【書評①】起業のエクイティ・ファイナンス/起業前に読んでおくべきファイナンスの本
増島弁護士のベンチャー企業の資金調達方法に関する記事を読んで圧倒的にエクイティに関する知識が足りてないと認識し、この本を手に取ってみました。
内容はちょっと難易度高めなので、本気で起業したい人や融資担当の銀行員やベンチャー支援の士業向けかと。
本の厚さは400ページ超なので今回は1章、2章のまとめです。
資本政策は起業前にちゃんと設計しよう
起業前に資本政策が重要な以下の3つの理由です。
①資本政策はあとからやり直すことが難しい
②創業期が資本政策の知識が一番劣っている
③創業期は株価が低く、少額の資金調達でも大量の株式発行が必要
①資本政策はあとからやり直すことが難しい
取締役は株主総会決議で比較的簡単に解任できますが、株主については、お前気にくわないから株式没収なと言って株式を没収することは基本的にはできません。
これができるのは、取得条項付き株式を発行してる場合のみです。ただし、この場合は株式の買取価値をいくらにするかが問題になります。
②創業期が資本政策の知識が一番劣っている
これは言わずもがなですね。会社のステージが上がって、知識が付いてきた際に過去の資本政策を悔やんでも、あとの祭りです。
③創業期は株価が低く、少額の資金調達でも大量の株式発行が必要
これは例を出すと分かりやすいですね。
エンジェル投資家がPost-Valuation1,000万円で400万円出資してくれたとしましょう。そうするとこのエンジェルに40%の株式を所有してもらうことになります。こうなると、創業者はこの株主に気を使って経営をやらないといけません。また、次ラウンドの資金調達で他の株主からValuationが低く抑えられ、目標額が集まらないことが想定されます。
本書では、将来上場まで目指すのであれば、シード期のPre-Valuationとして5,000万円以上が望ましいとしています。
その他のシード期の資金調達の参考として。
共同経営の場合は株主間契約が身を助ける
昨日、同僚Aからこんな相談を受けました。
「先輩2人が共同で会社を起こそうとしている。株式持分は50%:50%で2人とも取締役の共同代表でやろうとしてるのだけど、気を付けることはないか」
気を付けることだらけで、なにから言えば…
個人的には、お互いの役割がはっきりしているケースだったので、それぞれの会社を設立する。そしてそれぞれの会社間で業務委託契約を締結した上で一緒に仕事をするのがいいのではと伝えました。
理由は金で揉めるのが目に見えてるから。共同経営は個人的にリスクが高い案件という認識でいます。(GoogleやAppleは共同経営であれだけ大きくなったという意見があるのは分かります)
一般の会社でもありますよね?「俺の方があいつよりも仕事しているのに、給料が低いのはおかしい!」なんて話。サラリーマンなら愚痴で済みますが、共同創業者同士でこの状況に陥ると悲劇としか言いようがありません。
そこで本書では、共同創業する場合には以下のようにリスクヘッジすることをオススメしています。
「共同創業者(co-founder)が途中で辞めた場合には全部又は一部の株式を返してもらう」ということを、会社を始める際にきめておくべきです。
本書では上記をどのように投資契約書に書けばいいのか文例まで付けてくれているところが素晴らしいです。
とは言っても、投資契約書を結ぶときは、自分が不利にならないように、ベンチャー業界に精通した弁護士へ契約書レビューを依頼した方がいいでしょう。費用は難易度によりますが、日本語であれば3万~5万円くらいが相場です。
まとめ
せっかく素敵な仲間が集まり、イケてるプロダクトが出来上がったのに、投資家や仲間と揉めてしまい会社の成長が止まってしまうのはもったいない話です。ファイナンスの話はとっつきにくい部分はありますが、最低限のリテラシーは自分の身を守ることになります。
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