デンマークのスマートシティ データを活用した人間中心の都市づくり
2022年11月の図書はこちら。
「デンマークのスマートシティ データを活用した人間中心の都市づくり」
著:中島健祐
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早いもので、もう年度末。
去年読んだ本を今さら要約する。
去年くらいから少し興味のあるもの、それが街づくり。
以前出向先にいた時にお世話になった先輩が、転職した後に会社に勤めながら大学院に通っていた。その先輩が大学院で学んでいたのが、大枠で言えば公共政策。
その先輩から何を学んでいるのかといった話を聞きながら思っていたのが、都市ってどんな風に形成されるのか、ということ。都市という複雑なものが組み合わさって出来る集合体は、誰が何をどう考えて作っているのか気になっていた。
そして本屋で見つけたのがこの本。
データ分析などを仕事でしている背景と上述の好奇心がまさにバッチコオン!!と重なり合った気がした。
ただ、正直なことを言うと題名には「データを活用した」とあるが、その点についての記載は特に無い。
基本的にはデンマークが現在のスマートシティを作るにあたっての経緯や枠組みの話、実際に何がスマートなのかの話が主となっている。
この要約の中ではデンマークにおけるスマートシティとしての一部の取り組み、どうやってスマートシティを作り上げるにあたって何を重要視したか、に主軸をおいて要約していく。
1. デンマークの何が優れているか?
この章においては、日本と比較してどういった点が優れていると言えるかを複数の視点から解説していく。"優れている"といった点に賛否両論は起きそうだが、、
この解説により、まずはデンマークの特長を知って頂けたらと思う。
1.1 女性の社会進出と育児
まずは女性の社会進出について。
デンマークでは1980年代以降、女性の就業率は高い水準を保っている。そのため、ほとんどの家庭で共働きが行われている。
ただし、女性の就業率は自治体、医療機関、教育機関など公的セクターにおいて高く、エネルギー産業や製造業では男性の就業者が中心となっている。それは公的セクターの方が女性の知識や経験が生かしやすいためと考えられている。
以前読んだ本「男女平等はどこまで進んだかー女性差別撤廃条約から考える」の中でも記載があった通り、日本における女性の社会進出が進んでいない中で、デンマークでは女性の就業率が高いことから、女性の社会進出が進んでいると言えるのでは。
実際に、Fig1で示している通り、日本と比較してデンマークの女性就業率は高い。
じゃあなぜ、デンマークでは女性が社会進出をしやすいのか。
その要因として挙げられるのが、まず保育士などの給料。
以前の要約でも書いたが、保育士などの給料は相対的に見て安い傾向にある。日本でもこの傾向は大いにあると思う。
しかし、デンマークでは保育士などの給料は決して安くなく、十分な給料をもらえるような仕組みとなっている。そのため、女性が就きやすい保育士などの職で業務量に対して給料が安いために仕事を辞める、という事を防いでいる。
次に育児。
デンマークでは希望する子供はすべて保育園に入園させる義務がある。
それゆえ、一部待機児童が発生する地区はあるものの、待機児童問題が解決していない日本と比較すると育児に対するハードルが低くなっている。
また、保育料の支援も手厚く、お金が無いから入園させられないという事態を防いでいる。つまり、格差を少なくする社会の仕組みは人生のスタートから保証されている、とも言える。
要は、デンマークでは、保育士などの給料や育児支援の手厚さが女性の社会進出を促進している要因の一部となっている。
その一方で、育児支援が手厚いとは言え、女性の社会進出が進むと出生率が下がるのではないかと思うかもしれない。
その問題には賛否両論があるらしいが、Fig2の通りデータだけを見ると、デンマークにおいて女性の社会進出が合計特殊出生率に悪影響を及ぼしているとは言えないのでは。むしろ良い影響を与えてるのかも?(笑)
Fig2だけでは一概にこうだ!とは言えないので参考程度に知ってもらえたらと思う。
まあ、1.1だけで長くなったけど、ここで言いたいのはデンマークの特長として女性の社会進出が進んでいるよ!という事。
1.2 税負担
デンマークの特長、その2。税負担。
デンマークにおける国民のGDPに対する税負担率は46.0%とOECD加盟国の中で2番目に高い数字となっている。(ちなみに、日本は30.6%)
こんなに税負担が高いと国民は不満を抱くのではないか?と思うかもしれないが、実はそうでもないらしい。
なぜか?
それは、デンマークの国民たちは政治を信頼しており、自分たちが納めた税金が正しく使われており、それらが国の発展や不幸な人たちの支援に充てられている、その為の納税は国民としての当然の義務であると認識されているから。
ではなぜデンマークでは政治を信頼出来るのか。
様々な理由があると思うが、この本で書かれていたのは、デンマークでは政治の透明性が高く、世界的に見ても議員の汚職が少ない国だから。
これらの理由から、政治の透明性が高いがゆえに国民たちは安心して税金の再配分を任せられ、高い税負担でも不満を持たないらしい。
逆に、日本だと税金が結局何に使われているか分からないから政治に対して不満を持つってのはすごく分かる気がする、、デンマークとは大違い、、、
1.3 学校教育
デンマークの特長、その3。学校教育。
デンマークでは公立の場合、授業料はすべて無料!
そして、大学になると勉強に集中するため毎月10万円支給!
それでも厳しければ低金利のローンを活用可!
これらの支援が行われているのは、経済的な理由で勉学の道が閉ざされることなく、経済格差が教育格差を生まないような社会の仕組みとするためである。
うーん、素晴らしい、、
また、デンマークの教育で重視されているのは知識の習得だけでなく、社会をつくる上で必要な人格形成や人間性の向上である。
そのため、デンマークでは教えるというアプローチではなく、生徒との自由な対話によって気づきを与える教育を行っている。
日本のような「講義形式」ではなく、「対話形式」ということ。
ここまで1.1から1.3まで書いてきたが、総じて言えるのは、デンマークでは格差を少しでも無くそうとするマインドが強い。その格差というのは、男女格差、経済格差、教育格差と多岐にわたる。
これだけ聞くと、日本の政治って何だろうなと思うけれど、まずは外を知ることで自分を知ることが重要であり、その先の行動として選挙に行き、少しでも自分の意思を示すべきかと思う。
すみません、かなり話が飛躍しました。(笑)
2. デンマークと日本のスマートシティ
ここからはデンマークにてスマートシティの取り組みとして何をしているか、その取り組み方は日本と何が違うのかを解説する。
2.1 包括的なアプローチ
デンマークのスマートシティの取り組みとして代表的なものとして、自転車政策があげられる。
デンマークでは市民の通勤・通学時の自転車利用を強く推進しており、実際にその数字を50%まで高めようとしている。
この政策の一環として、政府はコペンハーゲン周辺に自転車スーパーハイウェイというものの整備を進めている。これは総延長467kmの自転車用高速道路で、車や歩行者を気にすることなく走行できる道路となっている。
東京で言えば、電車に乗ればどこでも行けるといった具合だが、デンマークではこれが自転車ということ。
では、なぜデンマーク政府は自転車に乗る人を増やしたいのか?
その理由は以下の4つの通り。
①市民が自転車を利用することでエネルギー・環境・交通の問題が解決する
②市民が健康になり、自治体の社会保障支出が削減され、削減分を教育やスマートシティなどの予算に充てられる
③自転車スーパーハイウェイにおける新技術導入は世界中の最先端技術導入事例とし、誘致が出来る(投資の促進)
④両親が健康となることで家庭環境を良くする
ここでデンマークのスマートシティの取り組みとして特長的なのは、この自転車政策の通り「自転車=移動手段」という単純な発想だけでないという事。スマートシティの取り組みを多方面に利用した"包括的なアプローチ"がデンマークの政策デザインの特徴である。
2.2 デンマークと日本のスマートシティの違い
デンマークのスマートシティへの取り組みは日本での取り組みとどう違うのか?
違いは主に下記の2つ。
①スマートシティの定義が広い
②単にスマートシティを作るだけでなく、具体的な都市課題を解決するための技術やソリューションを開発し、都市に導入することを目指している
日本でのスマートシティの議論はスマートグリッド(※)やBEMS(ビルエネルギー管理システム)などの、エネルギーソリューションに関係するインフラ整備が中心となっている。
(※)スマートグリッド
IT技術を活用して、発電所の供給側と家庭や事業所などの需要側の電力需給を自動制御し、需要に応じて発電施設からの電力を効率よく配分する電力網のこと。
一方、デンマークでは都市計画、エネルギー政策、環境政策に加えて"市民サービス"が相互に関連して議論されている。
デンマークではこういった「人間中心」という思想がスマートシティにて重視されている為、参加者には建築家やデザイナー、文化人類学者、そしてもちろん市民も含まれている。
デンマークでは多様な参加者が交わりスマートシティへ取り組んでいるが、日本においては参加者は地方自治体、電力会社、ゼネコン、ハウスメーカーのみ、、、
要は、都市形成には複雑な問題が絡み合っている中で、都市自体を高度化する取り組みであるスマートシティは、本来エネルギーだけに限った話ではなく包括的にアプローチしていくべきであるが、日本ではまだその点が遅れている。
そして、スマートシティはそこに住む人たちの為に行われるべきであるが、日本ではその当事者である市民が取り組みに参加していないのが事実である。
結論として、日本においては単純ではあるがスマートシティって結局何なんだ、誰のためのものなんだって部分を再考し、デンマークに倣って多様な参加者を募って取り組んでいくべきかと個人的に思う。
じゃあ自分たちが何が出来るかと言うと、まずはこういった事柄に対して自分事と捉えて関心を持つ所から始めるべきかと。そして、有権者として自分の納得のいく街づくりを推進する政治家に投票したりする。
文句ばっかり言ってないで、まずは選挙に行くことで意思表示しろよってこと。
また、この本が書かれたのは2019年で、当時は日本において市民参画型スマートシティ構想は少ないと記載があるが、実は現在はちょくちょく市民も参加するよう取り組みが始まってたりする。そういったスマートシティへの取り組みに市民として参加してみる、こういった事が出来るのでは?
3. オープンイノベーションの重要性
2章で示した通り、スマートシティへの取り組みに対しては多様な参加者がいることが重要となってくる。それは街づくりが複雑な問題が絡み合っているため。
ただ、多様な参加者が参加すべきなのは街づくりだけではなく、世の中の様々な問題に対してでもある。
つまり、"オープンイノベーション"というものが現代では非常に重要となっている。
なぜか?
それは、複雑化する現代社会においては単独の関係者だけで問題を解決することは難しいためである。こうした現状から、様々な分野を包括して計画する必要があるが、すべての分野に精通した専門家などいない。
その一方で多くの分野を同時に考慮した最適化が行われないと本当の意味での課題解決はできない。スマートシティで言えば、本当に暮らしやすい街というのは作れない。日本のようにエネルギーだけを考えてたってダメでしょ、ってこと。
また、各関係者がそれぞれ実現したい事が異なるため、利害関係を調整し、他の関係者と更に連携することは容易ではない。
だったら何をすべきか?
そう!オープンイノベーション!
ごたごた言ってないで、皆で知恵を集めて課題解決の為に話し合おうぜ!ってこと!
そして、デンマークが上手いのがこのオープンイノベーションというもの。
デンマークではいかに横断的なつながりを作れるか、というのが重要視されており、そのつながりを用いてイノベーションをゴリゴリに進め、全体最適な課題解決を行っている。だからこそ、スマートシティに向け複雑な社会課題も解決していける。
逆に言うと、日本ってこの部分がすごく弱いと感じる、、
縦割り社会がゆえに単一部門だけで物事を進め、結局後から使い物にならないとか、誰のために作った?など、そんなことってたくさんある気がする。
実際、仕事の中でもこうゆう風に感じている中で、このデンマークのオープンイノベーションの考えはやはり心に響き、プロジェクトを進める上で部門横断的な繋がりがいかに重要か、といった事を再度教えてくれた。
全体最適にするにはどうしたら良いのか、単一的な課題解決となっていないか、そんな事を念頭に置き、多様な利害関係者が集まり会話を重ねる、それが非常に重要ってことですね。
今回の要約はかなりダラダラと文章を書いてしまった気がするな、、反省。
そして、スマートシティとかの話をもっと書くべきかと思ったけれど、そういった事よりもデンマークで出来ていて、なぜ日本で出来ていないのか、そういった所にフォーカスして要約を書いた。
どちらかと言うと、読書感想文に近いか、(笑)
最後にはなるけれど、やはり言いたいのは横断的なつながりが重要なんだって事。
当たり前だけど出来ていないから、もう一回言う。
横断的な繋がり、インポータントです。
さあ!明日から!レッツ、オープンイノベーション!
お わ り
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