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休日魔女のカレンダー#01 季節の花を飾る
やっと真夏日が過ぎ去りつつあり、いつの間にか蝉の鳴き声も聞こえなくなり……今朝犬の散歩に出たら風が完全に秋の匂いで、思わず「秋の匂いだー!!」と声に出して言ってしまった。何をもって『秋の匂い』なのか、何とも言い難いけれど……空気の乾いてきた感じとか、土の匂いにちょっと枯れた草の匂いが混じっている感じとか……
9月上旬はひたすら日差しが刺さるように痛い日々だったので、ちょっとホッとする時間ができて本当に助かっている。
私は現在花用の冷蔵庫(フラワーキーパー)がない店で働いているので、夏が苦手な花たちはそもそも入荷しないか、需要がある花はギリギリの入荷数。それでも余る以前に温度と湿気でダメになってしまいロスが増える猛暑……それを過ぎて、やっとバラなどの秋に旬を迎える花たちも入荷後の心配が減ってきて一安心。
ということで、【休日魔女のカレンダー】9月#01『季節の花を飾る』
をテーマに書いていこうと思います。
今回の花は、前置きの通り『バラ』にしました。
添えてあるのは、『ワレモコウ』です。
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ワレモコウは折れてしまった子をもらって来た。
花屋に一年中あるバラは一応旬があり、種類にもよるが、大体は春と秋が一番いい時期ではないだろうか。
暑さや湿気に弱いので、冬の方が長持ちする。でも、冬は蕾が硬過ぎてなかなか咲かなかったりも……咲くのを楽しみたければ、春か秋がオススメ。
しかも、種類によっては春しか咲かないので出回る時期が限られている子もいる。なので、お気に入りのバラを見つけたら買っておくべし。
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花を買ってきたらやること
バラの水揚げ
すでにお花をよく買って飾る人には当たり前かもしれない。
バラはお水をよく吸う花。なので、大体は茎をカットする時は斜めに切る。
茎がかなり細い、何だかみずみずしくない、蕾が硬くて咲きそうもない……
そういう時は、写真よりももっと鋭く斜めにカット。水に触れる面をできるだけ大きくして、沢山水を吸わせる作戦。ついている葉も減らす。
花を咲かせるにはたくさん水を吸う必要があり、その為に斜めカットをします。そして、葉からの水分蒸散も減らす為に葉っぱを取る。
が、それと同時に
水に触れる面を大きくする=水を沢山吸う🟰花が咲く=早く寿命を迎える
ということでもあるので、温かい日が続くような季節や、飾りたい場所の室温が高い、ゆっくりと楽しみたい場合は、水が下がってくたくたになっている状態を除いて、鋭くない程度に斜めで良いかと。もしくは普通にまっすぐ切るという手もある。
葉っぱもそこまで減らさなくて良いと思う。
この辺りの判断は、蕾の状態、茎の太さ、気温など、いろいろな条件によって全部違ってくるので何とも言えないけれど、とりあえず一般的にはまっすぐカットよりかは、気持ち斜めカットの方で良いと思う。
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ちなみに、ワレモコウも同じように斜めにカット。でも、この花に関しては別にまっすぐカットでも全然大丈夫。
あと、たまにお客様からも「水切りした方がいいの?」と聞かれることがあるが、「別に水切りしなくて大丈夫です!ただ、切り口乾く前にお水を用意してから切ってあげて下さい」とお答えしている。忙しい入荷日にいちいちバケツに水張って何百本もカットしてられませんですし。。。
切り口が乾燥してしまうとお水を吸う力がなくなってしまうので、水の中で切る『水切り』をしないのであれば、切ってすぐ花瓶の水に入れればOK!
私なんて、持って帰ってきた花をキッチン鋏でバスッ、花瓶にザンッ、で終わり。斜めカットにすらしない時も多い。水に浸かるような下に生えた葉っぱは取ったりするけど、上の方は邪魔じゃなければそのままだったり。
ただ、結構気をつけているのは『水の量』と次の日からの水換え含む『お世話』
ただ生けて飾って終わり〜で全然満足という方には、面倒なことはオススメしません。でも、次の日からしっかりお世話すると、根から切り離された命も、最後まで頑張って応えてくれるので、少しでも綺麗な状態を長く楽しみたい人は、是非お世話してあげて欲しい。
花の特性に合った水の量
バラはお水をよく吸う花なので、花瓶のお水は割とたっぷりでも大丈夫。私はバラだけなら花瓶の半分入れておけば安心。もしバラの丈が短かくて茎が底につかないのであれば、その分も考えてお水の量を多く入れてあげて下さい。
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一輪挿しなど、最初から入る水の量が少ない花器の場合は、
8分目くらい入れてもいいかも。
そんなに吸うかね〜??と思っていると、一晩でかなり減っている時があってびっくりする。沢山の花を入れていればそれぞれが吸うので、意外と減っていたり。花屋でも、昨日たっぷり6分目くらい入れたバケツの中身が2〜3分目まで減っていることがある。途中で枯らさない為にも、バラを飾るときは水はたっぷり用意してあげて下さい。
ワレモコウの場合、あまり沢山お水はいりません。
お水がなくなると枯れますが、植物によってはともとも乾燥気味が好きだったり、茎に毛が生えていたり、多肉植物のように自分の中が最初から水でかなり満たされた状態の子がいる。
そういう茎をたっぷりの水に浸してしまうと、あっという間に茎が腐って寿命を迎えてしまうことが多々……
ワレモコウはそこまで茎が水に強くないかなと思うので、ワレモコウだけ生けるなら、同じ花瓶でも4分の1以下でいいかな。もっと少なくてもいいかも。
もう旬は過ぎたけど、ヒマワリはお水少なめで飾って欲しい世界代表選手の一人なので、お花屋さんでもたまに「お水少なめで生けて下さい」と言われたことのある人はいるはず……本当にすぐ腐る。
あとは、ガーベラとか、スターチスとか……
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20センチの花瓶だったら5センチ以下で全然大丈夫。
ただし、お水は切らさないように。
じゃあ、今回の場合だと「お水が大好きなバラ」と「お水はあまり要らないワレモコウ」はどうやって水の量を決めれば良いか……
私の感覚で言うと、「お水は気持ち少なめでワレモコウに合わせつつ、絶対水を切らさないように気にかける」がどちらも長生きさせられるのでは……と思っている。
でもこれは私の「どちらも長生きさせたい」という気持ちでやっていることなので、これが正解ではない。
例えば、「バラがしっかり咲いてくれればいい、ワレモコウは添えてるだけ」という人なら、バラがしっかりお水を吸って最後まで花を咲かせられるようにお水多め、ワレモコウは茎が腐った時点でサヨナラ〜でもいい。
私は切り花を飾る楽しみとして、『自然界では絶対出会わないであろう、地球の真反対同士の花を一緒に飾ることができる』というのがあると思っているので、水が好きな花と水があまりいらない花を合わせて生けて、どちらも寿命をまっとうしてもらう為に創意工夫するのは全然苦ではない。
でも、それもちょっと面倒なんだよな〜と感じる人には、一輪で飾るか、同じ花だけを複数本まとめて飾るのをオススメします。そうすれば、水の量は常に適量を守るのが簡単だから!
お花の特性にあったお水の量については、こんな感じ。
買って帰った次の日からのお世話
特にお世話するつもりないわ〜という人はそのまま最後まで飾ってもらって大丈夫ですが、もしも時間と心に余裕があるようなら、
花瓶のお水を捨てる
花瓶の中を洗剤とスポンジやブラシで洗う
綺麗なお水を再び適量入れる
茎を切り戻して、茎の切り口を新しくする
この4つを花が終わるまで、できれば毎日やって下さい。
全部が無理なら、せめて
1.お水を捨てて軽く花瓶の中を濯いで新しい水を入れて、
4.茎の切り口を新しくする、
のふたつだけ。
それも面倒だったら、減ったお水だけ花瓶に足して……
水は雑菌が繁殖して濁ったりぬるぬるになったりすると、花の管が詰まって水を吸えなくなり、最終的に枯れる原因になるので、なるべく新しいお水に変える方が良い。
冬場に寒い場所に置いておくと雑菌も湧きにくいので、そう言う場合は2〜3日に一回でも大丈夫だったりする場合もある。
真冬に水換えをほとんどしなかったカーネーションが一ヶ月以上持ったりしたので、逆に水に繁殖した雑菌が原因で枯れるケースがかなり多いということ。
なので、せめて綺麗なお水に変えて、詰まってしまった部分を切り落とす為に切り口を新しくしてあげて下さい。それだけでも、お花は命ある限り応えてくれます。
ここまで書いた水揚げの仕方やお世話についての諸々は一般的に言われていること+私の感覚でしかないので、やはり絶対正解ではないのですが、よかったら参考にして、とりあえずバラでも飾ってみようかな……とお花屋さんを覗くきっかけになってくれたら嬉しいです。
店頭に並ぶバラの種類もこれから増えてくる時期、推しバラを見つけて下さい!
まとめ
バラを買ってきたら、花瓶の半分以上水を入れる。
茎の切り口を斜めにカットする
葉がついている場合は邪魔な部分を取る
切り口が乾く前に花瓶に生ける
次の日から花が終わるまで、できれば毎日水換えをして切り口を新しくする
ちなみに、切り花をあえて日光に当てる必要はないので、できれば日の当たらない、また風が強く当たらない場所に飾ると更に長持ちします。
でも、飾りたい場所がどうしてもあるなら、日持ちは諦めてそこに飾るべし。だって、その方が目に入ると嬉しくなるから!
おまけ 【季節の枝を飾る】+α
バラの他に、今が旬の『ガマズミ』と『雲龍柳』を買ったのでご紹介。
いわゆる『枝物』ってやつ。
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和名「ガマズミ」の語源は諸説あり、赤い実という意味の「かがずみ」が転訛したもの、果実を頬張ると噛まずに種を吐き出すため「かまず実」の説がある。また、昔は熟した赤い果実を染料に使ったので「染め」がゾメからズミへ転訛したと説く人もいる。別名はアラゲガマズミ、ヨスズ、ヨソゾメ、ヨツズミ、ヨウゾメ、カリンカともよばれる。中国名は「莢迷」「莢蒾」(きょうめい)。
赤い実が沢山ついたガマズミ。花屋によっては『ビバーナム・〜〜』と書かれている可能性も。
私はどちらかというと、ビバーナム・ティヌス(トキワガマズミ)というメタリックネイビーな実がこの植物の第一印象だったけれど、真っ赤な方が秋らしくて可愛い。
ちなみに、ガマズミ属の実は食用や薬用に使われているらしい。
でも、お客様にも時々「これって食べれる?」と色々な植物を指して聞かれる度に食い気味で答えているのですが、
花屋で売っている、例え一般的に食べられる植物は絶対に食べない方がいい!!だってどんな農薬使ってるかわからないから!!
割と聞かれる頻度が高い。ブラックベリーやブルーベリーの実つき枝とか、バジルやローズマリーなどのバーブとか……
でも、絶対にやめた方がいい。食用と観賞用の植物の農薬の濃度の基準が一緒なのか違うのか知りませんが、とにかく観賞用として売っている生花なので、食べないで頂きたいです……責任負えません……
本当に、冗談でもなく結構な確率で「食べれる?」は聞かれる。オススメしません。お風呂に入れるのもやめた方がいいです。
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枝物の水揚げは、細ければまっすぐか斜め切り、太めだったら一文字か十字に『割り』を入れます。お水を吸ってもらう為に。
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お水の量は花瓶の半分くらい。枝が重くて心配なら、倒れないようにする為に多めに入れて安定させても。
柔らかい緑色の草花の茎よりも、木化している枝物の方が若干お水は汚れにくい。例外はあり、桜はお水が汚れやすい。あと、表皮が薄くてすぐポロポロ剥がれるような枝とか。
お水が汚れにくいということは、お水を変える頻度は草花よりも若干サボっても平気。毎日変えてあげられるに越したことはないけれど、ガマズミの場合は衝撃で実が落ちることがあるので、あまり動かしたくないのもあり、私はサボるの前提で飾っている。
お水は時々変えるとして、枝物を買ったら毎日やって欲しいのは【霧吹き】で葉水を与えること。
実がついている枝物、ドウダンツヅジなど葉自体がとても薄く水を蓄えていられない植物は特に、葉水を1日2回以上やった方が長持ちする。
実が落ちたりしない枝物なら、お風呂とかキッチンのシャワーで全体にジャーーーーーっとしてあげても良い。とにかく、グリーンとして飾るものは葉がパリパリになると全てがあっという間に終わる。
以前、Instagramでドウダンツツジが半年持ったと言う方のお世話の方法を見たら、晴れた日は霧吹きして、雨の日は毎回ベランダ?庭?に大きな枝を持っていって雨水でビシャビシャにしていたそう…すごい。葉水の大切さがわかる……
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実ものは普通のグリーンとしての枝物より、実が落ちて片付けが面倒くさいところもあるけれど、これから出てくる紫式部、ウメモドキなどは色も鮮やかで秋冬を感じるのにぴったりなのでオススメ。
続いて、雲龍柳。枝がくるくる捩れる特性を持った、成長の早い柳。おしゃれな服屋で、これだけをゴッソリ背の高い円柱型のガラスの花器に飾ってディスプレイされているイメージ(偏見)
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クリスマス前まで頑張ってお世話して、その後にリースを作るのにもオススメ。
しなやかで曲げやすく、乾燥するとそのまま固まります。
柳系の枝物は長持ちするし、なんならすぐ根っこが出てくる。
地道に霧吹きしていると、多分新芽が出てくるはず。
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枝物は基本的に草花よりも長持ちするし、水換えも枝の種類と季節によっては3日ごととかで大丈夫なので、飾る場所さえあればお花よりもオススメかも。大きい枝は小さく切ることもできるし!
最後に、私の推しバラを2種類紹介しておきます。
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生産者や産地によってピンクが強かったりベージュが強かったりする気がする…
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ミスティレインよりもクリスタルドレスの方が花屋で出会う確率は高いかも?うちの店だけかな……
ミスティレインの香りが好みで絶対かいでしまう。でも、クリスタルドレスもバラのいい香りがします!
バラは品種自体も咲き方もものすごくバリエーションがあって、そんなにバラに興味がない人も、これは好きかも〜が見つかったら花屋で働いている身として、とても嬉しいです。
さて、お花(バラ)を飾るに当たって、基本的な処理とお世話についてnoteにまとめてみました。
人によって細かいところは違ったりすると思うけれど、自分の家ではこれくらい適当でもお花は頑張ってくれます。
何がなんでも一週間持たせなければ…などと気負わず、まずは「お花が可愛い」「お花を飾りたい」という気持ちを一歩実現に近づけるお手伝いになればいいなと思います。
全部がていねいじゃなくていい
休日魔女的生活