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老人ホームをINNOVATION。そしてCREATIVEで、HAPPYEND HOMEに。もがく施設長日記その3。〜老人ホームは、今でも「姥捨山」なのか?

入居者も職員もHAPPYと思える場所づくり。

1)入居者ファースト、実は職員もファースト
 〜スローワーク、スローケア、スローライフを実践する。

②3つのHAPPY
 
 入居者さんも職員も法人も地域も、みんなHAPPYになれるようにするにはどうすればいいかな、と毎日毎日欲張って考えています。お金もかけず、一方的なやらされ感がなく、役割と居場所があり、適度に責任が生まれるようなケアサービス、職場環境、やりがい創出、地域支援。みんながいつも笑顔でいられる場所にするために、入居者さんたちに対して、職員に対して、地域に対して、どんな仕掛けをしようか…と。
 まず思いついたのは、介護職員が業務都合や職員都合で一方的なサービスをするのではなく入居者ファーストでサービスを提供するためには、職員がもっと入居者さんたちの気持ちを知ることが大切だということでした。つまり入居者さんたちとのコミュニケーションを増やすことを考えました。

 その前に。

 私の施設では、私の着任後に、介護職員の常勤が、複数名の非常勤とペアを組んで、常勤ひとりあたり3人から4人の入居者さんのケアプラン基礎資料作成や生活用品の管理などをする「担当制」を設けていますが、今よりも、当初は思うように機能していませんでした。そもそも職員にケアプランの理解が浸透しておらず、ケアプランの意味や目的がわからない状態でした。
 もうひとつ、施設にはご家族様とのコミュニケーション、そして信頼を結び広げるツールとしての投書箱もありましたが、こちらも埃を被ったまま、忘れられた存在に成り下がっていました。

 そこで思いついたのが、3つのHAPPYのひとつめ、「ハッピーボックス」です。
 「投書箱」を「ハッピーボックス」に呼び方を変えただけのただの箱ですが、担当の職員が受け持ちの入居者さんたちといろいろ話をしてもらい、やりたいこと、食べたいもの、行きたいところなどを聞き出し、それをまずは職員が代筆して投函してもらい、会議で、実現の道を開いていくための話し合いを行って、入居者さんたちの夢や思いを叶える、make a wishの箱に衣替えをしました。同時にその箱は、職員のいまさら言うに言えない疑問や希望、改善要求などを自由に投書することができ、私の「検閲」(施設長に先にみられることになにかしら抵抗がある職員は多い上に、なぜかしら手書きの文字から誰が書いたのがバレるのがイヤというのでパソコン入力しても良しとして、さらに事前集約するのは人畜無害の介護補助職員に依頼して、データ化してもらっています。)なしに誰の目にも触れることなく直接会議に届けられる期待の郵便ポストにも変身したのです。

 そして会議の席で報告された入居者さんたちの希望は、担当の職員が実現にむけて、ケアプラン(施設サービス計画)とは別に企画立案されます。これを「ハッピープラン」(2つめのHAPPY)と呼んでいます。これまでにも喫茶店でケーキを食べたり、お寿司屋に出かけたり、鰻を注文したり、デパートに買い物に出かけたりするプランが練られて実行されてきました。
 今は苛つくほどコロナで完全に道を阻まれていますが、コロナ騒動が収まれば、すぐにでも動き出す準備は出来ています。
 それにしても、ここまでしないと喫茶店にも行けないのか、と思った方もいるかと思います。そうなんです。施設というところは何かと制約があり、入居者さんだけではなく、職員たちも手足を縛られていることもあります。施設の常識は世間の非常識と言われます。この施設で当たり前に、まかり通る非常識を少しでも壊したい。施設に入ったら、どこにも行けないなんておかしい。でも、どこにも行けないと想っている入居者さんたちは多いんです。だからハッピープランなんです。職員と入居者さんたちとのコミュニケーションを増やした先に、いずれ企画書なしのまま、気楽に「○○さんと喫茶店行ってきま〜す!」なんてことが当たり前になる日が来るかもしれません。
 
 一方、職員から出された改善提案などの意見は、月1回の職場会議(全職員参加の最終意思決定機関)で、お披露目され、意見が交わされたあと、私の、ゼッタイNOとは言わないポリシーに基づき、実施、実現の方向でカタチにしていきます。このカタチをつくるチームを「ハッピープロジェクト」として立ち上げ、これまで、シフトやレク、ユニフォームなど、6つのプロジェクトが稼働しています。これが3つ目のHAPPYです。
 これはトップダウンで物事や現場のルールが決まるものだという考え方を崩していくチャレンジです。
 職員が入居者さんたちにとっていいと思う提案は、必ず評価して、カタチにしていくプロセスにもちゃんと現場の職員が加わることで、働くことの楽しさや責任感を体験し、離職率を下げ、入居者さんたちの生活の質を向上させ、職員のケアの質と満足度を高める取り組みでもあります。

 これら「3つのHAPPY」を寄り添うケアの柱にして、3つのスロースタイルを貫こうともがく施設長の長い話はまだまだ続きます。

 
  

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ぶなまうどんえ(ぶ氏)
・流離う福祉びと ・老人ホームを改革したいともがいているオジサン ・一人時間を愛する閑人

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