【高校物理】力学分野「単振動」実戦編
【実戦問題1】さまざまな条件下での運動
いきなりハードな問題ですが,単振動問題の基本は,
「運動方程式を立て,加速度を求める」
→「そこから,角振動数や振動中心の情報を得る」
です。
ただし,中途半端なところを通過するときの物体の速さを求めるとき,
単振動と他の運動が組み合わさってくるときなどは,
「(力学的)エネルギー保存則」や「仕事と運動エネルギーの関係」を
利用することもあります。
この問題は,浮力や抵抗力がからんできます。
【実戦問題2】重心系
「重心系」は,少しレベルの高い問題集には必ず取り上げられるものです。
ただし,「重心系」を用いるとなぜ良いのか,
についてはあまり述べられていません。
初めて「重心系」を扱う人にも分かりやすいように,
誘導形式にしてみました。後半は少しレベルが高くなります。
この問題には,指導者(教員)の方からも反応がありました。
返信ありがとうございます!
是非活用していただければ,と思います。
【実戦問題3】振動中心が移動
単振動問題を解くときのポイントは,
・ 振動中心を確認する
・ 初期条件を確認する
・ 時間追跡(運動方程式)か保存則のどちらを選択するか
です。
「糸がたるむ」「糸がピンと張る」「ストッパにあたる」
「ストッパから離れる」「摩擦のない場所から摩擦のある場所に入る」
など,条件を変えて,振動中心を移動させたり,
振幅を変化させたりする問題にも対応できるようになりましょう。
【実戦問題4】上下非対称
(過去問解説 東京大学(1982年))
仕事を「定義どおり」求められますか?
エネルギー的な議論から,「なされた仕事」を求めることもできますが,
まずは定義どおり求められるようになってください
(エネルギー的な考察はそのあとです)。
そしてもう一つ,この問題を解く上で重要なキーワードがあります。
それに気がつきますか?(答えは2つめのツイートで)
下の画像は「子どもにウケる科学手品77」
(著:後藤道夫 講談社ブルーバックス)の中の49番目の科学手品です。
こういう遊びを小さい頃にどれだけしていたか,
がこの問題の正答率にどれくらい影響しているのか,
を私は知りたいと思っています。
【実戦問題5】水柱の単振動
(過去問解説 慶應義塾大学理工学部(1985年))
((追加問題) 山口大学(1997年))
「水柱の単振動」は,一度は解いておきたい題材(テーマ)です。
水柱のどの部分でもいいですが,つり合いの位置からの変位に注目します。
もちろん立てるべき式は「運動方程式」です。
(別解)では,この単振動の弾性定数を面白い方法で導出してみました。
「追加問題」(山口大学)も是非!
【実戦問題6】摩擦あるベルト上での運動
(過去問解説 立教大学(1988年))
「摩擦のあるベルト上での運動」は,
この立教大学の問題が出題されて以来,
さまざまな大学で出題されてきました。
1994年には東京大学,
1996年には東北大学(→ ツイートの下のYouTubeの解説動画)で,
そして2007年には東京大学(→【実戦問題10】)と
東京工業大学(→【実戦問題7】)で同時に出題されました。
他の大学でも多く取り上げられ,
今となっては普通に見かけられる問題となってしまいました。
このタイプの問題は1問は必ず解いてください。
この立教大学の問題では解答・解説に力を入れ,
実際何が起こっているのかについて事細かく述べてみました。
参考にしてください。
動画(東北大学過去問)も是非!
動画の下に問題のPDFファイルがあります。
【実戦問題7】地震発生のモデル
(過去問解説 東京工業大学(2007年))
この問題,初めて見たときには「箱が滑っている間の時間は,
箱がベルトに付着して移動している時間に比べて無視できる
ほど短いものとする」という条件の不自然さを感じたものです。
生徒にこの問題を宿題として解いてくるように指示をしたら,
次の日,ある生徒がこの問題の背景を調べてきてくれました。
実はこの問題は,「地震発生のモデル」だったのです。
下のリンクは,その生徒が調べてきた「地震発生の素過程」です。
東工大の問題の図2と同じような図がこのリンク先のページの中に
見られます(図1(a) ふたつのブロックモデル)。
https://t.co/mEBEWafi59?amp=1
ここで紹介されている「アスペリティモデル」というのは,
地震発生モデルのひとつです(下の説明参照)。
2011年の東日本大震災以来,「このモデルを修正しなければならない」
(もしくは,「このモデルは破綻した」),
という意見が見られるようになりました。
【実戦問題8】棒に通された小球の運動
(過去問解説 広島大学<改題>)
この問題,設定にちょっと無理がありますが(笑),
問題自体は教育的な内容です。
「注目すべき物体系」と「仕事とエネルギーの関係」を確認してください。
【実戦問題9】振動と位置エネルギー
(過去問解説 福井大学(1989年))
この問題は重要です。
ツイートにもありますが,つぶやいた内容をここにも書きます。
「現象から位置エネルギーのグラフを描く」
逆に「位置エネルギーのグラフから運動の状態を推測する」
問題は,これから出題される可能性が高いです。
このタイプの問題では,物理的な知識に加え,
数学的な力も同時に見ることができるからです。
解説動画もあります。「保存力の性質」からていねいに解説してみました。福井大学の問題解説は「その2」です。参考にしてください。
【実戦問題10】バイオリンの弦の振動
(過去問解説 東京大学(2007年))
日常生活,自然の中に潜むさまざまな現象を物理学的に考察する問題は,
これからも出題され続けます。
それが物理を勉強する動機であり,目的なので。
こういう問題が面白いと思える感性を養いたいですね。
弦を弾いた後の定常的な振動(固有振動)を扱う問題は
多いのですが(波動範囲),この問題では,
弓でこすり続けるときの弦の振動をモデル化して考察していきます。
最後の問題は,パラメータを極端な値にして,
注目する物理量のふるまいを予想してから解いてみよう。
問題文にもありますが,図やグラフを利用することも重要!
【実戦問題11】バネつき2物体
(過去問解説 東京大学後期日程(1999年))
「バネつき2物体」の問題は毎年,どこかの大学での出題が見られます。
重心から見た2物体の運動に注目させるものや,
もう一つの物体を衝突させて,この2物体系に力積を与えるものなど,
様々なパターンがあります。
この問題で,
「部分」→「全体」,そして「全体」→「部分」
に注目する視点の切り替えの訓練を行ってください。
【実戦問題12】位相差
(過去問解説 東京医科歯科大学(2017年))
「位相差」は波動分野特有の考え方ではありません。
力学でも,電磁気でも扱われる非常に重要なとらえ方です。
(難関大入試では必須事項に挙げられます)
この問題では,グラフを利用する方法の紹介をしました。
別解も読み飛ばさずに,取り組んでください。
【実戦問題13】力学電磁気融合問題
(過去問解説 東京大学(1990年))
この問題,初見では「盛り込みすぎだ」と感じたのですが,
今は「もっと盛り込めるのではないか」と思っています(笑)
例えば,
極板Aをピストンにして極板Bも含めてシリンダで覆ったら
「熱力学の問題」になるのではないかな…とか,
やはりこのバネを自己インダクタンス一定のコイルと考えて…とか,
この装置全体を傾角θの斜面上に置いて滑らせてみよう…とか,
どういう設定ならば高校範囲で解ける問題にできるのかを
考えるのも面白いですよ。
【実戦問題14】安定,不安定なつり合い
(過去問解説 中央大学(1991年)<改題>)
【実戦問題9】(福井大学過去問)でも扱った内容です。要注意の問題。
実際の中央大学の入試問題では,
全位置エネルギーUおよび力Fについては,グラフを描かせています。
ちょっとそれはやりすぎなので,選択問題としました。
数学的な処理,しかもスピードが求められる問題です。
以上です。
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マナブ
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