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『犯罪を契機に加害者に寄りそって社会問題を解決しよう』言説のルーツを紹介しておこう


「加害者への寄りそい」という謎の風潮

昨今、犯罪者だろうとなんだろうと「被害者感のある者」に寄りそうことが道徳的価値になってしまっている人たちがいるようである。

上のポストは、下記の事件の容疑者に関するポストに対する意見である。


しばらく前から、犯罪に関して、「かわいそう割引」「マイノリティ割引」が横行しているような気がしないでもない。

あたかも「寄り添われる権利」をもったものは犯罪においても批判されにくなっているような感じである。
 
ただ最近は、そういった風潮に不快感を持つ人もちらほら出てきてはいるといったところだろう。

 

やり始めたのは教育学者

もう結論からいってしまおう。

『犯罪を契機に加害者に寄りそって社会問題を解決しよう』をやりだしたのは、教育学者っすね。

都市部での校内暴力多発期に、「子どもたちの心の闇」がいわれはじめ、その延長線上で、

「暴力ふくめた学校不適応は大人社会の映し鏡」
「加害児童・生徒は社会の被害者、寄り添われるべきは彼ら」

とやったのだ。

そして全教系の教育学者はそれに乗っかった。

現在でも「いじめ加害者にこそよりそうべき」の発想は教育方面では根強いようで、時々ポロッとでてきてはSNSで批判を浴びたりする。アレの元である。

 

んで、その動きが、1980年台半ば以降少し大きくなる。法務省や労働省にもいっちょかみしてくる。

上記雑誌の学会は、集団主義生活指導の「全国生活指導研究協議会」の子さんメンバーが、教育学以外のジャンルの学者や法務官僚等に呼びかけてたちあげられた。

ただ、そこからしばらくは大きな動きはなかった…。
「寄り添われるべき被害者たる犯罪者」のモデルとなるような人物がいなかっただけだろう。

「マジメな若い子が苦境にあって一転して」…というようなモデルでもないと、なかなか説得力は持ちえない。

オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こすも、あれは、さすがに異様すぎてそういうモデルにハメるのには無理があったのだろう。

ごく一部の思想界隈でのみ、そういう文脈が出てくるには出てくる。

とにかく、そういうベースがある。

 

やまゆり園事件(相模原障害者施設殺傷事件)以降

2016年の神奈川県の障害者施設での大量殺人事件。

この事件からしばらくして、『犯罪を契機に加害者に寄りそって社会問題を解決しよう』といったタイプの言説が目立ってきた。

「当事者に寄りそおう」を主張する福祉関係者や、その周辺に跋扈している反貧困活動家や現代思想屋さん達が主な発信源である。

犯人に接見しにいってのレポートをした人物もいる。
伴走型支援の旗手である奥田知志氏だ。これはNHKで放送にも乗っかっている(下記)

合言葉は「この事件を社会の問題として」

かくて「この事件を社会の問題として加害者(=社会の被害者)に寄り添って考えるべき」は、マスメディアと現代思想屋の「テンプレート」と化した。

 

そして安倍晋三元首相暗殺事件

そして、安倍晋三元首相暗殺事件において、このテンプレートがマスメディアで大活躍することになる。

暗殺犯を「問題のある社会の被害者」として扱う言説が大量に垂れ流された。

だが、社会に問題があっても、多くの人間は、極端な加害は起こさないことがひとつ。
そしてもう一つ「寄り添って考えろ」という言説自体が「寄り添おうとする側」を道徳的優位と既定し「寄り添いたくない側」をその劣位とする、ヒエラルキーの形成に働くからだ。

解決を必要とする社会的問題も、心情的な「寄り添い」で解決できないことが殆どである。

行きすぎた当事者(B)中心主義

最近は「当事者に寄りそうべき」を錦の御旗にして、「それは差別的だ」の言いがかりをつけて、ごく当たり前の言説を糾弾する人達も少なくない。

特に「マイノリティ当事者運動」を標榜する界隈ではそれが当たり前といった風情も見受けられる。

汎用の多様性主張マイノリティ被害者仕様のテンプレートを「当事者研究」の学者先生達が作っているので、安心して主張できるのかもしれない。 

ここまでくると「なんでもマイクロアグレッション」である。

LGBT活動家の事件から

2024年6月に発覚した、LGBT団体の事務局長だった男性が、覚せい剤取締法違反で逮捕された事件後の、同団体の代表のコメントや、同種の団体のコメントも「マイノリティは寄り添われるべき者」といったスタンスである。


「寄り添われるべき者」と「寄り添うべき者」が固定化した社会は、階層固定化の搾取社会ではなかろうかと思うが…


とりあえず今日も叫んでおこう。
気を付けよう、甘い言葉と当事者B


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