今だからこそ、YMOの源流ともいえる3枚の神アルバムを愛でる(レコードジャケットの楽しみ #18)
こんにちは、吉田です。
レコードジャケットを自宅の部屋に飾ってニンマリする連載の18回目です。(連載のマガジンはこちら)
映画「ZAPPA」公開を機に飾った「Hot Rats」の3連発が視覚的にイマイチだったので、だいぶ時間が経過しましたが別のレコードジャケットに変更することにしました。(前回のHot Ratsの回はコチラ)
ザッパへの思い入れに対抗できるアーティストはなかなかいませんが、悩んだ結果、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の3名それぞれの神アルバムしかないと確信し、チョイスした次第です。
それと、ご存じの方も多いと思いますが、今年の1月に高橋幸宏さんが、そして続いて3月には坂本龍一さんが鬼籍に入られるという悲しい出来事が続き、追悼の意味も込めさせていただきました。
まず最初は、細野晴臣さんの4thアルバム「はらいそ」です。どうぞ!
ジャケットデザインとしては(失礼ながら)個人的にはあまり好みではないのですが、内容としては神アルバムとして間違いがありません。
何度聴いても飽きることがなく、本当によくこんなすごいアルバム作られたな...と感嘆することしきりです。
中でも、8曲目の「シャンバラ通信」の最後から9曲目の「ウォリー・ビーズ」の出だしの部分が大好きで、毎回聴くたびに鳥肌が立つようなゾワゾワした感覚を与えてくれます。
Spotifyにもありますので、未聴の方はぜひお聴きください!
ちなみに、以前本連載で「はらいそ」を少しだけ取り上げていますので、ご興味ある方はご覧ください。⇒「これはもう、邦楽ロックの至宝だ!」
この「はらいそ」は、1978年4月にリリースされたのですが、このアルバムは2つの意味でYMOの源流となっています。
1つ目は音楽性で、当時のオリエンタルテイストを前面に出したロックのひとつの完成形であり、その音楽性がYMOの礎となっています。
「はらいそ」の正式なアーティスト名は「細野晴臣&イエロー・マジック・バンド」なのですが、オリエンタルテイストを前面に出していることはもちろんのこと、のちの「イエロー・マジック・オーケストラ」というバンド名にそのままつながっています。
2つ目は、細野さんを中心に3名でYMOを結成するきっかけになったのが、この「はらいそ」になります。
6曲目の「ファム・ファタール」の収録後に細野さんがお二人に声をかけて自宅に招き、YMOのコンセプトを説明して結成を促した...というのは有名な話です。
つまり、「はらいそ」がなければ、YMOが存在していない可能性が高く、もし結成されていたとしても他のメンバーであれば違ったYMOになっていたかと思うと、この出会いに感謝ですね。
その出会いが1978年2月、「はらいそ」のリリースが同年4月、そして同じく1978年の7月にYMOとしてレコーディングを開始し、初ライブを同年9月に開催、同年11月に1stアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」をリリースしています。
このあとに紹介する坂本龍一さんのアルバムも1978年リリースのため、1978年はYMOとメンバーの皆さんにとっては、まさしくターニングポイントとなった記念すべき一年だったと思われます。
ちなみに、YMOのジャケットも以前の回で紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。「YMOという時代を、観てそして聴いてみよう!」
続いての2つ目のアルバムは、上でもチラッと紹介した坂本龍一さんが1978年10月にリリースした1stアルバム「千のナイフ」です。
ちょっと気取ったようなアルバムジャケットですが、坂本龍一さんはファッションには全く興味がなく、見かねた高橋幸宏さんが用意された服を着て撮影されたとのことで、そう思ってジャケットを見ると、めちゃくちゃオシャレですよね。
しかし、その気取ったようなジャケットデザインとは全く違い、内容は超マジメというか、一見(一聴?)シンプルに聴こえるものの、何度聴いても飽きることがなく、練りに練って制作されたことが今もなお感じ取れる完成度の高いアルバムとして仕上がっています。
さて、この「千のナイフ」は、細野さんの「はらいそ」のリリースと同じ1978年4月からレコーディングを開始しているというのも、不思議なつながりを感じます。
そして、同年7月まで4ヶ月をかけてレコーディングされたようで、何度も微調整しながら収録されたことが、アルバムを聴くとわかります。
同じ曲の中でも、細かなリズムの調整や音の出だしの微妙な変化があり、どこまで手間暇掛けて作られたのか、考えるだけで恐ろしいほどです。
しかし、何度聴いても古さがなく味わい深さを感じさせてくれるのは、その手間暇あればこそかと思われます。
一番の圧巻は、やはりタイトルチューンである「千のナイフ」ですが、冒頭の1分30秒がボコーダーを経由した詩の朗読となっていることが少し残念です。(30秒ぐらいならまだしも、1分30秒は長すぎる...)
そのため、冒頭の1分ぐらい飛ばしてから聴いています。(坂本龍一さんには申し訳ないですが)
全長9分34秒なので、冒頭の1分30秒を抜いても8分という長尺の楽曲ですが、全くその長さを感じさせずに最後まであっという間に聴かせてくれることからも、楽曲の完成度の高さがうかがえます。
そして、最後の「THE END OF ASIA」もお気に入りの楽曲です。
この「THE END OF ASIA」については、ぜひ皆さんに比べて聴いていただきたい楽曲があるのです。
それは、上で紹介した細野晴臣さんの「はらいそ」の8曲目に収録されている「ウォリー・ビーズ」です。
アレンジこそ違え、この2つの楽曲「THE END OF ASIA」と「ウォリー・ビーズ」は同じ曲と言っても過言ではありません。
しかし、細野さんが「千のナイフ」のライナーノーツに偶然の所業であると明記されているため、ほぼ同じタイミングで同じ楽曲がお二人より生み出されたという奇跡的な話なのでしょう。(すっきりはしませんが...)
「千のナイフ」もSpotifyにありますので、ぜひ聴き比べてみてください。
そして最後は、高橋幸宏さんの2ndアルバム「音楽殺人」です。
こちらはシンプルなジャケットデザインですが、デザイナーでもある高橋幸宏さんのセンスの高さが見て取れるオシャレなジャケットです。
モノトーンのシンプルなジャケットデザインとは対照的に、内容は華やかな楽曲からシブいものまでバラエティに富み、かつ無駄な(イマイチな)楽曲がひとつもなく全てが名曲ともいえる神アルバムとなっています。
この「音楽殺人」は1980年のリリースとなり、YMO全盛期のメチャクチャ忙しいタイミングのはずですが、その時期にこの完成度の高いアルバムを制作されたというのは驚愕です。
多分、めちゃくちゃハイになっていて、どれだけ仕事が忙しくても次から次へと創作意欲がわいてこられたのではないかと(勝手に)想像しています。
本当に全曲素晴らしいのですが、その中でも一番のお気に入りが最後に収録されている「THE CORE OF EDEN」です。
なんといっても、間奏に流れる大村憲司さんのギターソロが超絶素晴らしく、打ち震えるというのはまさしくこのことだろうと思わせられる名演奏であり、体や精神の奥まで伝わてくるかのようです。
ギターソロというと、坂本龍一さんの「千のナイフ」でも素晴らしい演奏を聴くことができます。
それは、「千のナイフ」と「THE END OF ASIA」での渡辺香津美さんの演奏で、もうキレッキレで、かつたっぷり長尺で聴かせてくれています。
「音楽殺人」での大村憲司さんと「千のナイフ」での渡辺香津美さんの演奏は対照的でありながらも双方とも素晴らしく、惜しむらくは大村憲司さんのソロパートがメチャクチャ短く、毎回聴くたびに「3倍ぐらいの長さだったらよかったのに...」と思っています。
なお、大村憲司さんの演奏を生で聴くことはもうできません。
49歳という若さで鬼籍に入られたのは、もう25年も前のことになります。
大村憲司さんも渡辺香津美さんもYMOのサポートメンバーとして楽曲の収録だけでなくライブツアーにも参加するなど、YMOとのつながり自体も深いお二人でした。
今回の3つのジャケットですが、こんな感じで並べて飾っています。
今回、久しぶりにレコードジャケットを入れ替えてみたのですが、気づいたことがあります。
今まではデザイン的に関連性のあるアルバムを組み合わせていたのですが、今回初めてアルバムそのものの関連性で組み合わせてみました。
そうしたところ、明らかに視覚的には(デザイン的には)ミスマッチの3枚のジャケットですが、観ていると不思議としっくりくるのです。
なぜか考えたところ、ジャケットのデザインの向こう側に、YMOや3名の皆さんそれぞれの楽曲への思い入れや、楽曲を聴いていたころの日々が透けて見えるというか思い出されるからではないかと思うのです。
さて、今回の「レコードジャケットの楽しみ」はいかがでしたでしょうか。
3枚の神アルバム、「はらいそ」、「千のナイフ」、「音楽殺人」、そのすべてが超オススメです。
未聴の方はぜひお聴きください。(Spotifyにもアップされています)
ではまた次回に。
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