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ハーバード教育大学院でコーチングマインドを体感する

この記事はこんな方向けに書いています:
・ハーバードでコーチングの勉強ができるのか知りたい
・日本とアメリカのコーチングの違いについて知りたい
・アメリカでの最新のコーチング事情について知りたい


あっという間に4月が訪れたことに驚いているまなみです。
春学期の授業は4月末までなのですが、春学期前半だけの授業を2つ取っていたので、そのうちの1つだったコーチングの授業について紹介します。

日本の方とお話ししていて、「ハーバードでコーチングは学べますか?」という質問をよくいただくのですが、ハーバードでのコーチングの授業は一連のツイートの通り、ほぼ教育大学院に固まっています。
他にもメディカルスクールにInstitute of Coachingがあったり、ハーバード全体でピアコーチングの仕組みがあったり、ハーバードビジネスレビューで不定期に取り上げられたりしているようです。



教育大学院で提供されているコーチングについての授業のうち、春学期に抽選制で履修できる「Essentials of Coaching for Leaders and Educators」を受けたので、本記事ではその授業で学んだことについてご紹介します。


授業で取り扱うフレームワーク


コーチングの授業は全7回!あっという間に過ぎてしまいました。
まず第1回目にコーチングとその他の対人支援の種類の違いについてクラスで話し合います。



その後は、毎週色々なコーチングのフレームワークについて学び、アサインされた固定の3人組で宿題としてトライポッドに取り組みます。
私は日本ではTHE COACHのIntegration Journeyを主に使っていたので、色々なフレームワークがあるんだなぁと学びになりました。


取り扱うフレームワーク
GROWモデル
Convu Map
・Core Values/Identity Markers
Immunity to Change(変化に対する免疫)


Immunity to Changeを教えにきてくれたDeborah Helsing教授(左)と、この授業を担当するAllison Pingree教授(右)。


その他にも途中でこの授業を受けた卒業生のパネルディスカッションがあったり、最終回は個人プロジェクト共有会と、19時スタートと夜遅いものの和気藹々とした授業でした。


特に印象的だった学び3選


授業を受け終わってみて、アメリカで改めてコーチングを学び直したことで、自分のコーチングというツールボックスの中身が増えたようで、受講することにしてとても良かったなと思っています。
特に印象的だった3つの学びポイントもご紹介します。


授業自体がその授業が教えている教育思想を体現できているか


秋学期のいじめの授業でも思ったのですが、授業自体がその授業が説いている教育思想を体現できているかはとても重要なことだと感じました。
コーチングの授業も、コーチングの場のように心理的安全性高く、みんなが協力しながら新しいことにチャレンジできる環境が整っていました。
例えば授業の初めには生徒のうち誰かが必ずグラウンディング・エクササイズというのをリードして、みんなで深呼吸や瞑想をして気持ちを落ち着かせてから授業に入ります。
また、授業には名札が準備されていたり、シフト制で生徒の誰かがお菓子を持ってくるようになっていたりと、授業に集中できるように身の回りを整える工夫が授業の中に含まれています。


インド人の同級生が材料を持ってきて、その場でインドのお菓子を作ってくれました。


例えば「民主主義が大事な価値観だ」と言っているのに、発言者や組織や授業そのものが民主的でないことはよくあるように感じます。
私も21世紀型教育を研究している身として、自分が教える内容だけでなく教える場そのものが21世紀型教育の思想に則ったものになるように日々工夫できるよう、色々なヒントをもらうことができました。


国を超えても境遇が似ていると悩みも似ている


今回アサインされた3人組で5回一緒にトライポッドをしたのですが、これがすごく楽しい経験でした。
他の2人は私のようにコーチングスクールに通ったことがあるわけではなく、授業でも質問一覧などは特に配られなかったのですが、2人とも初回からすごく自然にオープンクエスチョンをしていました。
5回続けていると国籍も年齢も違うのに、「あれ…このトピック今コーチとして聞いているけど、これって私のテーマじゃなかったっけ?」と錯覚することが増えてきて、5回目はセッションの時間を超えて3人でぶっちゃけトークをしていました。
教育大学院で一緒にコーチングの授業を受けている仲間としてお互いから学ぶことが多く、宝物のような時間だったな〜と思います。


アメリカは職場でのコーチングが一般的だから市場が大きい


アメリカのコーチング市場は日本の約50倍だそうです。
どうしてそうなのだろうと考えると、アメリカは個人がコーチを契約するというより、企業が特にマネジメントのためにコーチをアサインしてくれることが多いそうです。
これは企業だけでなく、日本より地方分権的で生徒の成績によって予算が変わる場合がある、アメリカの学校の校長先生にも当てはまります。
ハーバードビジネスレビューの記事では「個人的な悩みのためにコーチとして雇われましたか?」という質問に対して「はい」と答えているのは3%のみになっています。

一方で同じ記事では、「個人的な理由についてコーチングのサポートを提供しましたか?」という質問に対して「はい」と答えているのが76%という結果も出ています。
このことからコーチングを受けるきっかけは企業による派遣だけれども、仕事について話していく中で、結局個人的な理由が日々のパフォーマンスに左右していることが分かるのだなと思いました。


いよいよ最終プロジェクト!


気がついたら授業の最終回!
授業が終わってしまうのは寂しいですが、この日は最終プロジェクトの共有会でした。
この最終プロジェクトでは授業で学んだコーチングについてのフレームワークを、自分の仕事経験に照らし合わせて、必要なツールを作ってシェアするという内容でした。

これがまあ面白いこと!
みんな多様な仕事経験を持っているので、色々なアイディアが出てくる!
インド人の同級生はコーチングの質問を元にしたジャーナリングブックを作っていたり、シンガポール人の同級生は「生徒が先生をコーチングすることは可能か?」というテーマでブックレットを作っていたりしました。


アジア系アメリカ人の同級生は箱まで作ってコーチングの質問のカードセットを持ってきました。


さて!私の最終プロジェクトですが…
私は前職の経験から、日本の学校でも学校管理職に対してコーチングが受けられる機会があるといいのではないかと思い、コーチングの必要性や効用、学校管理職向けの質問集、一緒に働く仲間に対して活用できる考え方についてのウェブサイトをまとめました。
英語で作った後に日本語にも訳したので、日本の方にもぜひ下のリンクを開いていただき、面白かったらシェアしていただけるととても嬉しいです。



そしてなんと!
コーチングの授業で学んだことや、学校管理職向けのコーチングの必要性について話したことが、4月1日発売の「月刊先端教育」内の記事になっています。
THE COACHのおかちゃんと一緒に対談しているので、こちらもお手に取っていただけると嬉しいです。



もう1つの宣伝として、4/10(月) 19:30-21:30に成人発達理論を実践されている鈴木規夫さんとコーチングでお世話になっている松下琴乃さんと一緒に、教育大学院について話すオンラインイベントを開きます!
教育大学院に出願した経緯や生活、学んでいること(探究、PBL、学校デザイン、認知科学、コーチング、試験勉強、いじめ、パブリック・ナレーティブ)など幅広くお話するので気になるキーワードがあればぜひ遊びにいらしてください。



この記事やウェブサイト、雑誌を読んで私のコーチングに興味を持っていただいたら、私のホームページから体験セッションにお申し込みください。
皆さんの想いについて聴けるのをとても楽しみにしています。



Special thanks to A011H class!

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