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当たり前が変わりつつある今、性別のある言語の行末は。

学生最後の年、アラビア語・ロシア語を学び始めた。
フランス語やドイツ語などヨーロッパの言語を学んだことがある人は知っているかもしれないが、女性名詞・男性名詞といった性が付与されている言語がある。

少し意外ではあったがアラビア語やロシア語も例外ではなく、
ロシア語でロシア人と言いたい時には、「ру́сский」(男性のロシア人)「ру́сская」(女性のロシア人)というように区別されている。

あーこんな感じで覚える必要がある単語が倍か...と思うだけだった。
だけど一方で、ふとこんなことも思った。

「LGBTQの人はどうやって自称しているのだろうか。」

この疑問をアラビア語・ロシア語の先生それぞれに問いかけたところ、
面白い質問ですねえ、と言ったものの、明確な回答を持つ者はいなかった。

もう少し詳細に説明してみたい。
例えば、生物学的に女性として生まれた場合、一般的には幼少期には

я ру́сская.  ー 私はロシア人(女性)です。

と話すことになる。

しかし、自分自身はレズビアンもしくは身体的な性別と性自認が一致しない場合、上のような何気ない文章を口にするだけでも

私は女性と自認しているわけではないのに...と思いつつも、男性名詞で伝えるということは自分の意思が伴っていなくても自動的にカミングアウトしてしまうことにもなる。

こんな葛藤を文法性を持つ言語を話す人たちには降りかかっているのではないか。

ロシア語の先生から聞いたところによると、19世紀にレズビアンのロシア人作家がいたらしい。その人が書かれた文章では、意識的に男性名詞を用いられて書かれている部分と、おそらく無意識に今までの習慣で女性名詞や文法が用いられて書かれている部分と混在していたらしい。

この使い分けにおそらく彼女ならではの「メッセージ」が込められていたのだろう。

今までは男性と女性、それだけで完結していたからこそ、言語における男性名詞(文法)、女性名詞(文法)で問題がなかった。

しかし、今ジェンダーにようやくより幅広い認識が広まっている中、
言語はどのように適応・変化していくのか。また変化していかないのか。

参考文献:
中尾泰子, アマゾンの愛 ―ツヴェターエワの「女友だち」試論―
筑波大学比較・理論文学会, no.14, pp.67-80, 1997-03-19. 

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