は

生まれてきたのか意味の否定に同義で、苦しいことに違いはない。

無一郎に死なないで欲しかったんだ……無一郎にだけは……

有一郎もまた、たったひとつの光を追いかけた人生だったのかもしれない。

だから、

無一郎が死ぬことを無駄と言い

無一郎を無能と言い死から遠ざけ

無一郎の無限…永遠を祈った。

しかし、無一郎にとっては

仲間のために、有限の命で 無限の力を発揮して 命をかけた人生が

幸せだったのだ。


縁壱が、

幸せそうな人間をみると幸せな気持ちになる

と言った言葉に

時を越えて、無一郎は応えた。

自分でない誰かを想うことで

人と人とのつながりを大切にすることで

幸せをみつけた。


無一郎は、幸せだった。


何のために生まれてきたのか

生きていれば、永遠であれば幸せかのように思えるけれど

それだけではない。

命の美しさを感じることができるか。

永遠に想える大切な、守りたい人がいるか。

そこが肝要だ。

頼むから死んでくれ

と願い生きた巌勝と

無一郎に死なないで欲しかったんだ……

と想いながらも自分はすでに死んでいる有一郎。


巌勝は死して尚、分からず、

同じ場所で、おしえてくれる者はいない。

死んでほしいと、願ったから。嘆いたから。


有一郎は、無一郎の死に悲しみ

死した無一郎に救われた。

生きてほしいと、願ったから。想ったから。



時を越えてつなぎ、救われた心が

人の想いこそが、永遠なんだ。


人を想い 人のために 心を燃やす。

これが、人の生まれてくる責務であり、

これが、人の生まれてくる意味であり、

これが、人が幸せになるための光である。


想うことのできる人とつながるために

私たちは、出会わなくてはならない。

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