- 運営しているクリエイター
記事一覧
小西大樹「就職したら親戚が増えました」#25 お手伝い編⑨
大樹の背景を知りながら会話をする事は、葵と基にとってはいささか気まずいし、すりあわせが面倒くさいと感じられた。
大樹とのカフェランチは、マーケティングという名の勉強を兼ねた敵情視察とは名ばかりの、基としては一番の目的は『大樹の食の好み』の情報収集であった。
大樹にとっては、ゴールデンウィーク中に迷惑をかけた際のお詫びのつもりである。
葵と基から一つずつ、『頼み事に協力すること』という約束。お
小西大樹「就職したら親戚が増えました」♯23 お手伝い編⑦
程なくして、基がミニパンケーキを人数分トレーに乗せてやって来た。
「どうかした?小西君、そんな難しい顔をして?」
大樹には聞こえていないらしい。眉間にしわを寄せて、両手をテーブルの上で固く組んで微動だにしない。
「あら良い香り~。ほら、小西君、基がおやつを持って来たわ。コーヒーのお代わりいかが?」
大樹には葵の声も届いていないらしい。
「あらあ。珍しい子ね。聞こえてないわよ、これは。」
「
小西大樹「就職したら親戚が増えました」#24 お手伝い編⑧
(えっと……葵さんと基さんは……確か同じ苗字だから、名前で呼んで欲しいと言われたんだっけ。同い年とか言ってたな。)
大樹は、目の前の二人が自分の勤めている会社の社長、支社長の次男坊たちだという事実を勿論知るはずもない。
実は、葵は母方の従兄弟でもある。本人は、両親は施設育ちだから血の繋がった親戚はいないと聞かされている。母は養女になって、血の繋がらない親兄弟がいるとは話していたが、彼らとは年が離
小西大樹「就職したら親戚が増えました」#22 お手伝い編⑥
「あら?小西君、どうしたの?」
葵がコーヒーを3人分運んで来た。
大樹はカウンターのスツールに座っていた。
しかも、たった5脚の丸椅子を場所を替えながら。葵は訝しむように様子を見ていたが、ほどなく真意が分かったかの様に微笑んだ。
「あ、これは……。」
大樹が挙動不審な行動を見られて言葉を探していると、
「あ~、もしかして、小玉さんの所へ行って来たんじゃない?小西君も?」
葵にズバリ言い当て