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浴室の真っ青な固形石鹸

シャワーを浴びようとして何気なく浴室に入ったら、何か真っ青な物体が置いてあった。

なんだこれと思うより先に、固形石鹸だろうなと気付く。なぜなら、いつも固形石鹸を置く石鹸置きにその青は鎮座していたから。

私は今実家に住んでいるので、この日はありがたいことに両親のどちらかが新しい石鹸を補充してくれていたらしい。何も知らず浴室に入った私はギョッとした。本当に色が本当に真っ青だったからだ。どのくらいかのいうと、この記事のサムネイルにお借りしている画像ぐらい青い。(と言いたいがために画像をお借りしました。ありがとうございます)

シャワーを浴びたあと、両親に「あの青い石鹸は何?」と聞いてみたところ、補充してくれたのは母だったらしい。よくよく聞くと、昔誰かからもらった石鹸で、海外のスキンケアブランド・LUSHのものだという。ネットで検索をかけると確かにそれらしい商品が出てきた。

消費されてこなかったギフトの固形石鹸たち

我が家には、昔誰かからもらった固形石鹸がたくさんある。それに気付いたのは1年前だった。

1年前、経年劣化でだめになった洗面台を新しいものに買い替えた。家族3人で洗面台の中身を出して、掃除をして、中に入っている洗剤やらストックのシャンプーやらヘアケアアイテムやら……を断捨離したり新しい洗面台に収納したりした。

その最中で、昔誰かからもらった固形石鹸が多すぎることが判明した。ギフトに選ばれやすい手軽な価格と、性別問わず喜ばれやすい消耗品ということもあり、我が家には両親が誰かからもらった固形石鹸が大量にあったのだ。なぜ大量にあるのかというと理由は簡単で、もらったらもらいっぱなしで消費してこなかったから。

以来、昔誰かからもらった固形石鹸をひたすら消費する日々が続いている。1個なくなったらまた1個新しいものを開けるので、毎回違う石鹸を使う。丸いもの、四角いもの、半透明のもの、中に花びらが入っているもの、香りが良いもの、泡立ちが良いもの悪いもの。石鹸といってもいろいろあるので、使用感や見た目の違いを見るのはなかなか面白い。

真っ青な石鹸を使ってみる

とはいえ、真っ青な石鹸にはびっくりした。何度見ても目が覚めるような青色だ。以前コスメブランドの石鹸で似たようなものを口コミサイトで見かけたことがあったので、真っ青な石鹸が世の中に存在すること自体は知っていたけれど、実物を前にするとなんとなく怯む。

ボディタオルに真っ青な石鹸を滑らせてみると、生成色のボディタオルがうっすら青くなった。正直泡立ちはそんなに良くないので追加で石鹸を擦ると、よりボディタオルに青色が移った。古いせいか、においはあんまりしない。色以外はふつうの使用感だった。

体を洗い終わってから風呂桶に水を張り、ボディタオルを洗おうと水の中に沈めた。そして洗っていると、風呂桶の中の水がうっすら青色になっていく。この色はまさに、水彩絵の具のようだと思った。小学生の頃の図工の時間、バケツに水を入れて水彩絵の具を溶かしていた記憶が蘇る。なつかしい。浴室の中で突然童心に帰って、楽しくなってしまった。

モノを溜め込むのは良くないと思ってきたけれど

よく考えてみれば、毎回違う石鹸を使える日々はかなり楽しい。お気に入りのアイテムをずっと使うのも好きだけれど、私は割と新しいものをいろいろ試してみたいほうだと思う。この商品は使い勝手が良いだの香りが好みだの、口コミサイトに書きこんだり友人との話のネタにしたりするのもけっこう好きだ。

1年前に「これから貰い物の固形石鹸をひたすら消費しよう」となったとき、私は「今まで溜め込んできたせいでこんなことに……」とやや呆れた気持ちだった。どちらかといえば私はもらったものをなるべく早めに使うよう努めているタイプだけれど、家族がもらったものまでは口出ししてこなかったので今に至る。

確かに、今回のように固形石鹸を放置していると香りが薄くなったり、ものによっては泡立ちが悪くなる可能性もあるかもしれない。でも今回の一件で、溜め込んだものを一気に消費するのもそれはそれで楽しくて良いな、と思えた。大袈裟かもしれないけれど、石鹸が奇抜なだけでちょっとした非日常感がある。現にこうしてエッセイネタにもなってもいる。

私は今年中に実家を出る予定だ。多分この「昔誰かからもらった固形石鹸」の消費は私が実家を出てもなお終わらないだろう。両親2人に頑張っていただくしかない。当たり前だけれど、私が実家を出ても両親の生活は続いていくのだなあ、と思う。

私は私で、新たな住まいとなる賃貸の浴室で、ドラッグストアだかスーパーだかで買った固形石鹸を使うのだろう。別々の生活が始まるまであと少し、今はまだ真っ青な石鹸を共用で使っている。

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