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『猫の教師 kico』 by Ribera kico  改訂版

こんにちわ。
はじめまして。
私の 名前は kico(喜心 きこ)。

生まれは猫年。
そろそろ 猫の還暦を 迎えます。
小さい頃の 記憶は あまり ありません。
ただ 僕の記憶には いつも テムズ川 と 橋が あります。

私の仕事は 猫の教師です。
テムズ川に かかる 橋の下が 私の 職場です。

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雨の日には 橋のたもとで 筏船を 眺め
晴れの日には 近くの公園に 行き リスを追いかけ

朝には ウエストミンスター寺院の 鐘の音を聞き
夜には ロンドンアイが 回るのを 見る 場所。

でも 以前は

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雨の日には 窓を流れる 雨と 歌い
晴れの日には 公園に咲く 花と 戯れ

朝には ブラックティーの 香りを かぎ
夜には テーブルの上の ろうそくの灯を 見る場所。

彼の 膝の上 それが 私の 職場 でした。 
その時の 私の 仕事は 
物書きの 彼の手を 見守ることでした。

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ある 冬の日 
僕の そう 自分自身を 僕と呼んでいた頃
僕の 職場は 突然に 消えてしまいました。

kico という名前を つけてくれた人 が いました。

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彼の 名前は Joan。
彼は 作家 でした。
毎日 テムズ川に 向いている 狭いアパート の
窓の 脇の テーブルが 彼の 職場でした。

彼は、そこで 毎日 物語を書いていました。
彼は、たばこ を 吸い、コーヒー を 飲み
時に 眉間に 皺をよせ 涙を 流しながら。。。

彼にも 愛する妻 そして 息子もいたのか
彼が なぜ 今 ひとりなのか
僕は 彼の物語を 読めないので わからなかった。

ただ 一度 彼が 絵を描いた。
それは 暗い闇の中で 火の粉が あがっていた。
人は それを 戦争 と いうらしい。。

彼の顔は イギリス人の それではなかった。
見るからに アラブ系。
彼の文字は スペイン語 らしかった。

彼は ある時から 部屋に 閉じこもっていました。

彼は 僕が 毛布で ふにふにしたり
彼の 膝の 上に乗り 
彼が ペンを走らせるのを 眺める姿を 見て

あなた、かわいいね。。。 と 笑ってくれました。

時には 
僕が 自分の しっぽを 追いかけるのを 見て
大きな 口を 開けて 
は は はっー と 笑いました。

狭い アパート中に 彼の声は 歌声のように 響きました。

しかし あの朝
彼は 紙の上に 赤い血を吐きました。
ヒューヒュー という 咳が 止まらない。。。

怖かった。 
恐れていた時が 近づいた。。。

彼の 咳が 乾いた音に なって
彼が 咳をするたびに 彼の 鼻を見上げ
咳が 止まるのを じっと 待つことが 多くなっていた。

目の前の 白い紙に 赤い血が ぼた ぼた と 落ちました。
僕は 真っ赤な 彼の唇を ぺろりとなめました。
赤い血は 遠い昔に 飲んだ 白いミルクの味。。。

彼は 咳が おさまると、、、 にっこり 笑いました。
口を拭い ちょっと のどを詰まらせたような 声で
言いました。
「今日から お前の名前は kico 
 喜び の 心 で きこ だ。」

僕は 今まで chico と呼ばれていました。
僕は テムズ川の ほとりで 
びしょ びしょに なって 死にそうなところを
彼に 拾われて 命を繋いだ時から そう 呼ばれていました。

「kico。。。 
 書くのだ。 物語を紡ぐのだ。。。
 私の命を お前に 渡そう」

その時
僕は もう 僕で はなく 
わたし と なりました。
そして 新しい 名前で 呼ばれました。

kico。。。

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彼は この小さい部屋に 住む前は 大学の構内に住んでいました。
教授を していた らしい。。。
女性学 心理学 哲学 神学 、、、

壁には 彼が 生徒達と キャンパスで 
楽しそうに 笑う 写真が 沢山張ってありました。

彼は また 咳をしました。
さっきよりも 大きな 音。
僕の 喉が ゴロゴロと 鳴り出し。。。

彼は 僕を 見つめ 苦しそうに 言いました。

「い ま   を い    き    、、、」

彼は 紙の上に 額を 落とし。。。

どすん と いう 鈍い音と
ガッと 彼が 吐く息が
狭い 部屋に 響き。。。

何も ない 時間が テムズ川の ように 流れました。。。

ウエストミンスター寺院の 鐘の音が 泣いているようでした。


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月日は流れ。。。
私は また 野良猫に 戻りました。

今 私は テムズ川に かかる橋 の たもと で 
家のない 飼い主の いない 子猫たち に 教えています。

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何を?

今を
生きることを。。。

猫の 教師の 仕事は 
子猫たちが 一人で生きてゆけるように
猫の手をとり 足をとり
体を張って
生きる術を みせる。

一人歩きした時には
子猫が 振り返れば そこに 居ること。。。 

そして 
旅立った 子猫たちへの 祈りを 捧げ
それぞれの 子猫たちの 旅を 綴り
次の 猫の手に 語り 継ぐこと。。。

語り猫 それが Joan から 渡された 仕事。

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私は 今日も 子猫たちの前で 
自分の 体を 後ろ足で掻きながら 
猫語 の 読み 書き 教えてます。

痛いときは 痛いと 泣くよ。
嫌な時は 嫌だと 言うよ。
嬉しい時は 嬉しいと。

猫語 の あいうえお
あ ありがとう 
い いいね
う うれしい 
え えがお 
お おもしろい 

Soulful distance を 保ちながら の 
Cats-full-ness   な 会話レッスン。

痛い時    傷を 舐め
寒い時  傍に 寄り
寂しい時 目を 閉じて
嬉しい時 皆で 笑う。 

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予期せぬ 事 も 起こります。

冬の朝 2歳の マックスが 車にひかれて 死にました。
夏の夕 1歳の エディが カラスに 連れて ゆかれました。
秋の夜 6カ月の マールが 酔っ払いに 蹴り飛ばされました。
春の嵐 生まれて間もない 三つ子が 野犬に、、、 

そんな 事 が 続いても

それでも、
今日  
一番 小さくて 
目やにで 片目が 開かない しゃがれ声の
オリバー が 拾われました。

Joan に よく似た 背の高い おじいさんは
オリバーを 抱き上げ 
「おー、おー、目やにが いっぱいだ。
 大丈夫だよ。じきに 治る。。。
 さあ、 一緒に 家に帰ろう」
そう言って 足を引きずり 橋を 渡ってゆきました。

私は 子猫たちと 橋のたもとに 隠れて 見送りました。

元気でね。。。
そして 
祈ります。。。

Joan。。。 
どうか オリバーが 幸せになりますように
共に 居て下さいと。。。

すると
青空に Joanの 笑い声と 共に 
ウエストミンスター寺院の 鐘が 鳴り響きました。。。

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おしまい

#猫 #学校 #教師  #テムズ川 #繋ぐ #はたらくってなんだろう


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