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劇場型MVって勝手に命名。ゆずにサカナクションって妙な組み合わせでご紹介(オススメMV #35)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の35回目です。(連載のマガジンはこちら)

前回のテーマは「コラージュ」でしたが、今回のテーマは「劇場型MV」。
もちろん勝手につけた名称ですが、追々説明させていただきます。

まず、その「劇場型MV」をご覧ください。
ゆずの「シシカバブー」です。

賑やかで楽しいMVですね。
楽曲もノリが良くて、楽曲と映像がうまくマッチているいい作品です。

実はゆずの楽曲はほとんど聴くことが無く、テレビやラジオでたまたま聴くぐらいのお付き合いです。
しかし、このMVを音楽番組の中で観て「面白い!」と一気にハマってしまい、他の楽曲を聞いたのですが残念ながら私との相性はよくないようで、ゆずとのお付き合いはこのMVだけにとどまっています。

このMVの特徴は、まさしく劇場で劇を観ているかのような演出です。
ゆずのおふたりが前で歌っている後ろで劇が繰り広げられているかのような演出は面白いですよね。
しかも、たまにゆずのおふたりがその中に入っていく具合もちょうどいい。
また、演劇チックな場面と、ゆずのおふたりが妙なトリック劇ともいえる寸劇をしている場面もあり、単調にならずに最後まで観ることができます。

このMVは「劇場型MV」と命名しましたが、演劇チックな場面においては演劇と歌との分離と一体の割合、そして演劇チックな場面とトリック劇の割合がすばらしく、そういう意味ではバランスの良さが良質なMVとなった要因と言えます。

ちなみに、このMVの監督は番場秀一さん。
前回ご紹介したSuperflyの「How Do I Survive!」も番場さんが監督ですので、
やっぱりイケてる監督ははずれが無い!

脱線しついでに、もう1つ小ネタを。
以前ミュージックステーションでこの「シシカバブー」の演奏があったとき、まったく同じ映像演出でした。
せっかくなら違う演出でチャレンジしてほしかったと思うのと、MVと同じ演出なら番場さんにも何らかの使用料的なものが発生したのだろうか...と思った次第です。(契約によるかもしれませんが)

なお、作詞と作曲の著作権印税に加えて、MVの映像に対しても著作権印税があってもいいと思います。
作詞作曲に比べて映像については携わる方が多いので、その点では実際の運用が難しいのは想像できますが、そうすることで映像作家の権利も守られ、より良質のMVが作られる基盤になると考えています。

さて、話を戻して2つ目の「劇場型MV」を紹介しましょう。
サカナクションの「僕と花」です。

独特な暗い雰囲気の中で劇が進行していくMVです。
しかし、最初からこのMVの世界に引き込まれ、どんどんその世界観に侵食されていくような感があります。
素晴らしいMVです。

サカナクションは以前の回で「ネイティブダンサー」を紹介しましたが、良質と言うか異質なMVが多く、楽曲だけでなくMVでもこだわりの高さが感じられます。

このMVは、まさしく「劇場型MV」そのものです。
最初から最後まで劇が繰り広げられ、「劇=MV」という感すらあります。
しかも、サカナクションのリーダーの山口一郎さんが主役で登場するところも特徴的です。

上で紹介したゆずの「シシカバブー」とは対照的です。
「シシカバブー」は劇場型MVではあるもののバランス勝負で作られていますが、この「僕と花」は徹底的に「劇」にこだわっています。
劇の主役の「僕」はサカナクションのリーダーの山口一郎さんで、助演の「花」はダンサーでもあり振付師でもあるホナガヨウコさん。

そして、カット割りが基本なく長回しの劇として仕立てられています。
一部遠近法を利用したトリックアートならぬトリック動画の場面は差し込まれていますが、基本は主人公の僕とサブキャラの花との関係を描いた「演劇」そのものとなり、画面も終始左から右に流れる一方通行なのも徹底しています。

今回このnoteの記載を機にネットで調べたところ、このMVは実際の劇場で上演されながら撮影されたものということが分かりました。
つまり「劇場型MV」というより「劇場での劇」そのものだったんですね。

しかし、このMVが単なるライブ映像ではないことは観ていただいても分かる通りで、これは企画段階からMV制作の一環として進められたことが容易に想像できます。
これもMVの特筆すべき点で、その意味でもこのMVは様々なチャレンジの結果生まれた記念すべき作品ともいえます。

このMVの監督は山口保幸さん。
山口保幸さん(サカナクションのリーダーも山口さんですが)も数多くのMV制作を手掛ける監督で、アイデア勝負で押し出した強い感じではなく、ストーリー系のMVが得意な監督です。
そういう意味では、この「劇場型MV」もストーリー系MVの派生形でもあるのかもしれません。

また脱線しますが、山口保幸さんで驚いたのがゆらゆら帝国の「空洞です」のMVを手掛けられたこと。
山口保幸さんはゆらゆら帝国のMVをいくつか手掛けられていますが、「空洞です」のオファーが来たときどう思われたのか、想像にかたくありません。
「空洞です」の楽曲は、楽曲自体で完結する世界があり、このMVを制作するのは恐怖以外の何物でもなかったのではないかと思われます。
しかし、山口保幸さんは手掛け、無事MV制作を完遂されました。
本当に「お疲れさまでした」とお伝えしたいほどです。

さて、今回は「劇場型MV」として2つのMVをお届けしました。
PCのモニターではなく大画面で観ていただければより楽しんでいただけるので、ぜひネット対応のテレビで観ていただくかPCを大画面TVに接続して観てみてください。

ではまた次回に。

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