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性と本質、禁酒法からの学び|日々の雑記#26

かつて、職場の休憩時間にお酒が振る舞われる国がありました。給料の一部として午前と午後に支給されるウィスキー、当然酔っ払って仕事にならないことも多かったそうです。ちなみにロシアではありません。

今回の緊急事態宣言では、酒類を提供する飲食店に対し休業要請がされています。これを受けて「現代の禁酒法」という言葉を目にする機会が増え、本場の禁酒法について調べる中で冒頭のエピソードを知りました。当時は「alcoholic republic(呑んだくれの共和国)」とまで呼ばれていたそうです。

自由の国、今ではだいぶ飲酒に厳しいようですが、過去のやり過ぎで規制された気配が濃厚です。

そんなアメリカの禁酒法はアルコールの「製造」「輸送」「販売」を禁じるもので、背景には宗教、移民、戦争などの諸事情がありました。
結果としては取り締まりによる対立が生まれ、「密造」「密輸」「密売」といった三密が拡がったのは皮肉ですが、現在の日本にも活かせることがありそうなのでご紹介します。

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より良い社会を目指した禁酒法は合衆国憲法を修正し、1920年から1933年まで施行されました。

運動自体は1800年代から盛んで「集団で酒場を訪れ讃美歌を歌って営業させない団体(正月に髑髏を掲げて歩く一休さん)」や「斧で酒場を破壊して回る活動家(逮捕されるもオリジナルの斧グッズを販売、売上で罰金を支払う)」など、ユーチューバー的エピソードで溢れています。
そして意外にも成立は一方的でなく、大統領が拒否権を発動するなど紆余曲折あったこと、廃止にあたっては選挙の争点になったことは驚きでした。決まったことに固執せず、修正していく姿勢は学ぶところがあります。

あらためて今の日本に目を移せばどうでしょうか。

秩序をもたらすと期待した取組みが混乱をもたらすなんてよくある話。それを「正直、具合は悪いンすよ?けど、決まったことですし仕方ないっスわ」と受け入れ続けたら、文化も自主性も失われる気がして酔い覚めです。実際に禁酒法の時代、醸造業や飲食店は大きな影響を受けました。
宣言のもと行動を起こさず、無自覚のままお気に入りの店が無くなってしまっては申し訳が立ちません。何より「酔っていて覚えていない」という論法は、飲ませてくれるお店があってこそなんです。

人間は不思議で、困難なシチュエーションほど興奮するせいか、普段以上の力を発揮することがあります。ですから今回の休業要請で生まれる欲求不満が、路上飲みや闇営業に向けられるのではなく、飲食店が営業できるための活動に向けられることを願っています。

禁じられたら抜け道を探すのが人間の性(さが)だとしても、開拓して新しい道を作るのも私たちに備わった本質だと信じています。
酔っ払いの戯言ですが、お酒は飲み方ひとつで誰かの呪いにも救いにもなるのです。

ですからこのGWは行きたかった土地のお酒を買い、暮らす街のお店でテイクアウトをして月でも眺めて過ごします。

「これは一人の酒飲みにとってはわずかな一杯だが、飲食店にとっては大きな一杯である」
(That's one small pint for a man, one giant pint for restaurant.*)」

*英訳は適当です。

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