はだかにされるおうさま
昔から伝わる童話「はだかのおうさま」を知らない人はほぼいないだろう。ある王国の王様は、豪華な服を着るのが好きで仕立て屋をたくさん雇い常に新しい服を着て贅沢な日々を送っていた。王様の権力は、絶大なため側近たちは常に王様のご機嫌を損なわないよう神経を尖らせ、常に言いなりとなっていた。そんな或る日、王様のところに「バカ」と「王様に歯向かおうとしている者」には決して見えない不思議な布地を使って服を仕立てると詐欺師がやってきた。それを聞いた王様は大喜びですぐさま側近たちに注文するよう命を出した。実際に布地など持ってきていないのだから見えなくて当たり前なのだが、命を受けた側近たちは、「バカ」と「王様に歯向かおうとしている者」にはされたくないのと王様の命に逆らうことができないため詐欺師に大金をはたいて服を注文した。やがて注文した服が出来上がり受け取った王様は驚いた。それは出来上がった服が見えないからである。しかしこの場で服が見えないとなれば自分自身が「バカ」となってしまうため服が見えているフリをして着替える。それを手伝う側近たちも見えているフリをしている。そしてそのままパレードに出る事にした。もちろん実際は、裸のままである。ところが裸のままでパレードを行っている王様をみた聴衆たちも全員が服が見えたフリをして声援をあげる。そこえ有頂天になった王様をみて、ひとりの子供が言った。「王様は、はだかだよ」と。それを聞いた聴衆たちは我に返る。その時、はじめて王様も本当のことを知るのだが一旦はじまったパレードを中止するわけにもいかず裸のまま続けてしまうのだ。
幼い頃は、このような大人になってはいけないと童話で学んできたはずなのだが大人になるとすっかり忘れてしまったのだろうか。現代の企業には童話のシナリオと同じようなことが実際に存在する。約200年前に発表された童話の中の出来事に似たことが未だに残っているのだ。このようなことを放っておけば企業は、間違いなく業績不振に陥るか、すでに陥っているかもしれない。
では、この状況を打破するにはどうしたらよいのかを考えてみた。童話の中から分析すると以下のことが挙げられる。
自分の頭で考えず他人の言葉を鵜呑みにしていると騙されやすい。
自分の虚栄心を守るために取りつくろうとすると嘘で固まってしまう。
意見や助言をする側近の存在は貴重だがそれを嫌いおべんちゃらばかりでご機嫌をとる側近ばかりを大事にしていると自分を見失うどころか皆がそれに習ってしまう。
そもそも、一番上に立つ人間がしっかりしていればこのような事にはならないはずだが上に立つ人間を正しい方向へ導いていくのは側近の役割である。いくら権力に絶大とはいえそれをうまく交わした方策を企てなければならない。童話の中の側近たちは、いち早く詐欺を見抜き王様をうまく説得しなければならなかっただろう。わがままな王様が納得しなければ納得できるようにしなければならない。例えば詐欺を見抜いた側近は、詐欺師に本当に服を仕立てさせ、誰にでも見ることができる眼鏡を用意させる。そうすれば、はだかでパレードをすることはなかったはずだ。
上に立つ人間は、周りの意見に耳を傾け最善の行動を心掛けなければならないが大方は、わがままで命には絶対服従を貫くものだ。残念ながらこのような性格を変えることはできない。つまり最善の行動に導いていくのは側近の腕次第となる。歴史を動かした戦国武将の側近には有能な軍師がいたことは皆さんもご存じだろう。
「はだかのおうさま」現象が起きている企業では、トップ自らがそのことに気づくことはほぼない。気が付くようならこのようなことには決してならないはずだ。修復するためには側近である役員、幹部職をもつ人間が有能でなければならない。童話のようなことをやっているようなら社員全体も同じようなことになってしまう。そしてその企業のトップは、いつの間にか「はだかにされるおうさま」となるのだ。童話の中では「王様」が悪いようにかかれているが周りの側近にも非は大いにある。それは現代の企業でも同じことである。視点を変えるとまさに「はだかにされるおうさま」なのだ。あくまでも個人的見解であるが。
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