怖い教官も人の親

今まで会った生物で一番怖いものは何かと聞かれると僕は中学校の頃のM先生と言う。全く迷いなく。

とにかくめちゃくちゃ怖い。
死ぬほど怖い。
あんな怖い人にあったらどんな大人も怖くない。

先生はもはや人ではない。
戦国時代を生き残った虎だ。なぜか平成にいた。

身長はある程度高く、
姿勢を良いが、肩は少し丸く
少しがに股。

髪の毛はカッチリワックスで決まり、
眉毛が常に内側にしわ寄せされている。

何より目が怖い。もう覇気が出ている。
黒目がやたらに大きい。
どんな生活をして来たらこんな目になるのか。
眼科で今度聞きたい。多分保険がかからない情報提供になる。

常にサングラス、
いつでも戦闘モードに入れる体制

声も怖い。
あぅん？とかおぉぉおい！とかコラァァァあ
とかもうその辺のヤクザなら声だけで負ける声量と奥深さ。
僕たちは声だけで消える。

その厳しさで野球部を４年連続県大会、
そして、全国大会に一度連れて行ったのだ。

学生時代野球経験はないが、野球の采配は本当に冴えることから野球が好きだとも思える。

何故かそんな先生が本当の勝負の試合で指揮を取ると負ける気がしない。
先生は怖く厳しい反面、勝敗の責任も共に背負って戦っているのが身にしみていた。

５０歳の歳で若めの奥さんと子供を作り、
小さい子供をグラウンドに連れて来たときは、
この子にボールでも当てようもうなら死ぬなと
僕達の黒目が大きくなった。

そんなある日、午前中の試合が終わり、いつもなら午後に練習がある。
どんな練習になるか僕達がビクビクしていると、先生が職員室から出てきて、整列させられた。

「ちょっと皆には悪いだけど、子供が風邪引いちゃって、先生今からスイカ買いに行かないといけないから午後は終りだ」

スイカ？


スイカってあのスイカ？
なんか隠語とかじゃないよね？

いやでもそうか、あの子も風邪引くのか、
なんかようやく先生の人の部分が見えてきて、
やけに温かい気持ちになった。

虎の子が風邪を引くとスイカなのか！？
まさか先生もスイカを食べるのか！？
しょ、将軍様も、す、スイカなるものを食されるのでスカ！？

そして何より午後の練習がなくなったことで、
たくさんゲームをする時間が出来たワレワレであったが、

そうだよな、怖い先生も家庭があり、人生の一部として教師をやっていて、その一部として部活を指導してくれていたんだと今になって気づいた。

全てなにかの一部ってことに僕らは気づかない
愛しい訳を見つけたのならもう失わないで(oh you are the one )

とB'zの稲葉も歌っていた。
このoh you are the oneがoh you are the worldに聞こえる。
(そんなことはどうでも良い)

仕事での付き合いも違う会社の人でも、皆それぞれにストーリーがあり、家庭があると、今になって、先生の大変さも分かってきた気がした。

皆にリスペクトを払わなくてわ！
それがその奥にいる人へのリスペクトになると！（この場合は先生のお子さんが一番のステイクホルダーなのだ！）

今度何かあったらスイカを買って行こうと思う。