遠い遠い

遠い遠い
背の低い草がびっしりと生えている土地
離れた所にいる牛がその草を喰む
肥料の臭いに顔をしかめながら
開けた窓を閉めない

遠い遠い
世界の端っこには
綺麗な山並みと平らな地面がある
牛飼いの彼の顔はよく見えない

僕は何をするでもない
風向きが変わって今度は湿気った土の臭いがしてくる
雨が降るのかもしれない

僕は何をするでもない
ちょうどいい高さの流木を探して枕にして
青緑の大地に流れ着く木々を眺めてる

空は曇っても草原は溌剌としてる
逆さまになった太陽が土の下に潜ったからだ

遠い遠い
どこでもなかった場所
遠い遠い
僕の故郷

波打つ草原の中で大きな象が歩く
波打つ草原に乗って狐の群れが戯れる

僕は何をするでもない
ただ此処にいるんだ
鹿を追い回す彼女を眺めて
深く息を吸ってる

遠い遠い
僕の故郷

僕の帰る所で
僕は何をするでもない

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