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急に逝った優しいお父さん。その儚い人生に思いを馳せて

優しいお父さん

60代のトラックの運転手Bさん。
Bさんは仕事が大好き。この仕事に就いて40年、お客様への思いやりでもって大切な荷物を正確に運ぶべく仕事に尽くし、取引先からの信頼も篤く、誇りを持ってたらしい。
子どもさんは叱られた記憶がないという優しいお父さん。嫁いだ娘は「誰かに助けて欲しいと思った時、父が真っ先に思い浮かぶ。実は夫より父に頼む方が言いやすいんです」と打ち明けた。
趣味は特になく、強いて言えば仕事と家族との時間が趣味。働いて得たお金を家族のために使うのが何よりの喜びだった。

「美味しいもの食べに行こう」
「〇〇買ってきたから食べにおいで」

中学生になった孫を筆頭に、可愛い孫たちの成長が何よりの喜びだった。

体調の異変

高齢になってきたし、半年後の誕生日に一旦仕事に区切りをつけるよう家族は促していた。実際、最近ちょっと胸が苦しくなる症状もあり、心配する家族が病院に行ってほしいと告げた。
家族に言われ行こうと決心したBさん。ただ、決まった仕事を動かすのは性格的に出来ない。
次の休みに受診する約束をし、診察の予約も行いその日までは仕事に向かった。

その受診日の三日前に悲劇は起きた。

仕事中に急な心不全が起きてしまったのだ。大好きな仕事中に起きた悲劇。ハンドルを握ったままBさんは帰らぬ人となった。

家族の思い

「心臓発作で亡くなったんです」
ご遺族は最初にそう言われた。状況を伺うと運転中だったので
「事故にはならなかったのですか?」と尋ねた。
「ご迷惑をかけてしまった方はいて、とても心苦しいんですけど…。でもドライブレコーダーに胸に手を当てて苦しむ父が映っていたんです」
ご遺族は「痛みを聞いた時にすぐにでも病院連れて行っていれば…」との後悔の言葉も続けた。

ご依頼の手紙には、遺族が言われるように

「仕事が大好き。かつては子ども命、今は孫も命の優しいおじいちゃん。心不全で突然のお別れになった」
という趣旨で文章化した。

愛情深いお父さんの人生の閉じ方に、相当悲しい思いをしていると感じた。それを私に訴えているようにも思えた。「事故の原因は心不全だった」ということも文章に入れた方がいいと感じた。

最後の記録

参考のため、この事故を伝えるニュースを探して読んだ。

中型トラックが中央車線をはみ出し、乗用車など車3台と衝突した。
この事故で中トラックを運転していたBさんの死亡が搬送先の病院で確認された。3人が軽いけがをした。
警察は事故の詳しい原因を調べている。

このニュースを見ただけでは、Bさんが心不全を起こしたことは伝わらない。(中には「Bさんが運転中に意識を失っていた可能性もあるとみて」と記載のあるニュースもあった)
本人はもう何も言えないのだが、ドライブレコーダーが社内の様子を録画していたらしく、胸を押させて苦しそうにしているBさんが映っていたのが、家族の心の支えになったと思う。

ものの捉え方

私はBさんの立場からの話を聞いたから、Bさんに焦点を当てた捉え方をした。でも、このニュースをただ新聞で読むだけだったら…と考えた。

高齢のドライバーが事故を起こしたんだ
60代でもそういうことがあるんだ
私も気をつけなきゃな

って思ったんじゃないかな。

当事者が複数人いると、それぞれに思いがきっとある。
勧善懲悪の精神はでとても素晴らしいのだけれど、人を苦しめることもある。真相をどこまで突き止めているのかも分からない。

少なくとも私自身は、他の側面もあることを意識して日常に起こることに備えたい。

私がTwitterで固定しているツイートは、6年前に当時小6の息子が「卒業記念の名言」で書いた書についてのものだ。

「イスラムの黒い覆面の悪い人も誰かに愛されてるんだよ」という家の会話からこの名言思いついたらしい。

これを固定にしている自分の考えが、今日思ったBさんの家族との会話から感じたものと何か通じている気がした。


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