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数学

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代数拡大と部分環の商体

これを友人J.K.に相談したところ進展があった.この命題が成り立つことと$${K/\mathbb{Q}}$$が代数拡大であることが同値になるのだ.さらに$${L/K}$$に対して命題を適切に書き換えると,$${L/K}$$が代数拡大であることと命題が成り立つことが同値になる.具体的には以下である.

本稿はその証明である.なお証明はほぼJ.K.のアイデアである.

分離二次拡大の決定

 二次体$${\mathbb{Q}(\sqrt{d})}$$を考えるときよく$${d}$$は平方因子を持たないと仮定するが,これは妥当な仮定だろうか.つまりこの仮定を置いても二次体全てを取りこぼしなく扱えるだろうか.感覚的には当たり前かも知れないこの仮定の妥当性を本記事では一般的な議論から確認する.詳しく言えば,与えられた体の分離二次拡大をその体の平方元全体などを調べることで決定できることについて

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令和6年度 京都大学大学院理学研究科数学専攻・数理解析専攻 入試問題 解答

 基礎科目の大問1〜6と専門科目の大問1〜3(代数系)の解答です。口頭試問で聞かれたことも書いてあります。

 また院試体験記を書いたので、よければ院試勉強の参考にしてください。京大数学教室、RIMSの倍率などのデータも載ってます。

準同型の数え上げ

院試対策をしていたところ,次のような問題があった.

本稿ではこのような準同型の数え上げの問題を解く方法を解説する.

一位の極の留数の計算方法

 院試対策のゼミで,ゼミのメンバーの一人が一位の極の留数の簡単な計算方法を見つけた.簡潔に言えば一位の極について次が成り立つ.

$$
\mathrm{Res}(f,\alpha)=\bigg(\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}z}\frac{1}{f(z)}\bigg)^{-1}\bigg|_{z=\alpha}.
$$

 これを用いると留数計算が簡単になることがある.本

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半直積を知ろう

 半直積からこれまで逃げ続けてきたが,院試を目の前にして逃げられなくなったので,自分の備忘録も兼ねて半直積についてまとめた.直積分解に注目することで半直積を直積の一般化として自然に導入する.またガロア理論で登場する半直積についても紹介する.

【更新履歴】
2024-05-09 命題1の(1)に内部直積であることを明記した.

有限集合上のフィルターと約積

 直積の一般化として約積というものが知られている.大雑把に言えば約積とは直積をフィルターというものを使って同値関係で割ったものである.
 約積の具体例を考えているときに,有限個の構造の約積は,結局直積になることに気がついた.そのことについて記しておく.

指数nの部分群の個数の求め方

 上のような与えられたアーベル群の指数$${n}$$の部分群の個数を求める問題の解き方をまとめた.指数2のとき$${\Z/2\Z}$$への全射準同型の個数と対応があることは有名かもしれない.指数2でない場合にもこれと同様の手法が使えるが,見落としがちな落とし穴がある.参考になれば.

記事の中で問題を準同型の数え上げに帰着させるが,準同型の数え上げの方法は以下の記事を参照.

圏論的に見る像,逆像にかかる包含関係

 像,逆像にかかる包含関係は,例えば

$$
f \left(\bigcup_{i\in I} U_i\right)=\bigcup_{i\in I}f(U_i),\\
f\left(\bigcap_{i\in I} U_i\right)\subseteq\bigcap_{i\in I}f(U_i),\\
f^{-1}\left(\bigcup_{i\in I} V_i\right)=\bigcu

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漸化式千本ノック(Focus Gold 数学II+Bに添えて)

 Focus Gold 数学II+Bを補完する形で作った漸化式の問題集です。Focus Goldはレベルが高い分、基本的な問題の演習問題の数があまりないので、テスト対策で演習を重ねたい人など向けです。(第三者の校閲が入ってないので使用は自己責任で)

積分いたしますわよ

 一年ほど前に塾講のアルバイトで自作した、数学IIIの積分法についてのプリントです。どうしても硬くなってしまう文章を和らげるため、お嬢様言葉で書かれています。(第三者に校閲されていないので使用は自己責任で)

曲率の一般化と曲線の合同性

 幾何学入門演習の授業で出された問題を解いていて,曲率を高次元に一般化し合同性との関連を議論できた.嬉しかったのでPDFを残しておく.

 余談だが,最近数学をあまり楽しめていなかった.昔は遊びに近かったものが,どちらかというと勉強に近いものになっていた.しかしこの曲率の一般化をしているときは久しぶりにワクワクした.数学に若干失望しかけていたけれど,思い違いだったのかもしれないと思えた.小学生のと

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部分分数分解について

 塾講のアルバイトで部分分数分解について考えることがあり以前それをPDFにまとめたのだが,それがAhlfors複素解析(2章1-4,p33,34)に出てきた命題の別証明になっていて嬉しかったので載せておく.本当は実係数多項式の話まで持ち込みたかったがそちらの証明はまだできていない.