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YouTube動画解説:マナビ研究室

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マナビ研究室が公開しているYouTube動画の解説記事を集めています。動画の補足説明や、訂正などをしています。影機材・設備・編集・音楽などの情報も記録しています。
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2021年7月の記事一覧

活動電位の発生メカニズムはどうやって解明されたか! #00059

 前2記事でようやく活動電位メカニズム解明に至る背景を話すことができました。要するに、さんざん実験して基本的な細胞膜の電気的特性が明らかになったにもかかわらず、神経がどうやって情報伝導を行っているかは不明だったわけです。そこで4人のスーパー電気生理学者たちが現れます。(小野堅太郎)  1年前、下の2記事が代表するようにマナビ研究室では「神経の電気反応」について語ってきた(吉野先生と小野がそれぞれ執筆)。すべての始まりは18世紀後半のガルバーニ(イタリア)による「カエルの坐骨

細胞膜は抵抗とコンデンサーの働きを持っている #00058

 前回の記事では、活動電位の理解の前に細胞内が-60mVぐらい(静止膜電位)になっている仕組みについて話しました。今回は、細胞膜の電気的特性についてです。(小野堅太郎)  静止膜電位は、「細胞内外のカリウムイオンの濃度差」と「細胞膜でのカリウムイオンチャネルの存在」により安定的に分極している状態を形成してるわけです。これらの用語については、前記事を復習してください。  細胞膜は脂質二重膜を基本としてできています。脂質二重膜はリン脂質からなる膜が2つに重なった膜です。シャボ

細胞内はどうしてマイナスの電気を帯びてるの? #00057

 活動電位の理解の前に、細胞内の電位がどうしてマイナスになっているのか、を理解しておかないといけません。これは細胞膜にはイオン種選択的な流入経路があり、細胞内外でカリウムイオンの濃度差が存在するためです。仮想実験を使って簡単に説明します。(小野堅太郎)  まずは、平衡電位なるモノを理解するために仮想実験を行ってみましょう。実験条件として、カリウムイオンだけが通る孔(ポア)をもった膜で仕切られた2つの溶液が入った水槽を思い浮かべてください。水槽に向かって左側にはカリウムイオン

活動電位は如何にして軸索を伝導するか #00056

 前回の記事では「ケーブルを電気が伝わる仕組み」について話しました。今回は、このケーブルを「神経軸索」に置き換えて活動電位の伝導を解説していきます。(小野堅太郎)  金属線では自由電子の動きによって電気的な変化を起こすことができます。自由電子の流れにくさを「抵抗」といいます。電気の流れやすさは「コンダクタンス」といって、抵抗の逆数です。抵抗の単位は「Ω」ですが、コンダクタンスは「S(ジーメンス)」となります。conductionが「伝導」という意味ですので、conducta