見出し画像

15歳のあなたへ贈る Christmas Story


パウリーナのドレス  改訂版

 クリスマスイブ。 
毎年15歳の子供たちの 発表会が行われます。
 
パウリーナは今年15歳。
バレエを3歳の時から習っています。

パウリーナは将来、大きな町のバレエ教室で習い、
バレリーナになることを夢見て、
毎日、一生懸命、練習しています。

 夏の暑い日。
パウリーナはお母さんと一緒に、12月24日の発表会に
着るドレスを探しに 大きな街の洋服屋さんに行きました。
どこの店の前にも、ドレスやスーツ、衣装を眺める親子がいました。

ある一つの店の前に沢山の親子の人だかりが出来ていました。
パウリーナは人ごみの中をくぐり抜け、
その店のショーウィンドウの前に立ちました。

そこには、豪華な黒いドレスを着たマネキンが立っていました。
カラスの羽のように黒く
孔雀の羽根のように長く、渦巻の模様。
海のさざ波のように、何段ものフリルがついています。

そして、驚いたのは、
そのドレスについている値札と、胸もとについている
金のエンブレムでした。

ドレスはだいたい3万タラントが普通なのに
このドレスはなんと12万タラントもするのです。

値札には、このドレスに合うサイズが書いてあります。
バスト85,
ウエスト55、
ヒップ85、
身長175cm、
体重40キロ、
ドレスの重さ15キロ。

人びとは
「誰がこんなドレスを買うのだろう。
 このドレスを着れば、きっとクリスマスイブの発表会で
 一番に目立つだろうと」と
大騒ぎをしています。

パウリーナは
バスト70,
ウエスト60,
ヒップ78,
身長155,
体重35キロです。

この黒いドレスは、とても大きすぎ 重すぎます。
それに、お母さんのサイフの中には 5万タラントしかありません。

お母さんも、パウリーナも、
みんなの前で このドレスを着て踊る姿を思い浮かべて、
店の前でうっとりしました。


 お母さんは言いました。
「私が、働いてなんとかするわ!」


 パウリーナは言いました。
「私は毎日牛乳を沢山飲んで早く大きくなるわ」


  それから 毎日
パウリーナも毎日牛乳を3リットルも飲みました。

しかし、お金はなかなか貯まりません。
パウリーナもなかなか大きくはならず、
牛乳の飲みすぎで、体がぶよぶよしてきました。


そこで、お母さんはパウリーナの胸とお尻をバンバン叩きました。
すると、胸とお尻が 少し、赤くはれてました。


今度は、お母さんはパウリーナのウエストを 
赤いひもで、ぎゅうぎゅうと縛り上げました。
すると、ウエストは少し細くなりました。
 
パウリーナは叩かれた胸がひどく傷み、
ウエストはきつきつで、苦しく吐きそうです。
しかし、パウリーナはじっとがまんしました。


しかし、困ったことに、
パウリーナは胸やお尻がじんじん痛く、
ウエストはきつきつ、
お腹はちゃぽちゃぽ、
下痢気味で踊りの練習どころではないのです。


それでも、お母さんは、
毎日パウリーナの胸とお尻を叩き、
パウリーナも
毎日牛乳を飲みました。
 
木の葉も落ち、木枯らしが吹き始めると、
パウリーナとお母さんは焦り始めました。

しかし、なかなかお金も貯まらず、
パウリーナの身長もなかなか伸びません。

そこで
お母さんは、使っていないお鍋と家具を売って、
お金にしようと決心しました。

そして、
パウリーナの胸やお尻をたたいて膨らませたように、
今度は頭を叩けば、たんこぶ分高くなれると思い、
パウリーナの頭をばんばん叩きました。

すると、パウリーナの頭に大きなこぶができ、背が少し高くなりました。
それでも、まだ、175センチにはなりません。


 
そこに、狐顔した、一人の男が 現れる

「あなたは、あのドレスが着たいのですね。
 私は、あのドレスを買うための 一番早くて
   効率の良い方法を、 教えています。」


お母さんはその男に、是非とも、その方法を教えてほしいと頼みました。

男は黄色い蝶ネクタイを、「えっへん」と言って、直し
胸を張って、鋭い目つきで、お母さんを 見下ろし、
気取って、しゃべり始めました。

「私は胸やお尻、頭を叩くなどという方法はとりませんよ。
 まず、お腹や太もも、ウエストにある余分な肉を
 そぎ落とします。
 その肉を胸やお尻に
 のりで付けます。

 次に、足には鉄の骨を接ぎ、
   長くします。

 ご心配なく、手術はすぐに終わります。
   麻酔も使いますよ。

 ただし、費用は12万タラントかかります。
 しかし、これもご心配なく。

 発表会で選ばれて、大きな街の教室に通い、
 大きな街の踊り手になれば、
 毎年12万タラント以上は稼げます。

 ですから今すぐ12万タラントを用意して下さい。
 早くしないと間に合いませんよ。

 クリスマスまであと一か月ちょっとしかありません。
 大丈夫ですよ。

 今まで、私が言ったことを信じ、実行した人は
 皆幸せになっているのですから」


パウリーナとお母さんの心は、北風に揺れるブランコのように、
ガタガタと揺れ、震えました。

パウリーナは、目の前にいる、
黄色の蝶ネクタイ、
金の腕時計、
金縁の色眼鏡をかけた、
背の小さい狐顔した男を、
どうしても好きになれません。


パウリーナ マリアおばさんの所に

このおばさんは昔、大きな街の洋服店で働いていたのです。
おばさんは、パウリーナが久しぶりやってきたので喜びました。

しかし、頭のこぶと胸とお尻が膨れ上がり、
唇が真っ青な様子を見て驚きました。


そして、それがどうしてそうなったかも、すぐにわかりました。
おばさんは昔、大きな街の洋服店にいた時、
パウリーナのような15歳の子供たちを沢山見てきたからです。

おばさんは、すぐにパウリーナのウエストを縛ってある、
へその緒のような赤い紐を切りました。

そして、頭のこぶと胸とお尻の赤くはれたところに、
ハーブで作ったとても甘く、優しい香りのする油を塗り
ゆっくりと時間をかけて 温かいココアを作ってくれました。


すると、パウリーナの唇と顔色が、桜色になりました。
パウリーナの目から、ぽろぽろと涙があふれてきました。

マリアおばさんは、昔着たドレスを パウリーナに渡しました。

そのドレスは とても 天使の衣のように 軽く 
パウリーナの顔色をさらに 明るく映しました。
パウリーナは 鏡に映る自分を とても嬉しく思ました。

パウリーナは 家に 帰る

そして、お母さんに 伝えました。
「私は あの黒いドレスは 要りません。
   もう、無理をし、痛い思いをするのは 嫌です。」


 それを聞いて、お母さんは
「私も、毎日働き、そしてあなたの胸やお尻、頭を叩くのは辛かった。
 では、あなたは、何のドレスを着るの?」

パウリーナは答えました。
「私は、マリアおばさんが昔着た、曙色のドレスを着てみました。
 それは、とても私の顔色に合い、天使の衣のように軽いのです。

 私は 自分にぴったりの曙色のドレスを着て 踊りたいのです」

二人は、抱き合いました。

パウリーナは、お母さんに、毎日、働いてくれたことに
「ありがとう」
 と言いました。

そして、黒いドレスを着て、見せてあげられないことに
「ごめんなさい」
 と言いました。

お母さんはパウリーナの体をドレスに合わせるために 
苦しめたことを、心から申し訳ないと思い、
「ごめんなさい」
と謝りました。

 二人は マリアおばさんの所に

早速、パウリーナの体にあった ドレスを作ってもらうことにしました。

マリアおばさんは、パウリーナの体に ぴったりの、
ドレスを 心を込めて作りました。

 いよいよ、12月24日の夜。

15歳の子供たちのための発表会。
パウリーナはドレスを着て 舞台に立ちました。

そして湖の上を妖精が月の光を浴びて滑るように、
かろやかに踊り出しました。
 
パウリーナは微笑み 踊ります。


ありのままの 私で


こうして 踊れることを。。。


今ここに 生かされている。。。 ありがとう。


さゆりちゃんは その後 自分に合った高校に進学し
2年生の時に カナダのバレエスクールに留学しました。
彼女は バレリーナとして 
どこかの舞台で 踊っているのかもしれません。。。
自分に合った ドレスを着て。。。

Merry Christmas to You...
15歳のあなたに。


                     

#絵本  #物語 #15歳 #エール #クリスマスイブ #はたらくって何だろう  #使命

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?