ごっこ遊び(鴨料理)|酒と肴 その八十
大人になると「ごっこ遊び」をしなくなります。
いえ、スタイを着けてバブバブ言いたいとか、目隠しされてドキドキしたいとかではありません。それはプレイの一種、ごっこ遊びとは違います。
ええと長いこと、
はい、家族ごっこを?
ははあ、続けていらっしゃると。
……こちらはガチのやつですね。お遊びではない分、コメントに気を遣います。多様性のひとつということで、お茶を濁しておきましょう。
なんて混沌とした私の脳内ですが、ふるさと納税で鴨肉が届きまして、長年の夢だった「魯山人ごっこ」が実現しました。
北大路魯山人。
美味しんぼの海原雄山のモデルにもなった芸術家、そして美食家です。
数々の逸話がありますが、有名なのはトゥール・ダルジャンのエピソード。パリの高級レストランで名物の鴨料理を注文し、特製のソースを断り、持参のわさび醤油で食べたってヤツです。その時の様子が、ご本人の筆で語られています。
様々なご意見があると思います。
ユーチューバーの先駆けみたいな行為に、今だと炎上しそうな気が。だけど初めて読んだ時には、わさび醤油で食べる鴨って、単純に美味そうだなと思ったんです。
そんな訳で作ってみました。
焼き目をつけ、酒と醤油、みりんで蒸し煮にした時点でフランス料理ではありません。それでも白髪ねぎを添え、煮詰めたタレをかけ、わさびをのせていざ実食、気分はもう魯山人です。
「女将を呼べッ!!」
間違えました。
これでは海原雄山ごっこですね。
念願叶ってわさび醤油で食べる鴨は、予想通りの美味しさ。おかげで、あっという間に買い置きのビールが無くなりました。
口に運ぶとまずは脂、続いて香り、そして旨み、最後にわさびっ!といった具合。
こいつはなかなか食わせやがる……
鴨のせいか、何だか池波先生の気分です。満腹のおなかをさすり
「むうん……」
と布団に倒れ込みたくなります。
さて、翌朝も鴨を楽しみました。
昨晩、寝る前に心のマリー・アントワネット(37歳・専業主婦)が
「タレが余っているなら、炊き込みご飯にすればいいじゃない」
とアドバイスをくれたので、眠い目をこすりながら仕込んでおいたのです。
写真には残していませんが、鴨の脂で焼いた深谷ねぎの味噌汁、いわゆる根深汁と一緒にやっつけました。本当なら朝から冷や酒をキメるとこなのに、平日であったことが悔やまれます。
ちょっと前には鴨せいろ(トップの写真です)も堪能済み。
残るは部位は鴨ハツなので
「心臓を捧げよ」
なんて言いながら、甘辛く煮付けるか、塩焼きにしようと企んでいます。
いやあ、鴨って本当に美味しいもんですね。
おかげで色々なごっこ遊びも楽しめました。
忙しい日々の中、おちこんだりもしたけれど、鴨のおかげで、私はげんきです。
■□■ 店番のお知らせ ■□■
西日暮里BOOK APARTMENTさんの棚をお借りして、酒と料理の読みものを中心に、集めた本を販売しています。
次回の店番は、4月29日(土)12:00〜16:00です。
ゴールデンウィーク。行楽地はきっと混んでいるでしょうから、ビール片手に読書なんていかがでしょうか。
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