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山内マリコ「あのこは貴族」

映画を観て、原作を読みたくなって久し振りに読書をした。

どういう家に生まれてくるかってガチャみたいなもので、華子のような良家で見た目も良く生まれてきたらもうそれはSSR☆☆☆☆☆。でも、限られた世界でしか生きていないとか自分の力で何も切り拓けないとか、女として生まれたら結婚して家庭を築くことこそを是とされるとか。時代錯誤な不自由な世界を強いられる身分でもある。

かといって美紀のように貧しい家庭に生まれて努力で上京し、女を売って(ちょっと語弊があるけど)、身一つで何の後ろ盾もなく自力で生きていくのも恐怖だと思う。

東京っていう四方八方から人が集まってくる場所で、核の部分とその周りとではあまりにも世界が違う…
私は東京近郊の関東で生まれて、家は平凡のちょっと上の方の庶民なのでどちらの立場からも少し異なる。東京は思い切って「上京」する場所でも「庭」くらいの身近な場所でもない。ちょっとしたお出かけの場所、みたいな認識。みんなが思い描く「東京」ってその人の人生によってだいぶ違うんだろうなぁ。私は今の付かず離れずの距離がちょうど良いな。

住む世界が違っても、別の共通項で結ばれることもできる。「女の義理を通す」ってワードがよい。私たちにも義理があるんだぞ。
性別とか家とか何かの踏襲とか、みんな縛られてることに改めて気付くけどそこから自分はどう生きていくか、何を選ぶかちょっと考える作品だった。


門脇麦のあどけなさと上品さが良家の末っ子感があって、もどかしい役柄にぴったり。今まで水原希子の作品を見たことがあまりなかったけど、この映画での少し冷めた温度感の演技が似合うなと思った。
ふたりも良かったけど山下リオの明るさとあたたかさがとても好き。

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