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苦瓜とミミズ腫れ|酒と肴 その六

自宅で過ごす夏休み、車に乗る用事もないので昼酒を楽しむことに。買い置きのビールを切らしていたので、サンダルをつっかけて近所の酒屋へ向かう。

配達中心の店なのか、外から見える品揃えは少ない。いつもは店先の自動販売機で済ませるけれど、予定のない連休は時間があり余っているので、涼みがてら覗いてみる。
薄暗い店内、エアコンはそれほど効いていない。冷蔵ケースに商品はまばら、棚の日本酒も焼酎もいつからあるのか、ラベルが日に焼けている。さっさとビールを買って帰ろうと思いつつ、ふと焼酎の棚で目が止まった。

「泡盛、古酒(クース)になってる?」

そこには何種類かの泡盛、一本手に取り口詰日を確認すると「04年10月5日」の印字。泡盛は3年寝かせると味も香りも熟成され「古酒」と言われるようになるけれど、まさかの15年越えの古酒がずらり。
そうなると勝手なもので、寂れた店内も「雰囲気がある」ように思えてきて、なんなら「エアコンも効き出した」気がしてくる。お宝を見つけた泥棒の顔でレジで会計を済ます。

思いがけず熟成された泡盛が手に入ったので、肴にはゴーヤチャンプルーを作ることに決定。今年一番の暑さの中、ビーサンをペタペタいわせながら、ひっくり返ったセミも蹴散らす勢いでスーパーに急ぐ。

で、作ったのがこちら

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苦味と肉感を楽しみたいので豆腐は入れない。そういえば梅雨明けが遅かったので、チャンプルーを作ったのは今年初だ。
炒めすぎかゴーヤの食感が柔らかくなってしまったけれど、ロック、水割り、ソーダ割りと楽しんでいるうちに気にならなくなる。

買い出しと料理で火照った体にひとしきり泡盛を入れて、ようやく落ち着く。足の甲に軽い痛みを感じて、見たら鼻緒の形に赤くミミズ腫れができていた。グラスで冷えた指先をそっとあてる、熱がひいて心地良い。

年明けから落ち着かずに過ごしていたけれど、今年も夏が来たんだと思えた。

夏の感覚を取り戻す。

メニューと材料
・ゴーヤチャンプルー(ゴーヤ、豚こま肉、卵、鰹節、醤油、塩、胡椒)

酒と肴|その五 瓶ビールとよだれ鶏
酒と肴|その七 のみませ なつのパン祭り


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