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2024春アニメ感想まとめ

2024春アニメの感想をランキング形式でまとめています。


<32位> 終末トレインどこへいく?

評価:B-

お気に入りキャラ:星撫子

もはや「水島努監督作品」として既視感すら覚えてしまったのは自分だけではあるまい。「ああ、今回は”こっち系”なのね」と即座に思い知らされるその内容はやはり意味不明かつ難解であり、もはやそこにある種の美学すら感じてしまった。そして同時に、こうした定期的な”ガス抜き”が監督には必要なのかなとも思わざるを得ない。これだけ好き放題に述べても”見ない”という選択肢は微塵もあり得ない辺り、自分もかなり毒されているなと感じてしまうが、安定のまくし立てるような早口かつ間を置かない台詞回しという”水島流奥義”を目の当たりにして、今回も監督がストップウォッチ片手に演出家をやり込めたんだろうなとか想像してボンヤリと画面を眺めていた。一方、こうした独特の感性丸出しの作品が許容される土壌ができていること自体は誇るべきことであり、間違っても面白かったとは言えないものの、アニメ市場の習熟をしみじみと実感できた次第である。


<31位> ワンルーム、日当たり普通、天使つき。

評価:B

お気に入りキャラ:和泉のえる

視聴作品の取捨選択段階では常にボーダーライン付近に属していたが、サブヒロインののえる(雪女)が世間知らず故の勢いで主人公にグイグイと(友達という体で)迫ってくるのが可愛かったので、結局最後まで視聴してしまった。反面、その真面目で一途で鈍感な部分が全てマイナスに働いていて只々お人好しなことだけが取柄の主人公には欠片も魅力を感じなかったが、せめてもう少しサブヒロインにもグラついてくれないと先の展開に期待のしようがない。サブヒロインについては、こうして”主人公は気付いてないけど主人公のことが好き”という描写しか選択肢を用意しないくせに、人数だけはやたらと増やすという指針には遺憾の意を表する次第であり、作者には今後の展開での方向転換を切に所望する。なお、メインヒロイン(天使)のとわがほぼほぼ主人公宅に籠っているのはなんとも羨まけしからんが、そこに闇を感じてしまうのはむしろ自然だと思うんだ…。


<30位> 怪異と乙女と神隠し

評価:B

お気に入りキャラ:緒川菫子すみれこ

「でっっっ!!!!!」というファーストインパクトが全て(視聴した人には分かるかと笑)。怪異・オカルト要素が主軸のシナリオについては以前放送していた『ダークギャザリング』に軍配が上がる感じだったので、いっそエロ・ラブコメ方面に振り切って欲しかったのだが、TV放送の限界なのかそこまで滾る描写は見られず。原作はもっとエロいのかしら?教えてエロい人。菫子さんの胸は巨乳か奇乳かという議論は当然沸き起こると思われるが、自分は十分巨乳の範疇に収まると思っている(断言)。そもそも2次元表現における巨乳と奇乳の境目という概念が極めて個々人の主観的なものなので他人にとやかく言うことではないと思うが、つまるところ大きくて魅力的だと思えるところまでが巨乳のボーダーラインよね(長々と失礼しました)。そんなこんなで、割と怪異・オカルト要素そっちのけで乙女ヒロインたちの良好なキャラデザを愛でるのに終始してしまった感は否めないところである。


<29位> アストロノオト

評価:B

お気に入りキャラ:上町葵

管理人さんが美人のミボー人(≠未亡人)という無理矢理な設定然り、一癖も二癖もあるアパートの住民たちとのドタバタな交流劇然り、『めぞん一刻』へのリスペクト(と言っておこう…)に溢れ過ぎている作品。主人公が”5号室”の住人なのもニヤリだが、注目すべきは推しキャラだった葵が”7号室”の住人であったこと。それはつまり、彼女が『めぞん一刻』の七尾こずえのオマージュ的存在であるということで、サブヒロインの宿命を背負うのは既定路線だったのである(ちなみに自分は『めぞん一刻』の推しキャラを聞かれたら”学生時代のこずえ”と答えている。)。どこか懐かしさを感じさせる世界観やキャラデザ、唐突に湧き出る宇宙人要素も高橋留美子作品のエッセンスだと言えなくもないが、あらゆる要素のブラッシュアップは必須だったかと。それこそ、『多田君は恋をしない』における情緒には遠く及ばなかったというのは禁句かもしれないが偽らざる本音である。


<28位> 魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?

評価:B

お気に入りキャラ:シャスティル・リルクヴィスト

魔王と奴隷エルフの初々しい恋愛描写が心地よく、シナリオ面でも適度なシリアス要素がスパイスとして効果的に働いており、色々とバランス感覚に優れた作品。ただ、仕方のないことではあるのだが、中盤以降になるとザガンやネフィの孤独で過酷な半生に由来する平穏や幸福への戸惑いという一番の魅力だった要素が薄れてしまい、只のイチャラブコメに近くなってしまったのは残念。作者もそれを自覚しているのか、聖騎士長という立場と教会の政治に振り回されるシャスティルや天涯孤独の身となった竜の少女フォルを登場させて適宜シリアス要素の補充を試みているのだが、ここから大きく跳ねる展開を迎えることは難しそうで作品としてのピークは序盤で終わってしまった感は否めない。本格的にシャスティルがザガンとネフィの間に三角関係として割って入るならその限りではないが、おそらくそれは作者の望む方向性ではないだろうから可能性は低そうだなあ…。


<27位> 魔法科高校の劣等生

評価:B+

お気に入りキャラ:司波達也

達也たちも進級していよいよ二年生に…ってまだ作中でそれだけしか時間経っていなかったんかいって思わず心の中でツッコんでしまったのは自分だけだろうか。ここまで来たらもう誰も達也には追い付けなくなっており、後輩の七宝琢磨は見た目からして某ワカメに酷似しておりその立場が危ぶまれたが、期待どおりの分からせられっぷり(←ややこしい)を発揮し、”クリムゾン・プリンス”こと一条将輝はそれなりに出番があったのに公式サイトのキャラ紹介では存在が抹消されているという不遇ぶり(なお、彼よりよほど出番が少なかった十文字克人は紹介あり)。ただし、”師匠”こと九重八雲だけは唯一達也の裏をかけそうな特異な能力を持っており個人的に別格扱い。そして、時折(常に?)挟まれるシスコン&ブラコン要素のキレは相変わらずであり、深雪のジェラシーに達也が真顔で対応する一連のやり取りが本作品の一番の見所であるのは終始一貫した感想である。


<26位> この素晴らしい世界に祝福を!3

評価:B+

お気に入りキャラ:ダクネス

もはや作画や演出に「このすば構文」みたいなものが確立されているのは立派。特に作画については変に小綺麗に整っているよりも適度に崩れているのがかえって心地よく、これはもはや唯一無二の個性であり財産でもある。各キャラの挙動は相変わらず面白いのだが、前半の王女のアイリス関連、後半のダクネスの結婚騒動共にシナリオ面は正直イマイチ。ここに来てカズマにおいてはめぐみんとダクネスからの好意を自覚したムーブが顕著になったのは概ね是としたいのだが、それなら需要の無い男のツンデレ描写よりもクズマやゲスマと罵られようとも某あたるのように調子に乗ったりどちらを選ぶか真剣に迷ったりというような露骨なラブコメ描写をもっと見てみたかった(カズマのイケボはギャグ描写として非常に良き)。とはいえ、カズマなりの誠実さは随所に垣間見えたので、これを人間性の成長と取るか芸人としての劣化と取るかは視聴者に委ねられるだろう。


<25位> 時光代理人-LINK CLICK-2

評価:B+

お気に入りキャラ:リン/喬苓チャオ・リン

中国のスタジオにより制作された人気作品の2期。ライバル的目線はもちろんあるが、これだけ「威信」とか「本気」といった言葉が思わず浮かんでくるような作風であるなら、こちらも姿勢を正して視聴せざるを得ない。韓国の人気イラストレーター原案によるキャラデザはシンプルながらも洗練されており、特に女性キャラが非常に魅力的(おそらく真骨頂は男性キャラの方だと思われるが)。シナリオ構成も相変わらずの質の高さであったが、2期は全編通じた長編ストーリーとなっており、1期のように単話形式でホロリと涙腺に来る話を見せてくれる方が個人的には好みだった。戦闘シーンはキレキレの一言であり、地味なモブ顔のおっちゃんキャラまでめちゃくちゃ良い動きでスタイリッシュに戦っているのにはもはやシュールさすら感じてしまった笑 本作品についてはあからさまに日本に寄せた作品ではないものの、それも踏まえた秀作が生まれる日も近いのかもしれない。


<24位> 怪獣8号

評価:B+

お気に入りキャラ:四ノ宮キコル

作画やシナリオにおけるカロリーの高さがビンビンと伝わってくる優等生作品。人類と巨大な怪獣との戦いってつまりはこういう側面もあるよなあと思わされる「そこに力を入れるのかよ!」と思わずツッコミたくなるような序盤の描写は拘りに溢れ、怪獣のウ○コの処理にまで言及したのは見事。実は累計発行部数が1,400万部超の作品とのことで、(初期投資の潤沢さという観点からも)制作陣の覚悟と意気込みは十分伝わってくるのだが、要は『進撃の巨人』の亜種的作品だという印象は拭えず、二番煎じ、三番煎じも上等のラブコメとは異なりあえてこっちまで無理に見る必要もないのかもと無情にも思ってしまった(ちなみに『進撃の巨人』の累計発行部数は1億4,000万部超)。そうした影響もあってか、前述したカロリーの高さの割には気分が盛り上がって来ず、怪獣好きでない層にまで広く対象を広げたアニメ化による宣伝効果は薄かったと言えるのかもしれない。


<23位> 鬼滅の刃 柱稽古編

評価:A-

お気に入りキャラ:栗花落つゆりカナヲ

原作未読勢なので「柱稽古編」とはなんぞやと思っていたが、まさかここまで終始一貫して各柱たちに稽古をつけてもらうだけのストーリーだとは思わなかった笑 実はバトルものにおける修行シーンは相当好きな自分であるが(『H×H』の「G・I編」におけるビスケとの修行シーンなどは最の高)、それはその過程において主人公たちがメキメキと力を付けているのが実感できて、読者(視聴者)としても新たな要素(『H×H』なら念の応用技である「周」「流」「硬」など)が示されて設定の深掘りがなされるといった楽しみがあってナンボと言ってよい。なので、今回の「柱稽古編」については、ひたすらに基礎能力の向上を目指す地味な修行が大半であり、かつ炭治郎が新たな呼吸や技を身に付けたわけでもないので、厳しい言い方をすれば幕間でやれという他ないものであったのは非常に残念であった。ここにも実は伏線があってとかだったら後から謝るけど、どうなのかなあ…。


<22位> 夜のクラゲは泳げない

評価:A-

お気に入りキャラ:高梨・キム・アヌーク・めい

現代のSNS環境ならではのシナリオが光る新作オリジナルアニメ。とはいえ、例えば学校生活で挫折したキウイが新たな自己表現の手段としてVtuberを選んだというロジカルな理屈や4人が「JELEE」としてのアーティスト活動でフォロワー10万人を目指すという目標自体は理解できるものの、自分のようなおっさん世代にとっては親和性は感じにくいというのが本音である(ただし、みー子のシナリオは非常に良かった)。特に終盤のイベントにおいて、花音かのが同時接続者数5万人を突破したことをもってドームを満員にしたかのごとく喜んでいたが、親世代の雪音がすんなりとそれに共感してくれるのかには疑問が残った。アイドルになるというような極端な手段でなくともSNS上で誰しもが自由に自己表現できる時代において、有名になる手段はより身近になっているが、逆にそれがアニメ作品における”非日常感”を損ねる要素にもなっていたというのは少数派の意見だろうか。


<21位> じいさんばあさん若返る

評価:A-

お気に入りキャラ:詩織

(元)イケメンと(元)美人だからこそ映えるシナリオだとは思うけど、孫がじいちゃんばあちゃんを素直に慕っている描写は心があったかくなってやはり良き。本作品は現代の高齢化社会に対するアンチテーゼであり…などと小難しいことを述べる気はさらさらないが、老いを粛々と受け入れてきた老夫婦が思いかけず若い肉体を取り戻してしまい、困惑しながらもこの奇跡の恩恵にあやかって時代に許されなかったかつての小さな望みを叶えていく過程にこそ、本作品の真骨頂が詰まっている。そこに確かに存在するのはこれまでの人生で培われた”老夫婦の絆”であり、その下地があるからこそこんなにも叙情的かつコミカルな感慨を自分は得られたのだろう。孫世代のラブコメ要素も楽しく、未乃と将太の初々しいやり取りにはニンマリであるし、ツンデレ風味の詩織の一挙手一投足にはさらにニンマリ。総じて、派手さはないが1クール作品として良くまとまった佳作であった。


<20位> 月が導く異世界道中 第二幕

評価:A-

お気に入りキャラ:巴 澪

魔物によって怪物へと姿を変えられたモブキャラやネームドキャラたちが容赦なく死亡する展開には少々驚いたが、主人公の真が無双する展開は変わらず…というかより盤石なものとなり、良くも悪くも安心して見ていられた。ここに来て相手に”分からせる”展開が目立つのは気のせいではないと思うが、力を増した真が段々と傲慢になってきているのはひしひしと感じられる。今のところは「俺TUEEE」の爽快感の範疇に収まっているが、今後本格的にダークヒーロー化しないか心配なところではある。そして今期の重大イベントだったのが、女神の制約でヒューマンとは会話ができなかった真が遂にその制約から解放されたこと。教え子たちの反応もなるほどなと思わされたし、これからは事あるごとに相手の反応を楽しめるのは嬉しい。本作品のスマホゲーも公開されたようだが、各キャラは魅力的なので初動は悪くはなさそう。とはいえ、今更プレイはしないだろうなあ…。


<19位> ささやくように恋を唄う

評価:A-

お気に入りキャラ:水口未希

「コミック百合姫」で連載中だけあって、ガチ恋の百合が堪能できる作品。別に男性が存在しない世界というわけではなさそうだが、当たり前のように百合が周囲に受け入れられる世界っていうのもなんか凄いなと思ってしまうのは考えが古いのかしら…?天然たらしの後輩に先輩が惚れ込んでしまって…というのは至極解釈一致だったわけだが、『やが君』然り本当に刺さるのって自分はそちら(=先輩)側の描写なのよね。そして、主人公の親友が可愛い定期。ローレライ結成の経緯然り、登場人物の相関関係は一見複雑なようでとても分かりやすく、変に仄めかしを多用して翻弄されるよりもよほど好印象だった。ただ、批判を覚悟で言うなら相関関係上の重要人物である亜季をそこまで魅力的に感じず、志帆が一目惚れだったというのもあまり感情移入はできなかった(あくまでも個人的な感想)。ストーリーは良かっただけに2回も総集編を挟んでの放送延期は実に残念。


<18位> うる星やつら

評価:A

お気に入りキャラ:三宅しのぶ

全4クールに渡ってのフルリメイクも無事完結。正直ストーリーとしては今期がワーストだったので評価は控えめだが、改めて高橋留美子先生が本作を『めぞん一刻』と同時連載していたという事実には驚愕を禁じ得ない。次は『らんま1/2』のリメイクとのことだが、願わくば個人的に殿堂入りの『めぞん一刻』のリメイクを本スタッフで(←ここ重要)実現して欲しい。今期は満を持して「ラムのラブソング」がOPで流れることを大いに期待していたがそれは遂に叶わず。アレンジされたBGMとしては使用されていたけど、やはり大人の事情があったんだろうか…。また、推しキャラのしのぶが因幡とほぼ固定カップリングのようになってしまっていたのも小さくないマイナス点で、前期の自分の高評価はあくまでも「あたしの」要素の恩恵が大きかったのだと実感。世間の評価がどうあれ、個人的には全編通じて良リメイクであったとスタッフの方々を盛大に労いたい。おつかれさまでした。


<17位> 僕のヒーローアカデミア

評価:A

お気に入りキャラ:トガヒミコ

前期のランキング記事では残念ながら最下位となってしまった『アンデッドアンラック』であるが、同様に少年漫画すぎる作風でありながら、本作品は比較的素直に受け入れられてしまう要員の一つに、”世間の常識からは外れてしまうもの”の描き方があるんだと思う。それが本作品については「ヴィラン」であり、前者については「否定者」であるわけであるが、つまりそれに闇に当てるか光を当てるかという観点から根本的に異なっているわけである。今期の「世界が私を拒むなら私も世界を拒む」というトガヒミコの言葉にもあったように、「ヴィラン」は「否定”される”者」である。出久好きな人からも遂に”その言葉”を聞けなかったトガヒミコ、父親の愛情を欲しながらも見捨てられてしまった荼毘など、そうした立場に置かれた者たちの心の歪みをきちんと真正面から描けていることに物語としての情緒を実感するのであり、大人としても見応えを感じる部分になっているのだろう。


<16位> 夜桜さんちの大作戦

評価:A

お気に入りキャラ:夜桜四怨 夜桜六美

とにもかくにもキャラデザが素晴らしく、それだけでご飯が何杯でも食べられそう。日5枠として『響け!ユーフォニアム』と放送時間が丸被りだったのは制作陣にとっても誤算だったのではと推測するが、内容的にはしっかりとしていたので録画して直後に見てくれた人はきっと大勢いただろう(さすがにリアルタイム勢は少なかったと思われるが…)。当初は次女の四怨姉さんが自分好みのダルさ加減でお気に入りだったのだが、昨今ではむしろ珍しいと感じてしまうほど素直に主人公を慕ってくれる六美が徐々に可愛くて仕方が無くなり、長男の凶一郎の気持ちがちょっと分かってしまったぐらい笑 六美から太陽へ向けられる感情って、なんていうか「そういう設定だから」慕ってくれてるんじゃなくて、心からこの人が好きっていう想いがダイレクトに伝わってくる感じがして本当に良き。掛け値なしに良い夫婦なので、羨ましさよりも祝福したい気持ちの方が上回ってしまった。


<15位> 転生したらスライムだった件

評価:A

お気に入りキャラ:シュナ

遂に魔王となったリムルであるが、陣営としての基盤は盤石であり、あらゆる敵意を跳ね返しつつ人と魔族が共存できる理想の国家を目指していくこととなる。その中で、リムルの理想が極めて良識的なものである故に悪目立ちはしにくいが、そもそも自分の理想を周囲に押しつけることができること自体、力を持つからこそできることであり、その傲慢さをリムル自身もほとんど自覚せず、また、彼(?)を強く諫める存在も周りにはいないため、もし気付かずに間違った方向に進んでしまったら…という懸念を感じてしまうのは自分だけだろうか。また、ストーリーの政治的要素として時折挟まれる幹部の会議シーンについて、アニメとしては動きが少なくなってしまうので嫌う人もいるようだが、自分は肯定派。こういうシーンにこそ忘れられがちな元サラリーマンの転生者であるリムルの本領が詰まっており、社会人としてはむしろ必然性すら感じてしまうのは少数派かな…笑


<14位> 狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF

評価:A

お気に入りキャラ:ホロ

2008年に1期、2009年に2期が放送された作品のリメイク版。ちなみに自分は初見である。主人公のロレンス、ヒロインのホロ共に当時のキャストに変更は無かったようで、それならむしろそのまま続きを制作してくれるのを望んでいたファンも多かったのかもしれない。初見の自分はまっさらな気持ちで視聴できて良かったのだが、とにかくホロ役の小清水亜美さんの演技が耳に贅沢に過ぎ、本作品は彼女のわっち・くりゃれ口調を存分に堪能するための作品だと個人的には思っている。そして、定型テンプレ定石セオリーに浸食された(あるいはあえてそれを逆手に取るような)作品に溢れる昨今のラノベ市場において、それに縛られていなかった時代における”作者の美学やセンス”がダイレクトに伝わってくるのがとても良い。言い方を変えれば、”格式が高い”と思わず表現したくなる感じか。こうした感覚が味わえる作品は貴重なので、原作ファンや前作視聴者とも是非意見を交わしてみたい。


<13位> 戦隊大失格

評価:A

お気に入りキャラ:錫切夢子

『五等分の花嫁』の春場ねぎ先生による完全新作。前期も名前を挙げたような気がするが、中々に多芸なお方である。当初はヒット作を生み出した後にありがちな「実はこういうのがやりたかった」という思いが図らずも伝わってくる本来の適性とは違う方向に行ってしまった作品だと生意気にも感じていたが、話が進むうちに単なる戦隊ものにはとどまらない練り込まれた設定とどちらが正義でどちらが悪か分からない疑心暗鬼感満載なシナリオに素直に感心してしまい、評価を大幅に見直すことに。そして、さすがの春場ねぎ先生らしく女性キャラは悉く魅力的であり、推しキャラに挙げた夢子も迷いに迷った末の選択である。”適正”と”興味”は一致するとは限らないというのは『H×H』の念修行でも学んだことであるが、やはり春場ねぎ作品にはラブコメ成分をどうしても求めたくなってしまう。だが、引き出しを増やすにはこうした”第二の選択”もきっと必要なのだろう。


<12位> ゆるキャン△ SEASON3

評価:A

お気に入りキャラ:土岐綾乃

これまでとは制作会社・スタッフが一新されて不安しかなかったが蓋を開けて見れば意外と悪くは…なんて言うとでも思ったかい?もはやテイストが確立されているので作品そのものの魅力までが大きく損なわれはしなかったが、「絶対に前のキャラデザの方が良かった」とだけは断言させてもらう(特にしまりん)。別に前の絵柄に慣れているからとかじゃなく、今後のアニメグッズの売上は確実に落ちるんじゃないかなあ…。そんな中で、推しキャラのアヤちゃんは”比較的”キャラデザ変更の影響が少なく、タイトルロゴにも表れているように間違いなく3期の主役であった。元々なでしこの地元の友人だったけど、友人の友人という繋がりからしまりんとツーリングで意気投合して新たな関係性が築かれるのってなんかいいよね。本作品の人間関係における距離感の描写の秀逸さは今更だけど、こうした”友人の友人”という空気感まできちんと描写できるのは天晴れという他ない。


<11位> 響け!ユーフォニアム3

評価:A+

お気に入りキャラ:久石奏

正直、本作品については語りたいことが多すぎるので、後日異なる形式での記事の投稿お気持ち表明も検討中である。一つ確かに言えることは、「山田尚子」という傑物が本作品(及び京アニ)から離れたことの影響は計り知れず、本作品においてもそれは如実に表れたという事実である。3期もとい3年生編では作者自身も”久美子の物語”と原作小説のあとがきで述べていたように、これまでは部員間の揉め事アレコレに外側から関わっていたに過ぎなかった久美子が、黒江真由裏ボスの登場により満を持して”当事者”となったわけであるが、これは一人称視点の地の文による心情描写がしやすい原作小説でこそ真価を発揮するシナリオである。これをアニメ作品として昇華させるのは相当な難題であるし、だからこそ山田尚子氏には演出家…もっと欲を言えば監督として本作品の集大成グランドフィナーレへの舵取りをして欲しかった。”久美子編”と”真由編”の2部作による3年生編のリメイク、切にお待ちしております。

【第12話における原作の改変について】

この場をお借りして自分の考えをば。作者も「アニメはアニメ、小説は小説として一作品として違った味を楽しんで頂ければ…!」と述べていたが、逆に言えば原作では言わば無難な着地点に収まったからこそ許された改変であったかと。自分としては、原作が存在する以上どちらが正史かという議論は既に成り立たないとの認識であるが、好みで語るとしてもハッキリと原作派である。よしんばアニメのルートを許容するとしても、指導者としての責任の放棄としか思えない再オーディションの実施及びその方法、そして演出は非難を免れ得ないものであり、特に奏、秀一、緑輝が明らかに久美子の演奏であると気付いた上で挙手をした描写は最悪の一言であるし、奏者の麗奈にまで票を与えたことには同情を禁じ得ない。これは久美子の高校生離れした屈強な精神に頼り切ったシナリオであり、ご都合主義を嫌って却ってそれを地で行く結果になったといえるのではないだろうか。


<10位> ガールズバンドクライ

評価:A+

お気に入りキャラ:安和あわすばる

おそらく自分は世間の盛り上がりほどには本作品を素直に楽しめていない人間の一人なのだろう。それは、3DCGによるガールズバンド作品という点において、『バンドリ』もとい「It's MyGO!!!!!」を意識せざるを得なかったという1点に尽きるのだが、体感的な世間の盛り上がりの格差には正直戸惑いを隠せなかった。思うに、本作品はアニメファン全般に広く認知されたのに対し、「It's MyGO!!!!!」はあくまでもシリーズファンの中での盛り上がりに留まった感があり、それをなんとも口惜しく感じてしまったのである。自分は『バンドリ』のシリーズを通じたファンであるが、贔屓目抜きにしてもセルルックの技術、楽曲・シナリオの質など含め、総合的に「It's MyGO!!!!!」が上回っていたと思っている。このような”二番煎じ感”を以てしても本作品が優秀な作品であったことは認めざるを得ないが、本作品を評価するなら「It's MyGO!!!!!」も見てからにして欲しい。それが今の偽らざる心境である。


<9位> ダンジョン飯

評価:A+

お気に入りキャラ:ファリン

(一応の)ファリン救出後の描写はややもすれば引き延ばしの要素が色濃く感じられるのではと懸念していたが、センシがモンスターの調理に精通していた本当の理由が明らかになったり、ファリンに求婚していたメンバーとして気になっていたシュローの現在が描かれたりとむしろ見応えは増すばかりであり、改めて本作品の設定の深さに感銘を受ける結果に。ライオスやファリンの人格形成の過程を匂わせる過去話然り、徐々に明らかになるチルチャックの素性然り、”冒険者”という職業を選んだ彼(女)らの生き様の描写は実に生々しく熱を帯びたドラマ性を有している。そして、マルシルのパーティーへの信頼と親愛の描写は相変わらず素晴らしく、男性メンバーと同じ部屋に寝たり同衾したりするのも辞さないのには驚いたが見事。そんな中でライオスにはさらにもう一段階含むところがあるのかなと思わせてくれるのも良い描写であり、2期決定の朗報を素直に喜びたい。


<8位> 忘却バッテリー

評価:A+

お気に入りキャラ:要圭(※記憶喪失前)

さすがのMAPPAと言うべきか、おそらくは作画の統括陣に野球経験者がいると思われ、何気ないキャッチボールやバッティングセンターでの動き一つとっても、その躍動感、見ていて気持ちの良いアングル、重心移動や関節の使い方などが悉く一級品で、他の制作会社では太刀打ちできないぐらいとにかく”野球の動き”が真に迫っていたのが素晴らしい。これは野球を理解している分かっている人間の仕事だとビンビンに伝わってくるぜ…。これほどの職人芸を見られるなら今後の野球作品は全てMAPPAに制作して欲しいぐらいで、こと作画面については最高峰の評価を贈りたい。その反面、”知将”と評された要圭の記憶喪失によるアホアホな言動は残念に尽き、もどかしさだけが只々溜まった。その反動もあり、一時的に記憶を取り戻した試合での知将っぷりのカタルシスは凄まじかったが、何とか試合終了までもってくれというチームメイトのドキドキ感には狂おしいぐらい共感してしまった笑


<7位> 死神坊ちゃんと黒メイド

評価:A+

お気に入りキャラ:ヴィオラ

「触れたもの全てを死なせてしまう」という呪いをかけられた貴族の坊ちゃんがメイドのアリスからの触れたいけど触れられない逆セクハラ(?)にドギマギする様を見て楽しむイチャラブコメという体で始まった本作品であるが、こんなにも真面目に呪いの元凶と向き合い皆が幸せになれる大団円を迎えるとは思っていなかった。呪いをかけた張本人である魔女のシャーデーのかつての切ない恋、それが報われなかった故の悲しい選択が改めて描かれ、過去に戻る魔法によって彼女をも救うというシナリオはシリアスの中にも美しさがあり、これまでの全てがここに至るための伏線であったという壮大さも同時に味わうことができた。そして常にその根底にあったのは坊ちゃんの海のように深い優しさであり、アリスはもちろん、母親からの分かりにくい愛情もそれをとっくに見抜いていたのである。ロブにはこれからも元気でいて欲しいけど、最後は妙な緊張感があったな…笑


<6位> アイドルマスター シャイニーカラーズ

評価:A+

お気に入りキャラ:桑山千雪 田中摩美々

ひょっとしたら自分の感想に注目してくれていた人もいたかもだが、結論から言って『ミリアニ』よりも断然こちら派だった。さすがのポリゴン・ピクチュアズだけあって、体型、ダンスモーション、タイミングの違いなどにより各アイドルの個性が明確に表現されており、その点においてはむしろ手描きよりも”あえて感”が強く味わえて画面に釘付けになってしまった。例えばユニットでダンスをしている時も、果穂のように手足の先まで目一杯に使って元気に踊る子がいる一方、凛世りんぜのように控えめに静々と踊る子もいるなど、同じ振付でもこんなにも印象が変わるのかと思わず唸ってしまった。そして、胸の大きさがきちんと描き分けられていたのはエラい(イルミネの大中小は分かりやすい…笑)。アイドルの人数は多かったが、無理に個人回を作らず原則ユニット単位でシナリオを構築していたのも好印象で、様々な局面で”正しい”判断ができていた作品だと個人的には評したい。


<5位> 転生貴族、鑑定スキルで成り上がる

評価:A+

お気に入りキャラ:シャーロット・レイス

大括りにすれば本作品もいわゆる「なろう系」なのだろうが、エンタメとして昇華された”鑑定スキル”による人材発掘をメインに据えたシナリオは社会人の身にも中々刺さるものがあり、また、同時に有能な家臣をコレクションしていくという男のロマンも満たされるようで、毎週の放送が楽しみだった。そしてその評価を底上げしているのが元孤児の「ローベントの火焔姫」ことシャーロットの存在であり、今期でもトップクラスにお気に入りのヒロインであった。色白、ジト目、巨乳とキャラデザが自分の性癖にぶっ刺さりであり、自らの美貌を大いに自覚した振舞いも彼女ならその魅力を増すだけであった。初登場時11歳→後に14歳とのことだが、発育が良すぎて実にけしからん限り。本人はアルスさえその気ならという雰囲気ではあったが、後にアルスにリシアという婚約者ができたことからその点は有耶無耶に。アルスは貴族だし男の甲斐性で何とかなりませんかね…(意味深)。


<4位> となりの妖怪さん

評価:A+

お気に入りキャラ:立花百合

この”魂に響く”とでも表現すべき感覚が味わえる作品は貴重である。”お涙頂戴”という言葉は色々なものを台無しにしてしまうけど、本作品の場合は本当に涙腺に来る場面が頻繁に訪れて、感動とはまた一味違う人とあやしの心の絆に浸っていた。比較作品の筆頭であろう『夏目友人帳』との一番の違いは、”人と妖が当たり前のように一緒に暮らしている”という我々の住んでいる世界とは違う常識の存在である。終盤の”境界線崩壊”は正にその部分が焦点となったシナリオであり、並行世界の常識が流れ込んできた結果、妖の存在が希薄になってしまい、彼(女)らは世界から消えかかってしまう。そして、それを繋ぎ止めたのは子供たちの”言霊”の力であり、その世界の人々がいかにそれを”となり”にいるものとして受け入れてきたかの象徴であったのだろう。”生きる歩幅が違う”ことについては今後も掘り下げられていくのだろうが、必ず然るべき姿を描いてくれるはずだ。


<3位> 無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~

評価:S-

お気に入りキャラ:ロキシー・ミグルディア(ただし、自分はエリス派)

ランキング記事のなる早の投稿を目指し、各クール終盤において前倒し気味に作品の感想を執筆することも実は珍しくないのだが、本作品についてはきちんと最終話を視聴するまではそれが叶わなかった。言うまでも無く、ロキシー御神体の本体の件である。本作品のメインヒロインは間違いなくロキシーとエリスの両者であるというのは作者含めた共通認識であると勝手に思っているが、2期ではまさかのシルフィルートに突入し戸惑いを隠せなかったことは否定しない。そんな中で、母ゼニスの救出の過程で再会したロキシー師匠を2人目の妻として迎えるというシナリオは、本来望んでいた方向性とはかなりズレるものの然るべき着地点であったと前向きに捉えたい。男性本位なシナリオであるのは重々承知であるが、本作品のファンの99.9%はきっと男性なので(偏見)、シルフィ聖母の慈愛に今は身を委ねていよう。そして、エピローグ来たる3期でのエリス本妻のチラ見せに興奮度MAXだったのは言うまでもない。


<2位> 変人のサラダボウル

評価:S-

お気に入りキャラ:サラ・ダ・オディン

物語全体の構成としては、異世界の皇女サラ軸&サラの側近の女騎士リヴィア軸のストーリーが交互に織りなされるが、両者とも視聴中は常に笑いが絶えなかった。サラのパートは主人公の惣助の目線を基軸に、言わば利発な姪っ子を可愛がりながら温かく見守るようなアットホームな王道路線、リヴィアのパートは本人は根が真面目で正義感も強いのだが、悪い大人たちから様々な非常識を刷り込まれてロックな人生まっしぐらの邪道路線であり、その対比もまた良い味変に。つまるところ、『はたらく魔王さま!』の最大の魅力である日常パートだけを上手く抽出した感じであり、異世界出身の二人がこちらの世界において妙に馴染みながらもその才覚やカリスマ性を遺憾なく発揮していく様は実に楽しかった。それにしても、またしても岐阜県に新しい聖地ができてしまい近隣県の住民としては羨ましい限り。気軽に行けそうなので、そのうち巡礼にも行ってみようかなあ…。


<1位> オーイ!とんぼ

評価:S

お気に入りキャラ:大井とんぼ

とにかくシナリオが秀逸の一言につき、幼い頃に両親を亡くし、島で祖父に育てられることとなったとんぼの島を愛しこの土地に執着する思いとそこからの卒業を決意するまでのヒューマンドラマ、とんぼが島民お手製のゴルフ場で”遊んで”きたことで培われた自由奔放が過ぎるプレースタイルに元プロゴルファーの五十嵐(と視聴者)が大きな驚きと共に魅了されるというスポーツドラマの二本軸が高次元で融合し、最終話の涙の旅立ちを迎える展開には称賛を禁じ得ない。ゴルフはマネジメントのスポーツとも言われるが、その理詰めの思考回路がシナリオにも存分に生かされており、嗜み程度にはゴルフを齧っている身としては、その難しさと面白さを理解し、何よりもそれを愛するというゴルフという競技にリスペクトを欠かさない作者の姿勢が存分に伝わってきたことも評価を押し上げた。即座の2期も然りであり、遂に”島の外”に出るとんぼの挑戦自由なゴルフが楽しみで仕方がない。


<劇場版5位> 劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:

評価:A

お気に入りキャラ:廣井きくり

まごうことなき総集編なので、内容はさておき制作の意義というそもそも論をば。どんな言葉で言い繕おうとも、総集編を制作する理由の9割は、TVシリーズでは「時間稼ぎ」、映画では「お金稼ぎ」という観点を免れ得るものではないかと。しかし、こうして本作品を履修済の自分のような層がわざわざ劇場に見に行ってしまったのが全てであるし、当日の客層を見ていても下手な新作映画よりもよほど集客率は良かったように思う。かつて盛り上がった作品について、総集編をきっかけとして改めて語り合う機会が得られたというのは、ある意味建設的かつ有意義な行為でもあるし、楽しかった記憶の追体験という要素にもそれなりに満足してしまったのは事実。本来であれば、こうした「お金稼ぎ」に苦渋のボイコットをするなどして厳しい態度を示さなければならないのかもしれないが、オタクのチョロさを再認識Re:する結果となってしまったのは皮肉以外の何物でもないだろう。


<劇場版4位> 大室家 dear friends

評価:A

お気に入りキャラ:古谷向日葵

後編も44分と非常に控えめな上映時間。ただ、内容の密度は十分だったのでそれなりの長さの作品を鑑賞した感覚は味わえた。それに関連して今回改めて気付いたのが、本作品では劇伴に頼らずにキャラたちの会話劇だけで回すシーンが相当の割合を占めていたということ。もちろんこれも大人の事情ありきなのかもしれないが、場のリズムやテンポが会話劇のみに依存するため、川から流れのないプールに変わったかのごとく、体感的な密度と上映時間を増す効果があったのではと推測。ややもすれば無意識に流してしまう要素だけに、これからはその点も意識してみたい。「dear friends」に違わず、やはりというかなんというか、長女の撫子の恋人との関係性に重点が置かれていたが、友人3人に平等に可能性を描きながらもこの中の誰かはガチの反応なんだよな…と思うと妙な生々しさがあった。でも、やっぱり3股疑惑も個人的には捨てきれないんだよなあ…笑


<劇場版3位> トラペジウム

評価:A+

お気に入りキャラ:大河くるみ

アイドル系作品という皮を被った濃厚な人間ドラマ。乃木坂46の一期生が原作を執筆したということでも注目されていたようだが、そのような下駄を履かせる必要は全く無い実力作品であった。一本の映画という限られた尺の中でどのような展開と着地点を見せてくれるのか常に逆算しながらの鑑賞となったが、アイドルになることに執念を燃やす一癖も二癖もある少女が周りを巻き込みながら階段を登りその結末少女時代の終わりを迎える様は、虚構でありながらも登場人物各々の”アイドル”となった己自身との向き合い方を真実として描いていた。そしてそれは、自らそれを望んだのか、あるいは流れに身を任せざるを得なかったのか、その事情は人それぞれだろうが”そこから得られたものが何も無かったはずがない”という原作者の心からのメッセージであり、そこから滲み出たアイドルという存在の”虚構と真実”そして”影と光”は自分の心にもしっかりと爪痕を残したと言えるだろう。


<劇場版2位> デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章

評価:S-

お気に入りキャラ:中川凰蘭おうらん

「後章」の上映時間も120分あり、「前章」と併せて1クールアニメを完走したような気分になった。そこらのTVシリーズのクオリティは優に超過していた実感は多分にあり、こうした”映画である意義”を感じられる作品であれば確実に観客にお金を落としてもらえるビジネスモデルとしてはアリなんだと思う。「終末系」かつ「セカイ系」の要素もより強くなった「後章」であるが、実質的な主人公だった凰蘭(門出かどではヒロイン)の”選んだ世界”が望みどおり訪れたのなら自分はこれがバッドエンドではないし、ビターエンドですらないと思う。そういう意味で、ある種利己的で冷徹な選択をした凰蘭の在り方を自分もありのままに受け入れてしまっているのは異端なのかもしれないが、”君は僕の絶対だから。”という己の信条を貫いた彼女の姿を美しいと思ったのもまた事実である。総じて、”自分が一番後悔しない選択を貫く”という点において一本芯の通った作品であったといえるだろう。


<劇場版1位> ルックバック

評価:S

お気に入りキャラ:藤野(内面) 京本(外面)

本作品を”傑作”だと評するのはあまりにも容易い。ただし、本作品は一本の映画とその鑑賞者の1対1の対話が全てであり、積極的に他人と感想を共有し合うようなものではないとも感じた。そういう意味で、たまたま劇場で隣の席に座っていた人がとあるシーンでしきりに目元を拭い始めた時も、「そういう場面だと決めつけさせないでくれ」と願ってしまったし、それこそ100人いたら100通りの受け取り方があるんだと思う。ダブル主人公である藤野と京本のどちらにより感情移入するかも人それぞれだろうし、どのシーンに最も心が揺さぶられたのかもまた然りであろう。加えて、本作品における劇伴のクオリティと挿入のタイミングは非常に秀逸で、時に大音量で響くその波に飲まれながらも作品の持つ力に圧倒されてしまった。とんでもなく贅沢を言えるなら、劇場のたった一人の観客としてまた鑑賞したい。もう一度言う。本作品を”傑作”だと評するのはあまりにも容易い。


<2024春アニメ総評>

こと今期のTVシリーズにおいては、全体的に「中の上」(A+)から「中の中」(A)までの作品数の厚みが普段よりも潤沢であった反面、”一線を画す”と感じられるような作品(S-以上)は普段よりも少なかったというのが序盤からの一貫した概観である。そのため、普段よりもむしろ視聴作品数自体は微増したのだが、正直なところ少し物足りなさが残ったクールであった。

そしてその要因として、『ガールズバンドクライ』と『響け!ユーフォニアム3』の2作品に触れないわけにはいくまい。前者については、上記の感想でも述べたように「It's MyGO!!!!!」の面影がどうしても頭から離れず、世間で持て囃されている(ように感じられた)本作品について、どうしても反骨精神が芽生えてしまい、真っ直ぐな気持ちで視聴ができなかった自分に責任がある。なお、ここで言うところの”面影”とは、あくまでも「3DCG」による「ガールズバンド作品」という括りが共通している以上、比較対象として意識しないことはできなかったという意味合いであり、けして両者のバンドとしての在り方やシナリオが被っているように感じられたという意味合いではない。そして、それを象徴するかのように、来たる来年の1月25日には「MyGO!!!!!」と「トゲナシトゲアリ」の対バンライブがTOKYO DOME CITY HALLにて開催されるとか。以前の記事でも少し触れたように、自分は『バンドリ』シリーズのファンは一般のアニメファン(「トゲナシトゲアリ」はこっち寄り)とは少し毛色が異なると認識しているので(もちろん自分のようなハイブリッドのオタクも大勢いるだろうけど)、本来の意味での対バンライブに相応しい組み合わせなのではと非常に興味深く感じている。

一方の『響け!ユーフォニアム3』であるが、作中、作外共に今期のドラムメジャー的存在として、常に話題を引っ張っていくだろうというのは分かり切っていたのだが、良くも悪くも現在の京都アニメーションの現状を浮き彫りにする結果となったといえるだろう。言葉を選ばず言えば、「京アニ作品というだけで尊ばれる時代は終わった」というのを改めて実感した次第であり、”作画が繊細で素晴らしい”という以上の価値は現状見い出し辛くなっているというのが正直な実感である(その部分だけで十分お釣りが来る実力派の制作会社であることは否定しないが)。本作品については、シリーズファンとして本ランキング記事では書き切れなかった思いもまだたくさんあるので、後日別記事としての投稿を構想中である。とりあえず、奏がひたすらに可愛かったのだけが救い。これは原作バカ売れだろうなあ…(軽い皮肉を込めて)。

さて、今期の楽曲で一番お気に入りだったのは、『ささやくように恋を唄う』のOP「Follow your arrows」である。

本作品に登場する2つのバンドである「SSGIRLS」と「ローレライ」のボーカルは、いずれも本編の担当声優とは別に専任の歌手が担当している(いわゆる”マクロス方式”)。より本編のキャラと声色が近いと思えるのは「ローレライ」の方なのだが、それはともかく上記楽曲における最の高が過ぎるイントロから始まる疾走感が気持ち良すぎて、あの「トゲナシトゲアリ」を差し置いて、自分の今期で一番お気に入りのバンドは「SSGIRLS」に決定してしまった笑
OP冒頭の映像は作中の学園祭での演奏シーンのように見えるので、ひょっとしたら近年はアイドル系作品やバンド系作品でもなかなか見られないシナリオ内でのOP楽曲(及び映像)の回収が見られるのかなと期待していたが、終盤の第11話、第12話が放送延期となってしまったことで、その解答はお預けになってしまった。

そして今期大いに話題となった「トゲナシトゲアリ」であるが、自分が一番お気に入りだったのは、第5話挿入歌の「視界の隅 朽ちる音」(当時のバンド名は「新川崎(仮)」)である。

「不登校」「脱退」「嘘つき」という各々のTシャツに書かれた言葉も中々にインパクト大だが、単純に楽曲として個人的に頭一つ、いや二つ三つは優に抜きん出ている。作中の演奏シーンでは、最初と最後の仁菜のシャウトも非常に良かった。これぞロックやね。実際に野外ライブで聞けたらさぞ気持ちいいだろうなあ…。

『変人のサラダボウル』のOP「ギフにテッド」、ED「今晩の喧嘩」は両者ともとても良かった。

こうやってキャラが動いている映像を見ていると、改めてカントク先生原案によるキャラ造形は本当に素晴らしく、本作品の個人的な高評価を根底で支えてくれていたことを深く実感する。そして、岐阜要素の押しが強い笑
楽曲については、(タイトルはともかくとして)昨今では逆に珍しく本作品のために書き下ろされたものではなく純粋なタイアップ曲であるようにも思えるが、OP・ED共にいつもの日常における不満なアレコレを緩やかに歌い上げているのが本作品の雰囲気にも絶妙にマッチしていて、これはこれで味があって十分アリだなと。

『となりの妖怪さん』のOP「お化けひまわり」はPVとして最高峰の出来映えであり、本編を見る時間が無い人にも是非これだけは見て欲しいぐらい。

前期から時折番組宣伝のCMでも流れていたけど、その温かな雰囲気に惹かれて放送を楽しみにしていた自分みたいな人間もいるので、その効果は間違いなくあったかと。

『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』のED「アンダンテ」も非常に良かった。個人的には、これがOPでも良かったのになと思っている。

上記の感想本文ではスペースの都合で書き切れなかったけど、本作品のヒロインであるホロは今期でもトップクラスにお気に入りのヒロインの一人であり、主人公のロレンスの野暮で鈍感なところにいちいち拗ねたり嫉妬したりしてくれる様がとても可愛かった。こうやって、好意ありきなんだけどそれを決定的な言葉にまではしなくて、でも可愛く甘えたり些細な我儘や不満をぶつけてきてくれる様をあざとくは感じさせず自然にかつ魅力的に描くのって実はすごく難しいことだと思うので、さすが往年の名作のヒロインだけあるなと勝手に感心してしまった。

そして、純粋な映像面での評価なら今期で一番だったのが、『転生したらスライムだった件』の「開国祭編」のOP「レナセールセレナーデ」である。

本編とは微妙にニュアンスの違う角のとれたポップで柔らかな絵柄が非常に素晴らしく、最初から最後まで賑やかなお祭り感満載で見ていてとても楽しい。なんていうか、自分がOP映像に求めていたものがそのまま凝縮されている感じがして、初見では思わず画面に釘付けになってしまった。

さらに映像面でそれに次ぐ評価だったのが、『夜桜さんちの大作戦』のED「fam!」である。

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』のED「リンク~past and future~」でも見られたこうしたレトロゲームを彷彿とさせるようなドット絵風の作画表現は本当に大好物で、上記の「レナセールセレナーデ」が終盤で登場するまでは間違いなく今期の映像部門の一番は本楽曲になると思っていた。
やはり、本作品のキャラデザは素晴らしいの一言。


そんなこんなで、ここまで読んでくれた方は誠にありがとうございました。色々と実生活も忙しくなりつつありますが、むしろアニメ作品とはそんな忙しい日々を潤してくれる清涼剤として共存共栄していきたいと思っております。気力・体力が続く限りは、これからも本ランキング記事の投稿は続けさせていただく所存ですので、今後ともよろしくお願いいたします。


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