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作品に浸る時間は、まさに「人生のトランジット」だった。

先月(2022/4/16)上演された、ノーミーツさんの舞台「夢路空港」。
現役で供用中の空港を貸し切って、深夜に一夜限りの生配信を行う、というこれまた斬新な企画でした。

ジャルジャルさんが主演ということで、しっかりコメディの要素もふんだんに盛り込まれつつも、
内容自体は「夢」というものを主軸にした、しっかりとテーマ性もある作品で。

最初に見たときはなにげなくスルーしていたセリフも、
二度目に見ると、いろいろな伏線や作品自体に込められたテーマなどもより理解できて、配信ならではの見方を満喫させていただきました…!


話の主軸となる「空港で荷物が出てこない」というストーリー。
空港という場所が「人生のトランジット」、ひととき立ち止まって自分を振り返る場所、
「出てこない荷物」が「人生の忘れ物」、日々の中でどこかに置き忘れてきてしまった大事なもの、
というメタファーにそれぞれなっていることがわかると、
清宮レイさん演じる、航空整備士の足立と、平田敦子さん演じる「売店のおばちゃん」大桑がなにげなく会話しているこのシーンが、実はすごく大事な意味を持っていたことがわかって。

足立「出てくると思います?荷物」
大桑「どうやろ?まー、あれは自分次第やんね」
足「ずっと出てこなくなる人もいますもんねえ…」
大「まっさらな人と話をすれば、まっさらな自分を思い出すんじゃないか?」
足「難しいことですよ、だって、社会の中じゃみんな何者かでもあるから
大「でも、何者でもない自分として生きてみて初めて、本当の自分を思い出す時もある
足「…んー、何なんですかねー?あのベルトコンベア」
大「自分を見失った人に、根っこに立ち返るきっかけをくれるんやわ
足「なんかせわしない人ほど足止め食らっちゃってる気がする(笑)
大「まあ、人生のトランジットみたいなもんや。忙しい時はあえて立ち止まって、自分の心に耳を傾ければいいんや」
足「…ですね」


そして、その後に続く、前田敦子さん演じる「きな子」が実はCAさんだった、という種明かしがされるシーン。
元AKBのエース、前田さんと、乃木坂の現役、清宮さんの世代を超えた共演もエモすぎる…と思いながら、
それぞれの「夢」と「現実」、各々の生き方が交錯していて、なんだか考えさせられるシーンだなあ、と。

足立「休憩中ですか?」
きな子「まあ、そんなとこ、次まで時間あるから」
大桑「(休憩中は)全部脱いじゃうんだ?制服」
き「まあ…、フラットが性に合ってるんで」
足「フラット…」
き「なるべく自然体でいたいから、まあ服装から?」
大「まあ、あんだけピチッとしてたら、気休まらんか?」
き「私は、ですよ?だから休みの時は役割からもうバーっと解放されてただのひとー!でいたいんですよね、その方が気兼ねなく話せるし、人と
大「そんでいいよね」
き「…普段気張ってばっかだからね」
足「えー、でもCAさんってみんなのあこがれじゃないですか?」
き「まあそういう人もいるんだけど…、私はたまたま英語が話せて、たまたま旅行ばっか行ってたから、やってるだけだし…。…楽しいんだけど(笑)」
足「それが本当の好き説ありますよ?」
き「そうかね〜?(笑) …でも夢に向かって突っ走れる人はいいな〜って思うけどね?私はさあ、こんな感じで今を実直に生きることしかできないから……ドラマとは無縁だな
足「…それもかっこいいです
き「…ありがとう。(笑)まっ、お互いほどほどに、がんばろ?」
足「はい!」


この作品では、空港という場所が「人生のトランジット」地点として描かれていましたが、
観客の私たちとしては、この作品そのものが、観劇を通して自分の生き方を改めて見つめ直す、まさに「人生のトランジット」となる体験をつくってくれているのだろうなあ、と。
とっても楽しく、そして素敵な観劇体験でした。

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