見出し画像

【高校物理】二次・私大対策 2023

共通テストが終わったあと,二次・私大対策を Twitter 上で行っています。 入試直前のこの時期に,
・各分野で確認してほしい内容を含んだ問題
・取り組みづらい問題
・分野横断型の問題

を中心に問題を選びました。
今年度は高校物理全分野の問題解説を予定しています。
初めての試みですが,
Twitterでつぶやいたものから,この note に追加していきます。

各問題の後には,
問題と解答・解説を含むPDFファイルを添付しておきました。
活用してください。

マナブ

【二次・私大対策 2023】その1
力学1「二体問題」
慶應義塾大学理工学部(2019年) 過去問解説

「二体問題」は毎年問われるテーマです。
相対的な運動を考える問題や,
二物体の重心の運動に注目する問題,
変な形をした物体が登場する問題など,
趣向を凝らした設定が毎年見られます。
「束縛条件」を必要とするものも増えてきました。

この問題は設定自体はシンプルなのですが,
最後まで解ききることができるでしょうか。

解答・解説の<注>で,
「力学的エネルギー保存則」の導出をしておきました。
これも束縛条件が絡んできます。
(板から見た質点の相対速度の向きが棒に垂直であることを使っても,導出できます)

ツイート内でも紹介していますが,
束縛条件を深く学びたい人は,「特講 束縛条件」を是非


【二次・私大対策 2023】その2
力学2「単振動・ばね3つ」
名古屋市立大学医学部(2019年) 過去問解説

ばねが3つある問題を時折見かけます。
このタイプの問題の難しさは,
真ん中のばねが伸びているのか縮んでいるのかが
一見分からないことです。

今回の問題は,
小球の変位によって,それぞれのばねの伸びや縮みを決めていきます
このような問題にも慣れていきましょう。

ツイート内でも紹介していますが,
単振動のさまざまな問題を解きたい人は,
「『単振動』実戦編」を是非


【二次・私大対策 2023】その3
力学3「万有引力と遠心力のした仕事」
大阪市立大学(2019年)<改題> 過去問解説 &
代々木ゼミナール第2回全国記述模試(2003年)

それぞれ小問を1問抜いています(ということで,改題としました)。
手順を1つ示していないので,その分,難しくなりました。

大阪市大の問題は標準的な問題ですが,
近似式適用やグラフ作成など,重要な内容となっています。
代ゼミの問題は,大阪市大の問題の類題です。
大阪市大の問題を解いた後,すぐに解けば最後まで解ききることができる
と思いますが,
少し時間をあけて解くと,考慮し忘れるものがきっと出てきます

ツイート内でも紹介していますが,
単振動のさまざまな問題を解きたい人は,
「『万有引力』実戦編」を是非


【二次・私大対策 2023】その4
力学4「 𝟐 物体の相対運動」
京都大学(2007年) 過去問解説

赤本(教学社)や青本(駿台)や電話帳(旺文社)の解説をみましたが,
問題文に座標軸の正の向きが設定されているにも関わらず,
自分で勝手に座標軸の正の向きを決めたり,
大きさだけで議論をしたりしているものが多く,
「一貫性がないなぁ」という感想を持ちました。

加速度の数値を求めさせる最後の問題は,
現象を考えれば求める加速度は,相対加速度の半分なのですが,
それは2台の車の質量が等しいという条件だったからです。
より一般的に解くのであれば,
(解答・解説に示したように)運動方程式から求めたいところ。

ツイート内でも紹介していますが,
換算質量を深く学びたい人は,「特講 換算質量」を是非


【二次・私大対策 2023】その5
力学5「砂時計の重さ」
武蔵工業大学(1997年) 過去問解説

秤(体重計)は質量を測る装置ではありません
秤が測っているものは,
「秤の上にのった物体から受ける垂直抗力」です。
その値を重力加速度の大きさ 𝒈 で割った値を表示しているのです。

砂時計全体の質量は不変でも,
内部で砂粒子が落下することによって,
秤にかかる垂直抗力の大きさが変化するため,
それに伴って秤の読みも変化します。

これで,二次・私大対策 2023 の力学問題は終わりますが,
もう少し力学範囲の問題を網羅的に解きたい人は,
昨年のこの時期につぶやいた「特講 連結2物体問題」をどうぞ。
下の note にまとめてあります。


【二次・私大対策 2023】その6
熱力学1「熱気球」
大阪市立大学後期日程(1993年)<改題>
過去問解説

熱力学の問題は通常は,
・(理想)気体の状態方程式
・熱力学第 𝟏 法則
の2本の式を立てることで解くことができます。
(ピストンの力のつり合いの式は「力学」的なアプローチです)

ボイル・シャルルの法則を使って解いている問題集がありますが,
これは「気体の状態方程式」で解決します。


【二次・私大対策 2023】その7
熱力学2「1個の粒子の運動でのモデル化」
    (気体の分子運動論)
京都大学(1995年) 過去問解説

モデルとは,「物事の仕組みを単純化して表したもの」です。
ある現象をモデル化して,
各物理量の関係性(相関関係)をシミュレートしていきます。
そして,それが現実と合わないときには,
そのモデルの一部を変更していきます。

この京大の問題は,
気体の分子運動論を1個の粒子の運動でモデル化しています。
かなり大胆なモデルです。


【二次・私大対策 2023】その8
熱力学3「ひも状物体の熱力学」
京都大学(2007年) 過去問解説

熱力学問題は気体を扱うことが多いのですが,
たまに,固体と液体や気体と固体が共存する系を扱うことがあります。
しかしこの問題は,固体(ひも状物体)しか登場しません
この固体を伸ばしたり縮めたりするときの仕事や熱の出入り
について考察していきます。
その際,使うのはやはり「熱力学第1法則」です。


これで,二次・私大対策 2023 の熱力学問題は終わりますが,
もう少し熱力学範囲の問題を網羅的に解きたい人は,
昨年のこの時期につぶやいた「熱力学総復習」をどうぞ。
下の note にまとめてあります。


【二次・私大対策 2023】その9
電磁気1「接地した金属球と点電荷」
大阪工業大学(2018年) 過去問解説

電気影像法(鏡像法)とは…
「導体などが特殊な形状をしている場合に,
本来存在する電荷とは別の仮想的な電荷を設定して,
電場や働く力などを求める方法」
です(高校物理範囲外)。

この問題は,
「接地した金属球に点電荷を近づけたときの点電荷が受ける力」
を電気影像法の手法を用いて求めるのですが,
高校生にも理解できるようにていねいな誘導を入れています。


【二次・私大対策 2023】その10
電磁気2「3枚極板コンデンサ」
名古屋大学(2021年) 過去問解説

極板の数が増えるとそれだけでおじけづいてしまう人がいます。
極板の数が増えても,君たちがやるべきことは,
① 極板に蓄えられる電荷を仮定する
(その際,向かい合った極板には逆符号の電荷を設定する)
➁ 電荷保存則を立てる
③ キルヒホッフ第2法則を立てる
です。

今回の問題は,
電位差が与えられている(電位差を求める)ので,
電荷保存則を立てる際,𝑸=𝑪𝑽 を用いると楽になります。


【二次・私大対策 2023】その11
電磁気3「コンデンサとネオンランプ」
東京大学(2008年) 過去問解説

東京大学は2006年に「ネオンランプを含む回路」を出題し,
その2年後の2008年にも「ネオンランプを含む回路」を出題しました。
2006年はコイルと,2008年はコンデンサとからめています。

あまりなじみのない回路素子が出題されることがあります。
しかし焦る必要はありません。
その場合は必ずその素子の特性を示すグラフか式が与えられます
(文章のみの説明の場合もありますが…)

結局,電気回路について立てるべき式は,
電荷保存則とキルヒホッフ第2法則だけ
であることがこの問題でも確認できます。


【二次・私大対策 2023】その12
電磁気4「磁束変化による電磁誘導」
京都大学(2007年) 過去問解説

磁束が変化するタイプの問題は,誘導起電力は,
𝒗𝑩𝒍 公式でお手軽に求めるのではなく,
ファラデーの電磁誘導の法則を使うしか求めることができません。
単位時間当たりの磁束の変化量として
誘導起電力が計算できるので,単位に注目すると,
[𝐓・𝐦²/𝐬]=[𝐕]すなわち,
磁束の単位は ([𝐖𝐛]=)[𝐓・𝐦²]=[𝐕・𝐬] と変換できます。


【二次・私大対策 2023】その13
電磁気5「交流回路」
千葉大学(2012年) 過去問解説

物理という教科は暗記とは一番遠い所に存在する
はずなのですが,
「交流回路」になると,急に「2分の π 進む」とか「遅れる」
などということを覚えろというモードに変わるのです。
一般的な参考書や問題集を眺めていると,
そういう場面によく出くわします。
いやいや,それは計算したら分かることでしょ?
「覚え方」を覚えるより,
三角関数の合成をした方が速い
と私は思っています。


【二次・私大対策 2023】その14
波動1「縦波が伝わる仕組み」
京都府立医科大学(2001年) 過去問解説

「モデル化」とは… 
ある物体や事象について着目している特徴や,
同種の複数の対象に共通する性質を抽出し,
些末な細部を簡略化した抽象的な模型(モデル)を作成すること。

モデル化は物理ではよく行われます。
まずは大まかに見て,あとで細かな条件を追加していくのです。
この問題は,
固体中を縦波が伝わっていくメカニズムをモデル化しています。
このモデルでは,一次元の運動を考えていますが,
実際には,二次元(平面的),三次元(立体的)に連結された粒子の振動
に拡張する必要があるのです。


【二次・私大対策 2023】その15
波動2「ドップラー効果・気柱の共鳴」
早稲田大学理工学部(2019年) 過去問解説

音波について総復習をしましょう。
この問題は,
前半は「ドップラー効果」,後半は「気柱の共鳴」
となっています。
最後の問題はいろいろな考え方があります。
実際の制限時間は20分ですが,30分かけてもいいと思います。


【二次・私大対策 2023】その16
波動3「凸メニスカスレンズの焦点距離」
大阪大学後期日程(2007年) 過去問解説

光波について復習をしましょう。
「屈折の法則」および「近軸近似」を使って,
球面での写像公式を導いていきます。
最後に,得られた公式を用いて,
「凸メニスカスレンズ」の焦点距離を求めます。

「凸メニスカスレンズ」とはどんなレンズなのでしょうか。
(2つ目のツイートの最後の添付ファイル参照)
そういえば,
化学実験で用いるメスシリンダなどの
容器(細管)の中に液体を入れたとき,
界面張力によって液体の表面がつくる凸状または凹状の曲面
をメニスカスといいますね。


【二次・私大対策 2023】その17
原子物理1「中性子の質量測定」
大阪大学後期日程(2005年) 過去問解説

二次・私大対策の最後の分野「原子物理」です。
この問題は,中性子の「物質波」としての性質を利用して,
中性子の質量を求める
という興味深い実験です。
その際,力学的な考え方,そして近似式も必要となります。
(ルートを外すという計算もしなければなりません…)

ツイート内でも述べましたが,
原子物理は短期間でも完成させることができる分野です。
ツイートおよびPDF の下に,
「マナ物理 note  原子物理」のリンクを貼っておきます。


【二次・私大対策 2023】その18
原子物理2「原子核の結合エネルギー」
学習院大学(2003年) 過去問解説

最後は「原子核反応」。
原子核反応は,
[J] ⇒ [MeV] の単位変換や質量欠損の計算など,
数値計算をしなければならないことがあります。
解いたことがあるかないかで差のつく分野でもあります。
一度,自分の手で計算をしてみてください。


以上です。
国公立後期日程の最後まで駆け抜けよう!

マナブ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?