コロナ禍をもう一歩理解する動画3選

 メディアやSNSで情報があふれかえっている新型コロナ災禍。フェイクニュースで惑わされる前に、もう一度しっかり基礎を学んでみよう。細菌とウイルスの違い、PCR法?、抗体とは?マナビ研究室の過去動画3つを紹介します。(小野堅太郎、吉野賢一、中富千尋)

ウイルスは細菌ではないの?

 正確には、細菌ではありません。生物学では、「生物ではない」とも書かれています。一方で、微生物学では分類の一つに組み込まれています。微生物の俗称である「ばい菌」にはウイルスは含まれます。え、どういうこと?と疑問を感じたあなた、正解です。ウイルスは、そういったものなのです。生物学における生物の定義にはウイルスは当てはまりませんので、紹介動画では吉野がウイルスに学名がついてないことを説明しています。小野は、その生物の定義を納得しておらず、ウイルスは生物であると考えています(厳密には生物機械。ファージと同じく。)。動画の撮影時間よりも、終わった後の生物の定義についての議論の方が長かったぐらいです。

 ウイルスを菌と言ってしまっても、言葉は「伝わればいい」のですから、社会的には問題ないでしょう(学生の皆さん、試験ではバツになるので注意!)。ちなみに新型コロナウイルスは「SARS-CoV-2(サーズコロナウイルス2)」と2020年2月に正式に命名されましたが、いまだに「新型コロナ」と言われています。この方が社会的に理解されやすいからです。また、同じ日にSARS-CoV-2による感染症のことを「COVID19(コビッド19)」と命名されています。つまり、ウイルスそのもののことを言うならサーズコロナウイルス2と言わなければいけませんし、人における感染症のことを言うならコビッド19と言うのが正解です。研究者間でも時々混同してしゃべっています。言い直すのもめんどくさいですし。

 下記の動画から生物とは何か、生物の多様性、生物界の形成を感じ取り、マナビを得てくれたら幸いです。

PCR検査ってなに?

 PCR検査とは、短時間で膨大にDNAを増幅させるPCR法を利用しています。PCRとは、「ポリメラーゼ連鎖反応」の英語略です。検査の現場を知りませんが、SARS-CoV-2はRNAウイルスなので、RNAをDNAにするという逆転写作業をしていると思います。鼻粘膜からのサンプル採取に加えて、唾液サンプルからの検査も始まりました。PCR検査はDNA増幅から「SARS-CoV-2がいるのか、いないのか」を判定する方法です。抗原検査というものもあり、原理は異なるものの、目的はPCR検査と同じです。

 動画では「すごい短時間で実験できる。」と言っていますが、PCR検査の現場ではそうはいかないと思います。サンプルの採取から、移送、感染対策下でのサンプル調整、定量性PCRでのDNA増幅効率とサイクル数閾値の設定など、想像すると泡を吹いてしまいます。サンプルの取り違いやコンタミ(他のものが混ざる)を絶対避けなければいけません。九州歯科大学は第2波がきた北九州市にあります。毎日の検査数はすごい数です。検査されている方たちに本当に感謝しています。

 下記の動画では、PCR法の原理理解と実験での注意点を中心に話しています。PCR検査がどういったものなのかという理解にも、十分役立つと思います。撮影時にコロナ禍に入ったため、聞き役の中富がマスクをしています。

抗体検査ってなに?

 PCR検査の話から、ようやく抗体検査の話題も取り上げられるようなりました。身体は感染に対する種々の防御機構を持っています。抗体とは白血球の1種であるB細胞が産生する物質で、「液性免疫」に分類されます。抗体はある病原体だけと結合する物質なため、これが血液中にあるということは、「かつて感染していた。」という痕跡を見ることができます。ただ、SARS-CoV-2に対する抗体産生と消失の時間経過がよくわかっていないので、手放しに検査結果に一喜一憂することはできません。

 抗体研究では多くの日本人研究者がブレイクスルーを起こしています(動画に説明あり)。とにかく抗体はすごくて、我々研究者が実験をする際にもなくてはならないツールとなっています。免疫学だけでなく、あらゆる研究分野で応用されています。そんなすごい抗体は、私たちの体で設計され、常に病原体の侵入を監視しています。コロナ禍で子供の予防接種が減っているという話を聞きます。非常に大事なことですので、きちんと接種していただきたいです。

 下記の動画は、抗体検査だけでなく、「ワクチン」とは何かという理解にも繋がります。2020年4月から赴任した中富が解説しています。

 動画を全部見ていただくと1時間もの長時間となりますので、小分けに視聴することをお勧めします。駆け出しYouTubersなので、お見苦しい点はご容赦ください。間違っている個所があれば、ご指摘をよろしくお願いします。皆さんにとって、良きマナビの時間となることを期待します。

全記事を無料で公開しています。面白いと思っていただけた方は、サポートしていただけると嬉しいです。マナビ研究室の活動に使用させていただきます。