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「イオンとは何か」を周期表から読み解く:#00071

 神経応答の分子メカニズムを理解するには、「イオンとは何か?」を理解する必要があります。これは「溶けるとは何か?」にも繋がります。今回は、神経の電位変化の理解のために必要なイオンの電気的特性について説明します。(小野堅太郎)

 動画序盤では錬金術の話となっています。オカルト認定された錬金術ですが、歴史を紐解くと多くの有名な科学者は「錬金術師」であり、昔はちゃんとした「科学(自然哲学)」の1つとして捉えられていました。古代ギリシアのエンペドクレスによる四元素説「火・気・水・土」が基本となっています。後に、アリストテレスが「熱・冷・湿・乾」という四性質を打ち出し、四元素説と融合して複雑化し、ルネッサンス期以降の15世紀になってパラケルススにより超オカルトな体系に錬金術は進化していきます。

 17世紀になってニュートンなどがプリンキピアを発表した時代も錬金術は秘密裏に科学者たちによって続けられます。しかし、18世紀フランス革命前、ラボアジェによる「水の分解」により「水が元素である」という錬金術の基本理念は完全に崩壊します。そこら辺の内容は、下記の過去記事をご覧ください。

 さて、19世紀、ロシアの研究者メンデレーエフが「発見されている原子の性質が周期的な並びを持っている」ということに気づきます。これが現在の「周期表」の基となり、後に穴ぽこだらけの周期表の部分は埋められて完成したわけです。錬金術から始まる2000年の科学成果が、現在、中学校理科で12歳の子たちに教えられているわけです。スゴイです。

 元素とは「もうこれ以上分解できないモノ」ですが、陽子、電子、中性子からなり、さらにクオークなどに分けられます。イオンの話をするなら、陽子と電子については知っておく必要があります。元素の中央部分には陽子が集まっており、その周囲を電子が回っている、というような状況にあります。回る領域や、その領域を回る電子の数は、決まっています。その外側にある電子が飛び出したり、逆に電子を受け取ったりしたものがイオンです。そのため、電気的な不均衡が生じます。

 今回の動画は、ここまででです。次回から、電離、イオン化するとは何か、について解説していきます。神経はイオンの電気的不均衡を利用して、電気活動を発生させています。お楽しみに!

01:20 錬金術と化学
04:15 錬金術を終わらせたラボアジェ
07:41 メンデレーエフの周期表
10:05 周期表から考えるイオン
15:50 イオン結合は強い?弱い?

補足・訂正

 最後の方でナトリウムイオンとカルシウムイオンがごっちゃになっています。すいません。

動画クイズの答え

 「造幣局の局長」が答えです。当時は、銀本位制でした。贋金が横行して金融不安に陥ったイギリスをニュートンは救います。錬金術で会得した金属加熱の技術を使って、効率的な銀貨生産、偽造の難しい刻印技術、贋金づくりの摘発など、「社会への研究者利用の鏡」というべき活躍をします。下記のnote過去記事を参照してください。


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