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【高校物理】力学分野「特講 束縛条件」   <大幅増補改訂版>

「束縛条件」(拘束条件)とは,
実験設定の都合で生じる動き方への制限条件
です。

レベルの高い大学で頻出の「束縛条件」
(注:最近はどのレベルの大学で出題されても不思議ではなくなった)
しかし参考書ではあまり本格的に扱われない「束縛条件」
参考書にないのなら自らつくるしかない!
と考えて2012年につくったのがこの「特講 束縛条件」です。

「マニュアル」っていい響きではないけれど,
「マニュアル」ってめちゃくちゃ重要です。
「マニュアル」が正しく読めるようになることが,
理系の人間にとって,最も重要なことです。
この特講は「束縛条件」問題に対する「マニュアル」です。
まずは「マニュアル」を理解して,使いこなせるようになろう。

昨年度(2020年),Twitter に投稿した「特講 束縛条件」を再編集して,
さらに演習問題を追加し,より実戦的なものに仕上げました。
また,読者から要望の大きかった
問題&解答・解説のPDFファイルを各項目の後に添付しておきました。
必要があればダウンロードしてください。


【特講 束縛条件1】
(講義1)その1 特定方向に動かない
     その2 斜面上に落下 <例題1>

「束縛条件(拘束条件)」がなぜ入試でよく問われるのか
を最近考えています。
「この実験はどんな制約(束縛)の中で行われているのか」
を知ることは,実験をする上での『大前提』なんやね。
その『大前提』を見抜く力を知りたいと出題者は思っているのです。

「講義」と「例題」はセットです。
講義内容を確認する場が「例題」だと考えてください。


【特講 束縛条件2】
(講義2)その3 向心加速度など(円運動)
     その4 滑車にかけた糸 <例題2>

「その3」の考え方
「軌道の式を時間微分する」や「半径と速度は直交する」
ことを利用するのは,もう少し先です(実戦問題参照)。
ここでは,「軌道の式」を時間微分すると,
さまざまな物理量の関係が導かれることを体験してください


「その4」は,今回は「定滑車」ですが,
「動滑車」の場合でも,考え方(糸の長さは変わらない)は同じです。
これも後ほど,実戦問題で演習をしましょう。
(注:1つ目のツイートの添付ファイル1枚目は講義1と同じです)


【特講 束縛条件3】
(講義3)その5①
 傾角𝜽 の動く斜面に沿って動く
 <例題3>筑波大学 過去問解説

「2体問題」のもっとも出題されるパターンです。
毎年,どこかの大学で出題されています。
(講義3)と(講義4)の2回にわたって
このパターンの問題の解き方を解説していきます。

動く三角台から見て,「慣性力」で解くこともありますが,
難関大の傾向として,
静止系から見て,「束縛条件」を求めさせる出題が多いです。


【特講 束縛条件4】
(講義4)その5②
 傾角𝜽 の動く斜面に沿って動く
 <例題4> 大阪大学後期日程(1990年)
 過去問解説

大阪大学後期日程(1990年)の問題を改変して,
束縛条件に関するさまざまな要素を盛り込みました。(盛り込みすぎ?)
最後に,<例題3>(3)の束縛条件を
「実際に起こる運動の図」で導出しなおしておきました。

確認してください。


【特講 束縛条件5】
(講義5)その6 トータルの変位の差
 <例題5>

今回扱っている「トータルの変位の差」の束縛条件の式は,
これこそ当たり前の式です。
なんの説明もなくこの式を立てている問題集もあります。
しかし,その ”当たり前” のことができない人が多いので,
私はこれにも「束縛条件」という名前をつけています。

名前をつけると相手がはっきりするので,
対処がしやすくなります。
( 結局,「図を描く」ということなんやけど,ね(笑) )


【特講 束縛条件6】
(講義6)なぜ力学的エネルギー保存則が
     成り立つのか?①<例題5>
     追加問題

(重要!)𝒗 - 𝒕 グラフを利用した解法
「例題5」(講義5)の(2)を解き方を
「𝒗 - 𝒕 グラフを利用と指定して時間追跡をさせます
𝒗 - 𝒕 グラフを描いて運動を解析する方法は,
是非マスターしてほしいと思います。

さらに,「例題5」に(3)を追加しました。
2体問題でよく問われる問題ですが,
なぜ力学的エネルギーが保存するのか,を真面目に考えてみましょう。

ツイート内でも紹介している動画です。是非!


【特講 束縛条件7】
(講義7)なぜ力学的エネルギー保存則が
     成り立つのか?②<例題6>

例題6は東京工業大学の過去問。
このタイプの問題はよく入試問題で見かけます。
未知量は2つなので,立てるべき式は2本。
しかしそこでちょっと考えてみてください。
本当にその式は成り立つのでしょうか。

運動量保存則が成り立つのは,
水平方向にはそれぞれに働く張力の水平成分以外に
力積を与える力がないからです。その大きさは等しく,向きが逆やね。
では,力学的エネルギー保存則を導出することはできますか?
まずは下の動画で導出をしておきましょう。


【特講 束縛条件8】
(実戦問題1)横浜市立大学医学部(1991年)

実際の入試問題を通して,講義内容の確認をしていきます。
「束縛条件」を扱った問題は多いのですが,
その中でも興味深いものを選びました。楽しんでください。
そして,もしつまづいたら「講義」に戻ってください
どの講義に戻ればいいかは,それぞれのツイート内で示しています。


【特講 束縛条件9】
(実戦問題2)東京工業大学(2016年)

いきなり「束縛条件」を問う問題。
しかもそのあとの展開に対応できた受験生は少なかったと思います。
壁の左上の点から見たおもりの運動は?
「糸の長さが変わらない」という束縛条件から何が結論づけられますか?


【特講 束縛条件10】
(実戦問題3)慶應義塾大学理工学部(2021年)

「束縛条件」だらけの問題。
この特講を受講している人にとっては,
どう攻めるか,考えがいのある問題だと思います。
まずはツイートを読まず,下のPDFファイルを開いて問題を解こう!
もし途中で手が止まったら,ツイートにヒントを書いておいたので,
参考にしてください。


【特講 束縛条件11】
(実戦問題4)第2回全統記述模試(1988年)

河合塾の全統記述模試から「束縛条件」の問題です。
1988年の頃の全統模試を見返してみると,
点数で優劣をつけるだけではない,
復習するに値する問題が多く出題されていました。
この問題もその一つです。
最後の問7が束縛条件の問題なのですが,
問7にいたるまでの問題も
力のベクトルを1本1本ていねいに描くことで解けるように
工夫がなされています。
「視点の移動」がポイントです。

私が好きな言葉をここで紹介します。
物理講師 坂間勇 は著書「現代の物理学 力学編」で,
各物体に働く力を図示したあと,
「ここまでが勝負です。この図を間違いなく描けるようになるためには,
だれでも3ヶ月の訓練を要する」

と述べています。


【特講 束縛条件12】
(実戦問題5)第3回全統記述模試(1988年)

実戦問題4に続き,河合塾全統記述模試の過去問です。
力学の手法のすべてが盛り込まれた良問です。
教員になった当初,こんな問題をつくりたいと思ったものです。

問3を見ると,「微小振動」と書いてあります。
「微小」なので,鉛直線とのなす角が小さいということ。
公式は使ってもいいけれど,導出する過程が重要。
どういう条件ならばその公式が成立するのか
常にそれを考えながら公式を使ってください。

「円筒面に束縛された運動」は,
次の実戦問題6&7(東工大)につながります


【特講 束縛条件13】
(実戦問題6)東京工業大学(2020年) 問題[A]

2020年の東工大の力学問題(問題[A])です。
東工大は「束縛条件」が好きなんだなぁ,
ということがよく分かる問題です。
この問題,多くの別解が考えられるんですよね。
「別解が多い問題は良問」
私のつくった格言ですけれど(笑)


【特講 束縛条件14】
(実戦問題7)東京工業大学(2020年) 問題[B]

「実戦問題6」に引き続き,
2020年の東京工業大学の力学問題[B]です。
[B]だけで独立に解くことができます。
2体問題で「なぜ力学的エネルギーが保存するのか?」に関しては,
【特講 束縛条件6】「講義6」で解説しています。
「講義6」に関しては,解説動画もあるので,是非!


【特講 束縛条件15】
(実戦問題8)東北大学(2005年)

さまざまな視点からひとつの現象(運動)を眺めるような問題が好きです。
その問い方(誘導)がうまいと,なんだかうれしくなります。
この東北大学の問題はその一つです。


【特講 束縛条件16】
(実戦問題9)日本医科大学後期(2018年)

必ず絵(図)を描きながら考えてください。
解説動画を2本つくっています。
そこでは「実際に起こる現象の図」で解説しています。
動画では「束縛条件の基本」から解説しているので,
是非観てください!


【特講 束縛条件17】
(実戦問題10)東京電機大学・北海学園大学

一般の問題集に載っている「束縛条件」といえば「動滑車」,
「動滑車」といえば「束縛条件」ですね(笑)
ただし「束縛条件」という用語を使っているものは少ないです。

大問2(北海学園大学)の解説動画もどうぞ。


【特講 束縛条件18】
(実戦問題11)東進センタープレ(1997年)

四半世紀前の東進センタープレの問題。
東進がここまで大きくなかった時代。
受験者数が少なく,
当時の受験生の学力を正確に見極められなかったと思われます。
いきなり1問目から束縛条件(笑)
平均点はおそろしく低かった…。


【特講 束縛条件19】
(実戦問題12)金沢大学(1991年)

講義3(【特講 束縛条件3】)と講義4(【特講 束縛条件4】)の
復習問題です。
直接,束縛条件を問うてはいません。注意が必要です。
「マナブ追加問題」を最後に入れておきました。
「はかり」に関する実験問題です。個人的に好きな設定です。


【特講 束縛条件20】
(実戦問題13)和歌山県立医科大学

ツイートの中でも述べていますが,
「トータルの変位」を考える問題(講義5<例題5>参照)は
入試問題では大問の最後にあることが多い。
しかも,その問題だけ独立に解けることがほとんどです。
途中,分からなくても(4)から解けてしまうのです。
教訓: 最後まであきらめたらアカン!


【特講 束縛条件21】
(実戦問題14)静岡大学(2017年)・
       代ゼミ東大プレ(2004年)

実戦問題13でも扱った「トータルの変位」の束縛条件の問題です。
静岡大学および代ゼミ東大プレで出題のされ方を確認しましょう。
これであなたも「『トータルの変位』マスター」です(笑)


【特講 束縛条件22】
(チャレンジ問題1)早稲田大学(2013年)

赤本と青本,そして旺文社の全国大学入試問題正解で
“難問” とされた問題です。
しかし,私は難問だとは思っていません
「変位のベクトル図」を最大限に利用する解法を是非習得してください。

解説動画をどうぞ!

この講義の中で,
「垂直抗力は,振動中心をずらすことはない」と言っています。すると,「慣性力はどうですか?」という質問を生徒から受けることがあります。
『つり合いの状態』のとき,三角台にかかる力はつり合っているので,
三角台の加速度は0です。
よって,その瞬間,慣性力は0なので,やはり振動中心はずらしません。


【特講 束縛条件23】
(チャレンジ問題2)東京工業大学(1986年)

この東京工業大学の問題を解く前に,
講義2の「その3」(【特講 束縛条件2】)をもう一度見読んでください。
今回の束縛条件は「軌道の式」です。
軌道の式を時間微分することで,
さまざまな物理量の性質が見えてきます。
数学と物理が融合する瞬間を楽しんでください!

解説動画をどうぞ! 2本あります。
束縛条件の基本も説明しています。
別解の多い問題です。最後まで観てください。


【特講 束縛条件24】
(卒業テスト1)
   横浜市立大学(2007年) 改題①

この特講で学んだことが身についているかどうかを確認する問題です。
1問1問が重要な問題。
A点,B点,C点を通過するときの速度の特徴をとらえよう!


【特講 束縛条件25】
(卒業テスト2)
   横浜市立大学(2007年) 改題②

「はじめ」と「あと」の状態に注目して立てられる式は, 
・ (力学的)エネルギー保存則(仕事とエネルギーの関係)
・ 運動量保存則(力積と運動量の関係)
束縛条件(拘束条件)
常にこれらのことを考えながら問題を解いていきます。


【特講 束縛条件26】
(卒業テスト3)
   東京工業大学(1998年)

いよいよ最後の問題です。
一見,大変な作業を要求しているように見えて,
実はシンプルな関係式が導かれるという問題。
東工大の出題者はいい問題をつくるなぁと思わされました。
どのタイミングで「視点の移動」をするかが問われます。

「速さ」や「相対速度の大きさ」と与えられると
分からなくなる人がいます。
特に負方向に進むときには符号に注意が必要です。


以上です。お疲れさまでした!
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