見出し画像

銭湯のエルドラド、物価高の社会|日々の雑記#54

10年と少し前、この町に暮らし始めた頃は、近所に銭湯がありました。

古びた建物には昭和の風情が残り、高い天井からは、金色に輝く、午後の日差しが降り注ぎます。広い湯船はほとんど独り占めでした。

いつもお年寄りばかりの、
サウナも無い、
昔ながらの銭湯。

久しぶりに訪れたある日、廃業を知らせる紙が貼られていました。


月イチも通っていなかったので、偉そうなことは言えません。
それでも、温泉旅館やスーパー銭湯と比べ、経営は厳しかったのだろうと、容易に想像がつきます。

家風呂が当たり前の暮らしです。
大概のことは家で済ますことが出来ます。

これがきっと、便利な世の中……なんでしょうね。

その結果、近所のお風呂のような「特別ではない出費」は削られて、私たちは身近な黄金郷を失ってしまったのです。なお、この感情が「カール」が販売終了した時と同じ、無責任なものであることは理解しています。


「物価が上がる」

そんなニュースを目にする機会が増えました。すると、示し合わせたかのように、節約術や激安のお店が特集されます。

ポイ活が人気で、「ポイント経済圏」という言葉もすっかり定着しました。広く薄く、上前をはねるタイプの恩恵は、ぬるま湯に浸かりながら、外が寒くてあがれない状況に似ています。

ますます社会は「コスパ」や「効率性」を求めるようになるのでしょう。

これらの言葉、未来に向けて、資源や自然のために使われると理想的なのですが、現実的には、日々の暮らしと仕事に向けられます。

コスパのいい暮らし

効率性の高い仕事

ちょいと色気が無いですね。こうしてまた、私たちの周りから、何かが失われていくのです。


省エネのため、少ない湯量と低い温度でお湯張りした浴槽。半強制的に半身浴をしていたら、自然とそんなことが浮かび、消えていきました。

さっぱりするつもりが却って

「ぐったり」

してしまったので、失われた活力と水分をビールで補給します。


私はアルコール中心主義者なので例外ですが、一般的にお酒は嗜好品であり、必需品ではありません。記事が出ていましたが、10月から一部のアルコール類も値上がりするそうです。

今後の物価高を受けて、多くの家庭で「お小遣い会議」や「お酒に関する予算委員会」が開かれることでしょう。

建設的な議論であればいいのですが、きっと「コスパ」の大号令のもと、緊縮(もしくは禁酒苦)財政が進む危険性があります。

いっそ効率的に酔うのであれば、気化したアルコールを吸引する裏ワザや、直腸から摂取するという時短テクニックがあります。だけどどちらも命掛けです。

そもそも

鼻では喉ごしを感じられませんし、お尻では味が分かりません。

もう一度言います。

鼻では喉ごしを感じられませんし、お尻では味が分かりません。

このように、コスパを突き詰めていったら、風味を感じられない社会になってしまうのです。


これからの世界の在り方は、私たちのお金の使い方で変わります。

あなたのご家族が手遅れなキャラになる前に、世の中からお酒の文化が失われる前に。

まだ、間に合います。



★お知らせ★ G-SHOCKと私の後日譚②を追記しました。腕時計と恋愛の話、これにて完了です。


この記事が参加している募集

#最近の学び

182,163件

頂いたサポートで酒を呑み、それを新たな記事にすることで「循環型の社会」を実現します。 そんなほろ酔いで優しい世界、好事家の篤志をお待ちしています。