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『文豪たちの断謝離 断り、謝り、離れる』(豊岡昭彦、高見澤秀編)

忙しい先生のための作品紹介。第38 弾は……

豊岡昭彦・高見澤秀編『文豪たちの断謝離 断り、謝り、離れる』(秀和システム 2021年)

対応する教材    文学史(夏目漱石、太宰治、芥川龍之介など)
ページ数      254ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★★
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★☆☆☆☆
レベル       ★★★★☆

作品内容

 夏目漱石や太宰治など、教科書で定番の作品を手がけた文豪たちの素顔を、彼らの書簡から明らかにしようという試みがされた1冊。 本書のほとんどは、文豪たちの書簡で構成され、各章の最初にある見開き1ページ分の紹介文を除くと書簡の羅列です。書簡には登場人物に関する注はついていますが、それ以外の詳細な解説はありません。

 全体は8章構成で、人の誘いや申し出を断る「断」、自分の不手際を認め謝罪する「謝」、人やものと別れる「離」 をテーマに、文豪たちの書簡をまとめて います。例えば第1章「断 『ふざけるな!』 単刀直入かつ丁寧にスパッと斬る」では、端的な言葉で借金の願いを断る夏目漱石や、先方の無礼に憤り講演会を断る谷崎潤一郎などの手紙     が取り上げられています。各書簡には編者によってタイトルが付けられており、内容が端的に分かるのが面白いポイントです。

おすすめポイント 作品を卑下する人には『アハハハハ。』と言う漱石

 夏目漱石といえば、どんなイメージがありますか。決して文学に詳しくなかった高校時代の私にとっては、「元々英語の教師の   、真面目で温厚そうな人」という印象でした。しかし、漱石の作品やエピソードを知るにつれて、これは文学史に書かれた単語から勝手に作り上げたイメージだということに気付きはじめました。

 本書を読むと、繊細というよりも豪快で簡潔な文章を書く様子が垣間見えます。恩師への書簡の中で、自らのヒット作を非難した作家を嘲るように「アハハハハ。」と書く漱石。想像していたよりも、随分と痛快です。
教科書作品や文学史で勉強していた時とはまた違った、文豪たちの普段の姿が見られるところが、おすすめできるポイントです。

活用方法

 授業で扱う作家の人物像を取り上げる際に役立つ一冊です。取り上げられている書簡それぞれに詳しい解説がついているわけではないので、授業内で扱う際にはもう少し調査が必要かもしれませんが、巻末についている「参考文献」も合わせて見ることで、どのような文献を当たればより詳しい情報が見られるのかも分かります。

 また夏目漱石、太宰治、芥川龍之介、梶井基次郎と、教科書掲載作品を手がけた作家の書簡も多く取り上げられているので、授業で使いやすいと言えるのではないでしょうか。

【本書に登場する文豪たち】
太宰治
夏目漱石
石川啄木
島崎藤村
芥川龍之介
中原中也
坂口安吾
中島敦
谷崎潤一郎
佐藤春夫
有島武郎
梶井基次郎

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